閉店した老舗銭湯を現役京大生が引き継ぐ 借金500万円…地域の笑顔戻る
昔ながらの風情が残る、京都市の銭湯。開店時間の午後3時が近づくと、常連客が集まってきます。 創業から今年で110年目を迎える「大黒湯」。花街として知られる宮川町にも近く、古くから、舞妓(まいこ)や地元住民に愛されてきました。 この銭湯が注目されている理由の一つが…。お湯の温度は、なんと48℃です。 客 「熱い、熱い、熱い」 「(Q.やっぱり熱い?)日本一熱いです」 「京都一熱い風呂」を自負して、今も守り続けています。アクセスの良さもあって外国人観光客にも人気です。 しかし去年4月、「大黒湯」に大きな転機が訪れます。85歳となった2代目店主が、自身の年齢と建物の老朽化を理由に、廃業を決めたのです。 常連客 「近所とか友達同士で、『えっ、あそこ、やめはったん?』『どないする?』みたいに、結構大騒ぎになりましたね」 京都大学に通う、3年生の竹林昂大さんも、ショックを受けた常連の一人です。受験に2度失敗し、入学後も4回留年。肩身の狭い思いをしていた竹林さんにとって、「大黒湯」は数少ない“居場所”の一つでした。 竹林さん 「マジでうつ状態で、1日中、布団にくるまっているのが1年くらいあった。(ただ)銭湯に行く時だけは外に出られた。いつも同じ時間に行くんですけど、同じ顔ぶれで。気付いたら、めっちゃしゃべってて…みたいな」 この経験が彼を救い、そして背中を押しました。大学生ながら、営業再開に必要な500万円を借金して、「大黒湯」を引き継ぐことになったのです。 竹林さん 「開店直後は一番風呂の人たちが。だいたいいつもの顔ぶれですね」
自ら番台に座り、客を出迎える竹林さん。顔なじみの常連も増えました。 客 「ちくりん(竹林)これ良かったら」 竹林さん 「まじっすか。二郎ラーメン!?」 若者が経営するようになって、変わった部分もあります。竹林さんが使っていた筋トレ器具を、入浴前に汗を流してもらおうと、脱衣所に置いています。 他にも、外国人向けに「入浴マナーを伝えるイラスト」を用意。キャッシュレス決済も導入しました。 一日の朝は、お風呂の清掃から始まります。 竹林さん 「ルカ!洗剤足りてる?」 ルカさん 「足りてる!」 竹林さん 「薬湯は(磨き)終わったんよね?」 ルカさん 「薬は(磨き)終わった!」 従業員と一緒に浴槽を磨き上げ、一番風呂に入るのが楽しみの一つです。そして開店前に腹ごしらえのため近所の飲食店へ。 竹林さん 「うまいからマジで。焼きそばの概念変わる」 ルカさん 「(Q.お昼はいつも出してもらってる?)昼と晩飯付きなんすよ。超ありがたいっす」 晋太郎さん 「しかもこの辺うまい店多いからね」 竹林さんの自宅は、銭湯の2階にあります。以前は別の場所で一人暮らしをしていましたが、「大黒湯」を引き継いだ時に引っ越しました。 充実した生活を送っているように見える竹林さんですが、まだ大学生。学業との両立は簡単ではありません。経営を始めたばかりのころは、清掃後に疲れ果て、脱衣所で寝てしまう日が続いたといいます。 「1日3時間睡眠とかで1週間続いちゃって、1〜2キロ痩せちゃって、これはやばいと思って、そこから人件費いとわず使って、彼ら(アルバイト)に助けてもらいながら。健康第一」 あと1回留年すると、大学を除籍される“がけっぷち”の状態。そのため当面は「休学」という選択をしました。
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別の日。清水寺周辺を走る人力車をよく見ると、引いているのは竹林さんです。7年ほど前から人力車のアルバイトをしていて、今も銭湯の空き時間に働いています。仕事中に「大黒湯」の近くを通りかかることも…。 「ちくりん!」と、声を掛けられます。竹林さん、今や地元で結構有名みたいです。 一方そのころ、「大黒湯」ではトラブルが起きていました。 「京都一熱い風呂」を自負する大黒湯。ところが、その湯を沸かす機械が突然動かなくなり、湯船もシャワーも冷たいままになってしまったのです。竹林さんも慌てて銭湯に駆け付けます。 「どう?お湯の温度」 「低いな。かなり低い」 いろいろ試しますが、一向に改善しません。 「(Q.結構やばい?)自動モードに入れたとたんバーナーが落ちる現象が起きて、ここまでいろいろ試しても戻らへんのは初のケース。まぁ、古いは古いんでね」 しばらくすると、ようやく釜が動き出しました。 「あ、いきましたね。結局、何が原因やったか分からない」 「シャワー水になってました?」 客 「うん、冷たかった」 竹林さん 「なんかバーナーの調子が悪くて。すみません」 店主が変わり、新しいことを取り入れても建物や設備は昔のまま。こうしたトラブルが後を絶ちません。 6日に竹林さんと一緒にいたのは「大工のトクさん」と呼ばれる男性です。 竹林さん 「いろんな銭湯の工事とかに携わっているプロ」 この日は、来月から予定しているリニューアル工事についての打ち合わせでした。 竹林さん 「天井変えるとしたらどうなります?」 大工のトクさん 「これか、杉板。ヒノキか杉かどっちか」 竹林さん 「ヒノキでできたらいいですね」 大工のトクさん 「3倍くらいかかるかも」 竹林さん 「でもサウナ好きのお客さん多くて、こだわりたい」 しかし費用は、今の見積もりで200万円以上です。 竹林さん 「また借金が膨れ上がりそうだなと。すでに借金500万円あるんで、ちょっと皆さんの力を借りられないかということで、クラウドファンディングでお金もちょっと集めさせていただいて、もっといい銭湯にして、この先長く残していけるようにご協力お願いします」 若い力による“銭湯の復活”を、常連客はどう感じているのでしょうか? 「ありがたいなというか、継続してもらって、自分にとっては毎日来なくても、やっぱりこの銭湯って地元にとってコミュニティーみたいなものなので、そういう意思を受け継がれてやられてるって素晴らしいこと。うれしかったです」 経営は素人。資金もありません。でも竹林さんには、ここを守っていく強い思いがあります。 「みんなほんまに東山の人たちいい人たちばっかりで、やってて楽しいっすね、ここの銭湯。この街の風呂屋を張らせてもらってるというのは本当幸せで果報者やなって思いますね」 まだまだ経営は始まったばかり。京都一“熱い風呂”に、京都一“熱い心”で向き合います。 「本当に通っている人って風呂に入りに行くというより、お客さんと常連さんとしゃべりに行く場所。コミュニティーの中心なんです。だからこそ残していきたい」 (「グッド!モーニング」2026年1月12日放送分より)
テレビ朝日