ロシア国旗をペンキで描いた石油タンカー、大西洋で拿捕 18日間に及ぶ追跡劇の顛末

(CNN) 石油タンカー「ベラ1号」は大西洋上で2週間近く米沿岸警備隊の巡視船に追跡された挙句、米軍から逃れるためにロシア国旗をペンキで船体に描くという斬新な手を打った。 【写真特集】拿捕直前の米巡視船「マンロー」と石油タンカー「ベラ1号」(全3枚) 古びてさびの目立つタンカーには、「マリネラ号」という新たな名前も与えられた。ロシアはまもなく外交ルートを通じ、米国に追跡をやめるよう要請した。 昨年12月31日のことだ。このタンカーは違法な原油輸送に使われる「影の船団」に属するとして、制裁対象になっていた。 トランプ政権はロシアの要請を拒否し、新たに描かれた国旗は無効でタンカーは「無国籍」だと主張。巡視船「マンロー」はそのまま追跡を続けた。 タンカーが英国とアイスランドの間の北大西洋に近づいたころ、米軍は英国内の空軍基地に事前展開を始めた。海軍特殊部隊SEALS(シールズ)や、「ナイト・ストーカーズ」と呼ばれる陸軍第160特殊作戦航空連隊が、作戦実行の可能性に備えて待機態勢に入った。 そして今月7日、アイスランドから約300キロ南方で、米軍要員がヘリコプターから乗り込み、タンカーを拿捕(だほ)した。 トランプ米大統領が8日、米FOXニュースとのインタビューで語ったところによれば、近くにはロシアの潜水艦と駆逐艦各1隻が派遣されていたが、どちらも米軍が到着すると「素早く立ち去った」という。 これにより、タンカーがクリスマス前に南米ベネズエラ沖で最初に米沿岸警備隊から逃れようとした時から数えて18日間、約6400キロに及んだ追跡劇が幕を閉じた。 米退役海軍大将で北大西洋条約機構(NATO)欧州連合軍最高司令官を務めた経歴を持つCNNの上級軍事アナリスト、ジェームズ・スタブリディス氏は「沿岸警備隊は米海軍をはじめ、幅広い情報機関と連携することで、世界中の情報や追跡を網羅している。ここで異例なのは、拿捕に至る前にこれだけ長い期間を追跡に費やしたことだ」と指摘した。 米軍出身者やアナリストがCNNとのインタビューで語ったところによると、拿捕の目的は、同じようにロシア国旗を掲げてベネズエラから退散しようとするほかのタンカー群に対し、警告を発することだったのではないかとみられる。 事情に詳しい当局者らによると、トランプ政権は突然の船籍変更を取り合わず、そういう策略に実効性はないとのメッセージを広く伝えようと強い意欲を示した。 米シンクタンク「大西洋評議会」の上級研究員、ジョセフ・ウェブスター氏も「このタンカーが航海の最中に事実上の船籍変更を許されていたら、さまざまな意味で悪い前例を残すことになっただろう」と話す。「米国側は、こういう手口が将来も繰り返される事態を避けたいと考えた」 ウェブスター氏によれば、ロシア側にも大局的な判断があった。「ロシアにとって、はるかに重要性の高いウクライナをめぐる米国との交渉を台無しにし、立場を譲るのは不本意なことだ」 米国はこの1カ月で計5隻のタンカーを拿捕した。7日と9日にはカリブ海で、ベネズエラから戻るソフィア号、オリナ号をそれぞれ捕えている。また米紙ニューヨーク・タイムズは、米軍が現在、ベネズエラを出た制裁対象のタンカー16隻を追跡していると伝えた。 トランプ政権がロシアやイラン、ベネズエラなどに対する長年の制裁を執行するため、強い手段を講じようとしていることがうかがえる。これらの国はいずれも世界各地で活動する影の船団の力を借りて、違法な原油輸出を続けている。 トランプ政権はベネズエラのマドゥロ大統領を拘束した後、同国政府に石油生産で米国と協力するよう圧力をかけている。ベネズエラ産原油を他国へ流出させないための作戦で、タンカー取り締まりもその重要な一部だ。 だがベネズエラからの帰りにカリブ海付近で拿捕されたほかの4隻と違い、ベラ1号はベネズエラに向かっている途中で、まだ原油を積み込んでいなかったとみられる。 スタブリディス氏はベラ1号の拿捕について、「何百隻にも上る影の船団全体に対してずばり、世界のどこにいても、貨物を積んでいてもいなくても安泰ではいられないとの合図を送っている」と述べた。

CNN.co.jp
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