「『ドナルド国王』をもてなす英国」と報じたFT、トランプに媚びを売ったスターマー政権、「国賓招待」の成果とは?(Wedge(ウェッジ))
フィナンシャル・タイムズ紙は、英国によるトランプの2度目の国賓招待について、スターマー政権が手厚く歓待したにもかかわらず、得たものはほとんどなく英国の対米従属を印象付けたとして、「『ドナルド国王』をもてなす英国」と題する批判的な社説を掲載している。要旨は次の通り。 国際的な影響力がどれほど衰えたとしても、英国ほど華やかさを演出できる国はないというのは依然として事実だ。ドナルド・トランプは、各国がカードを持っていると良く口にするが、軍事力や経済力の点で米国大統領が切り札を持っていることは間違いない。しかし、本物のキングやクイーンがいる英国は、それらをうまく活用する方法を知っている。 ウィンザー城内を、チャールズ3世の横に座り金色の馬車に乗ってゆっくりと移動するトランプの表情は、まさに輝いていた。大統領の前例のない2度目の国賓招待は、見事に演出されたTV向けのスペクタクルであり、トランプが切望する映像を届けた。自分も君主になることを欲しているような印象を与えるこの男は、一両日の間その役を演じることができた。 しかし、キア・スターマー首相が締めくくりの記者会見で米国の賓客に媚びへつらう姿は、不快な印象を残した。気まぐれな大統領との衝突を是非とも避けようとして、その口調や身振りは時折卑屈にさえ映った。 2月に同首相が大統領執務室で国王の招待状を手渡した瞬間から、英国政府は、リスクや価値観の相違、多くの英国国民の不快感にもかかわらず、トランプ政権に媚びる道を選んだことは明らかだった。 ダメージを最小限に抑えるという点では、ある程度成功している。欧州連合(EU)を離脱し、貿易、防衛、諜報面において、フランスやドイツよりも米国と緊密な関係にある英国は、ワシントンとの決裂によって失うものがより多い。
英国は5月にトランプ大統領との初の貿易協定を締結したことを誇ることができる。基本関税は10%でEUの15%より低く、自動車には低関税割当が適用され、英国産鉄鋼の対米輸出関税25%をゼロにする約束も取り付けた。 トランプ流の取引主義の観点では、英国は最強の切り札である招待状を既に切り、見返りとして得た純利益はほとんどない。業界が決着を期待していた鉄鋼関税の緩和は実現せず、米国企業による1500億ポンドの投資約束は、既に計画されていたものが含まれている。データセンターやAIインフラへの数十億ドルの投資約束は微々たるものだ スターマーは、他の欧州の指導者たちとともに、ウクライナ問題に関してトランプがプーチンに完全に屈服することを阻止してきた。しかし、共同の働きかけにより、米国大統領にクレムリンへ真の圧力をかけるよう説得することは失敗に終わった。 現在、トランプは、ワシントンが制裁を検討する前に、欧州がさらに多くの制裁措置をモスクワに課すことを要求している。トランプがガザ地区におけるイスラエルの壊滅的な攻撃を抑制しようとする意図も見られなかった。 トランプが激怒することなく、両国の指導者がこのような意見の相違を公の場で表明できたことは、2人が予想外の信頼関係を築いていることを示唆している。外交において、こうした関係は重要だ。 しかし、英国が「特別な関係」と呼び続けるこの枠組みにおいて、英国は対等ではなく、ますます従属的な立場にあるという印象を強く残した。王室の威厳ある式典にもかかわらず、世界中の多くの人々が抱くのはそうしたイメージである。 * * *