大阪万博:「リユース食器」が条件の万博キッチンカー、「高すぎる」と一部業者が不使用…理念に反し使い捨て容器 : 読売新聞
大阪・関西万博の会場で、キッチンカーで利用することが営業の条件となっている「リユース食器」が、一部で使われていないことが、事業関係者への取材で分かった。日本国際博覧会協会(万博協会)も状況を把握しており、改善に向けて事業者と協議する構えだ。(藤本綾子、土谷武嗣)
万博会場のキッチンカーで利用されているリユース食器(大阪市此花区で)万博協会は、契約する8事業者計26台のキッチンカーで、洗って再使用できるリユース食器の利用を営業の条件としている。環境に負荷がかかる使い捨てを減らす試みで、事業者の公募段階から原則使用を明記していた。「未来社会の実験場」と位置づける万博でリユース食器を普及させ、「レガシー(遺産)」とする狙いがある。
各事業者は、リユース食器事業者「リユース食器プロジェクト」(環境NPOなどで構成)に料金を払って食器を借り、飲食物を販売する。購入者は飲食後、会場の返却場所に食器を返し、食器事業者が回収・洗浄をして再使用する仕組みだ。
リユース食器運用の仕組み食器は、プラスチック製で皿、どんぶり、カップ、箸など10種類があり、貸出価格は1点あたり50~120円に設定されている。
ところが、万博協会や事業関係者によると、会場西部のEXPOアリーナ北側でキッチンカー4台を運営する大阪府守口市の事業者は、6月中旬から所定の食器を全く使わず、使い捨ての紙トレーや紙コップなどで商品を提供していることが判明した。会場南西部の「進歩の広場」で4台を営業する神戸市の事業者も、大半の商品でリユース食器を使用していなかった。
守口市の事業者は27日までに取材への回答がなかった。神戸市の事業者は取材に、理由について「価格が高すぎる。コストパフォーマンスを考えた上での経営判断だ」と主張した。
この2事業者のほかにも、一部でリユース食器を使っていない事業者もある。やむを得ず使い捨て容器などを使う場合は、万博協会に報告する必要があり、協会によると、報告を受けて許可しているケースもある。
協会「指導していきたい」
リユース食器の貸出価格は、一般的なイベントで貸し出す際より3倍程度高いが、公募段階であらかじめ示されていた。価格が高い理由についてリユース食器事業者は、通常は破損・紛失の費用を借り手が負担するが、今回は食器事業者側で負担することになっていることを挙げ、食器を回収するスタッフの人件費などもかかると説明している。
万博協会はキッチンカー事業者の募集要領で、リユース食器を使用せずに営業した場合、契約解除できると記載している。協会の永見靖・持続可能性局長は取材に対し、所定の食器を使わない事業者について、「思ったほどには協力してもらえていない。これから指導していきたい」と述べた。
総合地球環境学研究所の浅利美鈴教授(資源循環)は、「持続可能な社会のための技術や価値観を示す万博で、リユース食器を活用する意義は大きい。万博協会が『使い捨てしない』という理念を十分に発信できていない面もあり、適切に運用している事業者のPRも必要だ」と指摘する。
普及の試金石
リユース食器は、ごみ削減に加え、原材料の採取から廃棄にかかる二酸化炭素の排出量も削減できる。環境省によると、再使用できるプラスチック製タンブラー(350ミリ・リットル)を100回使った場合の1回あたりの排出量は18グラムで、使い捨てプラカップ(78グラム)の4分の1以下、紙カップ(37グラム)のほぼ半分だ。
国内ではイベントなどで導入が進んできた。祇園祭(京都)では2014年、天神祭(大阪)では17年から活用。22年に鈴鹿サーキット(三重)で開催されたF1グランプリやサッカー・Jリーグの試合会場でも使われた事例がある。兵庫県尼崎市や京都府亀岡市などは、イベントで使用する主催者や出店者にレンタル費用の一部を補助する。万博のような大規模で長期間のイベントに導入されるのは初めてで、今回の実績が今後の普及の試金石になるとみられている。