King & Prince高橋海人、あらゆる努力で得た“財産の日々” 長澤まさみの「ドラゴン桜」から変わらぬ芝居スタイルとは【「おーい、応為」インタビュー】
King & Princeの高橋海人(※「高」は正式には「はしごだか」)が、10月17日公開の映画「おーい、応為」で初の時代劇に挑んだ。芸術への情熱を胸に京都撮影所へ向かい、実在した“善次郎”を演じるため、理解するため、生きるため、あらゆる努力を重ねた日々。憧れていた大森立嗣監督作品で長澤まさみ・永瀬正敏らと過ごした時間。それは彼にとって、かけがえのない財産となった。
― 大森監督の作品に出たいという想いもあったそうですね。
高橋:そうですね。大森監督の「セトウツミ」(2016)が好きで、何回も何回も観た映画の一つでもあります。「セトウツミ」の世界観とメインキャラの2人が喋っている空気感を、通りすがりの人の感覚で覗き見している感じがすごく好きで、心地よくて。「すごい、誰が作ったんだろう」と思って調べたら大森監督でした。僕が高校生ぐらいのときの話なんですけど、そこから「いつか大森監督の作品に出てみたいな」と思っていました。なので今回は念願でした。― その中で今回善次郎という役が来て、この役のどのようなところに魅力を感じて演じたい・挑戦してみたいというふうに思われましたか?
高橋:自分も絵をやっているのでまずは絵師さんという役柄に魅力を感じたんですけど、日本芸術界の巨匠・元祖みたいな存在である北斎、その弟子の善次郎はどういうことを思ってどんな生活をしていたんだろうというところにも興味がありました。― 善次郎と2人の関係についてはどう思われていますか?
高橋:なんというか、俯瞰から見ていたんだろうなと思います。ある種この作品を観ているお客さんと同じ目線で見られる唯一の人なので、観てくださる皆さんと同じ感覚で、2人の才能や不器用なところ、喧嘩しているときも「なんか似てるな~」と思いながら演じていました。― 善次郎とご自身が似ていると感じたところはありますか?
高橋:似ているところ…(考えて)でも絵を描くことくらい?善次郎は意外と盛り上げ屋じゃないですか。僕はそうじゃなくて、そういう盛り上げ屋がいてくれるとありがたいなと思うタイプ(笑)。なので似ているところはあまりないかもしれないです。だからこそ演じていて楽しかったです。― 普段描かれる絵とは全く違うジャンルかと思いますが、やってみていかがでしたか?
高橋:浮世絵はもっと小さいときから触れてくればよかったと思うぐらい本当に魅力的です。自分で描いてみるとわかるんですがやっぱりめっちゃ難しくて。ちょっとでも気持ちがぶれたり力加減が変わったりすると筆圧で絵も変わってきちゃう。でも、例えばポスターにある応為さんが描いた遊郭はめちゃくちゃ細い線が綺麗に入っていたり、美人画で言うと生え際のところに細かなラインが描かれていたり…。今のデジタルの時代では線の太さも自由に変えられて、コピー&ペーストもできて、画面上でアップすることもできるけど、それがない時代で、皆が同じ環境下のもとで書き込んだり線を使い分けたりできていたのがめっちゃすごいと思いました。 色合いも素敵ですよね。“北斎ブルー”とも言われている「ベロ藍」がめちゃくちゃ綺麗で。今はデジタルでどんな色でも表現できるけど、当時は数少ない鉱石を削って粉にして、水と混ぜて色を作っていた。今より使える色が少ない中で濃淡や組み合わせで表現して、皆そういうセンスがすごく鋭かったんだろうなと思いました。あるものの中でいろいろな研究をして試しながら生きていたんだろうな、というのが絵でもちゃんと表現されているので、それが魅力的に感じました。― 善次郎を演じるにあたり、大人っぽさや色気なども意識されましたか?
高橋:ちょっとゆっくり動いてみようとか、ただ喋るのではなく腹を意識するとか、そういうのはあったかもしれないです。自由っぽい感じがいいのかなと思っていたので、割とのびのびとしていました。でも思い返すといっぱい笑ったなという記憶で、何か面白いことがあったらちゃんと笑うところにも大人の余裕を感じて。そういう意識はしつつも、大森さんの脚本が完全にそうさせてくれたんだろうなと思います。― 長い年月の物語ですが、年を重ねていく感じを表現するために工夫したことはありますか?
高橋:声は最初に比べてどんどんしゃがれていく、低くなっていく感じを意識して、トーンやテンションも落ち着いていく感じをイメージしていました。でも髭が生えたり恰幅が良くなっていくというビジュアルの変化もあったので…全然関係ないんですけど、髭面の自分が父親にそっくりで(笑)。「あ…血だ」って思いました(笑)。― そんなお二人との共演、緊張は感じられましたか?
高橋:めちゃくちゃ緊張しました…!やっぱりえげつない経歴を持つお二人と共演するわけだから。でも仲間ではありつつも、お二人に対して「負けたくない」「どうにか勝てるように」という、そのぐらいの気持ちを持ってやっていきたいなという想いでした。そのときに出せる自分の全部を頑張って出したつもりです。― 長澤さんとはドラマ「ドラゴン桜」(TBS系/2021)以来の共演となりましたが、現場ではどのようなやりとりをされましたか?
高橋:「キンプリどう?」みたいな感じでグループのことも気遣ってくださって、アイドル活動の話もしました。あとは京都の美味しいご飯屋さんを教えてもらったり。撮影期間はKing & Princeの活動のときに東京に戻ってくる感じで京都と行ったり来たりしていたので、京都の美味しいご飯もたくさん食べました。
― お芝居について相談することはありましたか?
高橋:どういう感じでアプローチするかといった話を最初にしました。長澤さんには「ドラゴン桜」のときも「とにかくミスってもいい!やってみよう!」と言っていただいて、そのスタイルが素敵だったんですよね。今回も「やってみないとわかんないよね、やってみよう」みたいな感じでした。― 和気あいあいとした現場だったんですね。
高橋:そうですね。それから撮影施設の中に小屋があって、絵の練習部屋みたいな感じになっていたんです。そこでは3人一緒にいるんですけど、それぞれ話すこともなく絵を黙々と描く。たまに2人の絵を覗いて「めっちゃいいですね!」と会話して。部活みたいな感じで、それもすごい空間だったなと思います。― 京都撮影所には職人の方がいっぱいいて独特の雰囲気があるイメージなのですが、高橋さんはどのように感じられましたか?
高橋:やっぱりその道のプロの人たちがいっぱいいるから、撮影現場でもすごくスムーズでした。「お邪魔します」という感じでいたんですけど、皆さんすごく笑顔で迎え入れてくれて。厳しいという話もよく聞くので、ある程度の覚悟はしていたんですけど、飴をくださったり(笑)。なんというか、この文化はすごく素敵だなと思いますね。時代劇の作品だったら、その世界の人たちが作り上げていく。歴史の作品を作っていく上ではすごく大事な文化なのかなと感じて新鮮でした。皆さん優しかったです。― お仕事が立て込んでいるときのリフレッシュ法などはありますか?
高橋:ボイストレーニングに行ったりダンスを踊ったりすることです。― お仕事に直結することですね。
高橋:そうなんですよ!ラッキーなことにそれがめっちゃ楽しくて、自分が成長していると感じる瞬間、自覚する瞬間が一番ホッとするんですよね。脳をシャットダウンする方法で言うと、映画を観たり、音楽を聴いたり、ゲームしたり、そういう家でできることをすごく大事にしています。でもたまにハマっちゃうとそれで寝る時間を削っちゃって、「やっちゃったな」みたいなこともあります(笑)。― (笑)。でもそれで言うと、もともと趣味だった絵も今こうして仕事に繋がっていますね。
高橋:そうですね。だから頑張っているものはちゃんと何かしらに繋がるんだなと思います。― 最後の質問です。高橋さんにとって本作に参加したこと、善次郎という役を演じたことは、今後のキャリアやお仕事にどのように活かされていくと思いますか?
高橋:今回の作品は「作品に出られた」というだけではない、得たものがたくさんあって。時代背景が違うことでその時代を調べる面白さも改めて知れたし、善次郎は昔本当に存在した人なので、その人の情報を探して、絵から「この人はどういうことを思っていたんだろう」と想像して。そういう役作りは初めてだったので楽しかったです。 あとはもっと絵を好きになりました。これだけ没入して生涯死ぬまで絵を描き続けた人を近くで見るという体験ができたので、自分もこうやって好きなものをずっと好きでいいんだと改めて思えました。それからやっぱりすごいお二人とお芝居ができて、大森監督の作品に出ることができて、いろいろな満たされた感情でいっぱいで。自分の中でもすごく財産になるような作品になったと思います。― 貴重なお話をありがとうございました。
(modelpress編集部)1999年4月3日生まれ、神奈川県出身。2018年、King & PrinceのメンバーとしてCDデビュー。同年のドラマ「部活、好きじゃなきゃダメですか?」(日本テレビ)で初主演を務める。近年の主な出演作に、ドラマ「ドラゴン桜」(TBS/2021)「未来への10カウント」(テレビ朝日/2022)「ボーイフレンド降臨!」(テレビ朝日/2022)「だが、情熱はある」(日本テレビ/2023)「95」(テレビ東京/2024)「わが家は楽し」(TBS/2025)「DOPE 麻薬取締部特捜課」(TBS/2025)など。11月14日に映画「君の顔では泣けない」が公開予定。