アジア初陣の町田、独特のACL試合球にも苦戦「ロングボールを有効に使えなかった」「アジャスト力を持たないと」

細かいミスが続き、こじ開け切れなかったFC町田ゼルビア

[9.16 ACLEリーグステージ第1節 町田 1-1 FCソウル 町田]

 クラブ史上初のアジア挑戦を1-1の引き分けでスタートしたFC町田ゼルビアだが、初陣の立ち上がりから漂っていた停滞感の背景には、普段は使い慣れていないケレメ社製の公式試合球への適応不足があったようだ。

 ボランチの一角で先発し、後半途中から左センターバックでプレーしたMF中山雄太は試合後、次のように前半の戦いぶりを振り返った。

「相手の動きに対して、本来だったら(パスが)通ればいい形になるような部分も質でつながらなかった部分があった。判断のミスよりも技術的なミスであまりいい流れが作れなかった部分があった。正直、ACLのボールもJリーグと違うので、本当にやりづらかったなか、そこも慣れていかないといけない。そこがアジャストして通っていればいい形になりそうなシーンが多かった。硬く見えたのはそれが続いて、置きにいきそうになるような探り探りが続いてしまったというのもある」  中山自身のプレーで言えば、前半途中にミドルシュートが外れた場面は「あれは僕のファーストタッチの技術ミス」だったそうだが、サイドに散らすロングフィードで「アジャストしていない」という感覚があったという。  ACLで使用しているのはケレメ社製のマッチボール。Jリーグで使用されているアディダス製の「コネクト25」など近年のモデルは独特のパネル形状で、小さな縫い目で空気抵抗を小さくするような工夫がなされている一方、ケレメ製のボールは五角形と六角形のパネルを深く縫い込んだクラシカルな仕様となっている。  そうした仕様の違いからか、中山によれば「芝との噛み合わせが良すぎるのと、ピッチが濡れていたけどあまり関係なくグリップ力がある。Jリーグよりも反発力がある」という特性がある様子。もちろん公式球を変えることはできないため、「そういうところのアジャスト力はチームとしても持っていかないといけない」と自身に矢印を向けることも忘れなかったが、対策の必要性を感じているようだった。

 同様の感覚はセンターバックでフル出場したキャプテンのDF昌子源も口にしていた。

 失点に絡んだパスミスのシーンについては「やってはいけないミス」と言い訳しようとはしなかったが、町田の攻撃パターンの一つでもある、長身のDF望月ヘンリー海輝をターゲットとしたサイドチェンジには大きな影響があった様子。昌子は「変な回転がかかって飛んでいってしまうことで、ロングボールを有効に使えなかった」と振り返った。  実際、この日は望月へのサイドチェンジが減少し、攻撃のスイッチが入らない時間が長く続いた。昌子は「相手が4バックだったのでもっと通せるかなと思ったけど、いつもの感覚で蹴ったらすごい失速して(相手の)SBに行ってしまうことが多かった。蹴り方を変えてパワーを加えると、次はアウト回転がかかって戻ってくるようなボールになった」と感触を口にした。  また序盤は受け手の望月がヘディングの落下点を見誤るシーンも相次ぐなど、ボールの影響は蹴る側のみにとどまらなかったとみられる。望月は「言い訳っぽくはなってしまうけど……」と慎重に前置きをしつつ、「ボールが伸びたりというのがあって、Jリーグのボールの慣れとの乖離はあったと思う」と認めていたが、この一戦では浮き球に合わせたシュートが大きく枠を外れる場面が両チームに相次いでおり、シュートの場面にも影響していそうだ。

 とはいえ、こうした普段と異なる環境への適応も強いられるのがアジアの舞台とも言える。町田は次節、ジョホール・ダルル・タクジム(マレーシア)とのアウェーゲームで初の東南アジア遠征も控えており、気候やピッチへの適応も試される。そして、その中で勝っていかなければ次のステージにはつながらない。

 中山はこの日の引き分けについて「国際試合に慣れていない選手だったり、スタッフも慣れていないし、そういった意味では負けずに何かを十分に得られた試合でもあった」「J1の2年目でACLの初舞台という面では上々」という前向きな観点を口にしつつも、「もうすでにそういう部分ではなくJリーグ優勝、タイトルを取るということを標準に考えると勝ちたかった」と断言。さらに基準を高く持ちながらアジアの舞台を戦い抜く覚悟を見せた。 (取材・文 竹内達也)●ACLE2025-26特集▶話題沸騰!『ヤーレンズの一生ボケても怒られないサッカーの話』好評配信中

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