中国メーカー、Appleディスプレイを節操なく丸パクリするも「意外と悪くない」(g.O.R.i)
「またパクリか…」そう思った瞬間から、僕の認識は大きく変わることになりました。
中国のKuyconという会社から発売された32インチディスプレイ「G32P」。見た目は完全にAppleのPro Display XDRそのもので、「またパクリ商品か」という第一印象を抱いた方も多いでしょう。筆者も正直、最初はそう思いました。
しかし、詳しく調べてみると、これが意外にも「侮ってはいけない製品」だということが分かってきたのです。「パクリと思ったら負け」とはまさにこのことかもしれません。
72万円のPro Display XDR、高すぎませんか?
まず前提として、Apple純正のハイエンド外部ディスプレイ「Pro Display XDR」の話をさせてください。
このディスプレイ、確かに素晴らしい製品です。6K解像度という圧倒的な画面の美しさは、一度体験すると他のディスプレイには戻れません。プロのクリエイターにとって、まさに理想的なディスプレイと言えるでしょう。
でも……価格が約72万円。スタンドを含めると90万円を超えます。
正直なところ、「欲しいけれど手が出ない」という方が大多数ではないでしょうか。筆者も含め、多くの人にとってPro Display XDRは「高嶺の花」的な存在です。
一方で、AppleのStudio Displayという選択肢もありますが、こちらは5K解像度で27インチ。6Kの作業領域を求める人には物足りないサイズです。
つまり、「手頃な価格でPro Display XDRのような体験ができるディスプレイ」は、これまで存在しなかったのが現状でした。
見た目は完全にPro Display XDR、でも価格は約20万円
そんな中で登場したのが、KuyconのG32Pです。
写真を見た瞬間、「え、これってPro Display XDR?」と思わず二度見してしまいました。アルミニウムの質感、背面の穴あきデザイン、前面のミニマルな見た目。どこからどう見てもPro Display XDRにそっくりです。
おや……?そっくりすぎやしませんか……?(UltraLinxよりキャプチャ)「露骨な模倣だな…」というのが最初の印象でした。
しかし価格を見て驚きました。約1,700~2,000ドル(日本円で約25~30万円)。Pro Display XDRの約3分の1、つまり70%オフの価格設定です。
「安すぎて逆に不安になる」というのが正直な気持ちでした。この価格で本当にまともなディスプレイなのでしょうか?
スペックを比べてみたら、意外と健闘していた
疑問を解決するため、詳しいスペックを調べてみました。すると意外な事実が分かってきます。
解像度
- Pro Display XDR:6016×3384
- Kuycon G32P:6144×3456
なんと、G32Pの方がわずかに高解像度でした。
色域カバー率
両者ともDCI-P3とsRGBを高い精度でカバーしており、プロ用途に十分な性能です。
接続端子
ここでG32Pの意外な強みが見えてきます。DisplayPort 2.1、HDMI 2.1を2つ、さらにThunderbolt 4/USB4に対応。Pro Display XDRよりも多様なデバイスに対応しているのです。
もちろん違いもあります。最も大きいのは輝度です。Pro Display XDRが1,600nitsという極めて高い輝度を誇るのに対し、G32Pは500nits。特にHDRコンテンツを視聴する際は、この差が大きく影響するでしょう。
それでも、「パクリ商品だから性能もそれなり」という先入観は、良い意味で裏切られました。
Pro Display XDRユーザーの驚きの評価
さらに興味深い情報が見つかりました。
実際にPro Display XDRを所有しているテック系YouTuberのOliur氏が、G32Pの詳細なレビューを投稿していたのです。彼の評価は筆者の予想を大きく上回るものでした。
「最初は期待していなかったのですが、実際に使ってみると予想以上の品質でした」
YouTubeチャンネル「UltraLinx」を運営するOliur氏(UltraLinxよりキャプチャ)Oliur氏は特に以下の点を評価していました:
- アルミニウムの質感が非常に高く、高級感がある
- 6K解像度の作業領域は「一度使うと手放せない」
- リモコンが付属しており、設定変更が簡単
- Mac以外のデバイスとも簡単に接続できる汎用性
一方で、輝度の違いについては率直に「Pro Display XDRのようなHDR体験は期待できない」と述べています。
そして最も印象的だったのが、彼の総合評価でした。
「80%の体験を半額以下の価格で提供してくれる。Pro Display XDRを持っていなかったら、迷わずこちらを選んでいたと思います」
Pro Display XDRを実際に所有している人からこのような評価が出るとは、正直驚きました。
意外な発見:オリジナルより優秀な部分も
調べていくうちに、G32PがPro Display XDRを上回る部分もあることが分かってきました。
最も大きいのは汎用性です。Pro Display XDRは主にMac専用として設計されており、他のデバイスを接続しても設定の調整に制限があります。
一方、G32PはPC、ゲーム機、様々なデバイスを1台でカバーできる設計になっています。リモコンが付属しているため、どんなデバイスを接続していても独立して設定を調整できるのです。
また、Pro Display XDRではスタンドやVESAアダプターが別売りですが、G32Pには必要なアクセサリーがすべて同梱されています。「箱から出してすぐに使える」という点でも、実はオリジナルより親切な設計と言えるかもしれません。
手放しで絶賛できない理由もある
もちろん、すべてが素晴らしいわけではありません。
最も大きな懸念は、サポート体制です。Appleのような大手企業と比べ、Kuyconのような新興メーカーでは、故障時の対応や長期的なサポートに不安が残ります。
また、販売チャネルも限定的です。現在は特定のオンライン販売店でのみ取り扱っており、実物を確認してから購入するのが難しい状況です。
品質面でも、組み立て時の接着剤が残っているなど、「Appleレベルの完璧さは期待できない」部分があることも事実です。
結論:「パクリ」という先入観を捨てると見えてくるもの
最初は「またパクリ商品か」と思ったG32P。しかし調べれば調べるほど、単なる模倣品を超えた価値があることが分かってきました。
Pro Display XDRの「6K解像度」という核となる体験を、3分の1の価格で提供している。しかも一部の機能では、オリジナルを上回る利便性を持っている。
完璧ではありませんが、多くの人にとって「十分に魅力的な選択肢」と言えるのではないでしょうか。
特に、「Pro Display XDRは欲しいけれど予算が…」と諦めていた方にとっては、検討に値する製品だと感じました。
もちろん、最終的な判断は個人の価値観や用途によります。最高品質を求めるならPro Display XDRが正解でしょう。しかし、「8割の体験を3分の1の価格で」という提案も、決して悪いものではないと思うのです。
「パクリ商品」という先入観を捨てて見てみると、意外な価値が見えてくる。今回のG32Pは、そんなことを改めて教えてくれた製品でした。「パクリと思ったら負け」とはまさにこのことなのかもしれません。