【米国市況】株は反落、大手ハイテク株に売り-ドルは144円台後半

11日の米株式相場は反落。大手ハイテク株が株式相場全体を押し下げ、下げに転じた。朝方は米消費者物価指数(CPI)が予想外に落ち着いた内容となったため、米利下げ観測が強まり、国債利回りが低下。S&P500種株価指数は過去最高値に近づく場面もあった。

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株式 終値 前営業日比 変化率 S&P500種株価指数 6022.24 -16.57 -0.27% ダウ工業株30種平均 42865.77 -1.10 0.00% ナスダック総合指数 19615.88 -99.11 -0.50%

  アップルは約2%下落。テスラは一時3%近く上げたが、結局ほぼ変わらずで終えた。

  5月のCPIは、食品とエネルギーを除くコア指数が4カ月連続で市場予想を下回った。企業が関税によるコスト上昇分の価格転嫁を抑制しようとしていることがうかがえる。

  トランプ米大統領は中国と貿易枠組みで合意に達したと述べた。中国は「先行して」レアアース(希土類)や磁石を供給し、米国は中国大学生の留学を受け入れる。

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  この日の下落にもかかわらず、S&P500種は弱気相場入りの瀬戸際にあった4月から急回復している。この20%を超える上昇の大部分は、トランプ大統領が世界各国との合意後に関税を引き下げるという期待に支えられている。

  ネーションワイドのマーク・ハケット氏は「株式相場の回復と高まった期待を踏まえると、最高値更新へのハードルは引き上げられた。これには利益見通しの上方修正が不可欠となるだろう」と述べた。

  CPIの一連の指数がおおむね予想を下回ったことは、トランプ大統領の関税措置の痛手がまだ消費者に及んでいないことを示す証左となっている。最も厳しい関税措置が一時的に停止されているため、あるいは企業がこれまでのところ追加コストを吸収しているため、ないし関税措置発動の前に在庫を拡充していたためだと考えられる。

  しかし、関税が一段と引き上げられれば、今後数カ月間に企業がより大幅な値上げを実施するとエコノミストは予想しており、消費者がコスト転嫁を免れるのは困難になる。

  ラザードのロナルド・テンプル氏は「関税はインフレに影響しないと結論付けるには時期尚早だ」と述べた。「最終的に、企業は関税上乗せ分を吸収するため値上げやコスト削減、利益率の低下といった対応を余儀なくされるだろう。この初期段階の統計では広範な価格上昇の兆候は見られないが、企業が関税に対応するにつれ、年内にインフレが加速すると予想している」と語った。

   eToro(イートロ)のブレット・ケンウェル氏はCPIについて、インフレ再燃を示す内容ではなかったが、最近は鈍化に向けた進展もあまり見られないと指摘。今後は来週の連邦公開市場委員会(FOMC)に細心の注意を払うべきだと話した。「これまでのところ、パウエル議長は金融政策に関して綱渡りのような状況にあった」と述べ、「パウエル氏はFOMCの今後の決定について多くは示唆しておらず、手の内を明かさないよううまく対応しているが、投資家は確実性を切望しており、来週の議長会見で何らかの答えを求めるだろう」と話した。

米国債

  米国債相場は上昇。予想を下回るCPIを受けて利下げ観測が強まり、利回りは急速に低下した。10年債入札(規模390億ドル)が堅調な内容となったことを好感し、さらに上値を伸ばした。上げは短期債が主導し、2年物利回りは4%を割り込んだ。

国債 直近値 前営業日比(bp) 変化率 米30年債利回り 4.91% -1.4 -0.29% 米10年債利回り 4.42% -5.1 -1.15% 米2年債利回り 3.95% -6.7 -1.66%     米東部時間 16時50分

  短期金融市場では、9月の利下げが75%前後織り込まれ、年内約2回の利下げを見込んでいる。

  クレジットサイツの投資適格債およびマクロ戦略責任者、ザカリー・グリフィス氏は10年債入札について、「特にそれまで緩やかに相場が上昇していたことを考慮すると、エンドユーザーの需要が堅調であることを示している」と分析。「現時点で、需要に関する懸念は超長期債に集中しているようだ」と述べ、10年債の結果は「明日の30年債入札も順調にいくことを意味するものではない」と付け加えた。

  10年債入札の落札利回りは4.421%と、入札締め切り時点の入札前取引の利回りを0.7ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)下回った。応札状況に関する指標も強く、ディーラー以外の参加者による落札率は90%を超えた。

  カロバー・キャピタルのハリス・クルシド最高投資責任者(CIO)は「利下げ1回が再び視野に入ったのは間違いない。2回については生産者物価指数(PPI)および労働市場の動向次第だろう」と語った。

外為

  外国為替市場では、ドル指数が低下。コアCPIが4カ月連続で市場予想を下回り、年内の利下げ観測が強まったため、ドル売りが優勢になった。

  円は対ドルでCPI発表後に上げに転じ、1ドル=144円33銭まで買われた。午後にも同水準まで上げる場面があった。

為替 直近値 前営業日比 変化率 ブルームバーグ・ドル指数 1207.48 -3.11 -0.26% ドル/円 ¥144.60 -¥0.27 -0.19% ユーロ/ドル $1.1486 $0.0061 0.53%     米東部時間 16時50分

  ブラウン・ブラザーズ・ハリマン(BBH)のストラテジスト、エリアス・ハダッド氏は5月のCPIを受けて、関税によるインフレへの影響は今年下期に顕在化する可能性があると指摘。6月のCPIに表面化することもあり得るとしつつ、「ドルの基調的な下降トレンドに変わりはない」と述べた。

  基調的なインフレの動向を踏まえると、「FOMCは様子見モードを続けるだろう」と述べた。

原油

  ニューヨーク原油先物相場は大幅上昇。在イラク米大使館の職員に対し、米政府が治安上の懸念を理由に退避を命じたことが材料視された。

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  トランプ政権は米軍関係者の家族にも、中東地域からの退避を認めた。

  またAFPによると、イランのナシルザデ国防軍需相は、核協議が決裂して米国が軍事行動を起こした場合は、中東にある米軍基地を攻撃対象にする可能性に言及した。

  CIBCプライベート・ウェルス・グループのシニア・エネルギー・トレーダー、レベッカ・バビン氏はイラン情勢について、「地政学的リスクによる相場上昇は売りの好機と見なされることが多いが、今回は協議が決裂した場合、イスラエルが軍事行動に踏み切る可能性があるという複雑さをはらんでおり、市場関係者は上昇局面での売りに慎重になっている」と述べた。 

  原油相場はイラン核合意を巡るトランプ大統領の発言に反応して朝方から買いが優勢になっていた。トランプ氏は、核開発計画の停止に合意するようイランを説得できるかどうか「自信を失いつつある」とニューヨーク・ポスト紙に対して述べた。

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  ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物7月限は、前日比3.17ドル(4.9%)高い1バレル=68.15ドルで終了。ロンドンICEの北海ブレント8月限は2.90ドル(4.3%)上昇し、69.77ドルで引けた。

  金スポット相場は上昇。米コアCPIが予想を下回ったことを受けて、年内の利下げ観測が強まった。 

  CPI発表後にドルが下落し、米国債利回りが低下する中、スポット価格は一時1.1%上昇した。利息が付かない金は通常、金利が低下すると投資妙味が増す。  

  サクソバンクの商品戦略責任者オーレ・ハンセン氏は、物価の落ち着きが示されて早期利下げ観測が高まったことが金相場を支えたと指摘。その上で、レンジ取引が続いているとし、金相場がそれを抜け出すには「経済データが一段と悪化する必要がある」と述べた。

  スポット価格はニューヨーク時間午後2時55分現在、前日比19.57ドル(0.6%)上昇し、1オンス=3343.26ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物8月限は30セント高の3343.70ドルで引けた。  

原題:S&P 500 Halts Rally Near Record as Big Tech Swoons: Markets Wrap(抜粋)

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