トランプ氏と中国習主席の会談、韓国で開始-米中貿易摩擦の緩和探る

トランプ米大統領と中国の習近平国家主席は30日、韓国で会談した。世界市場を揺るがしてきた広範な貿易摩擦の沈静化を目指す両首脳による対面での協議は、約1時間半で終了した。

  会談終了時には、両首脳が握手を交わし、韓国・釜山の空軍基地で行われた会談会場から並んで歩み出る様子が見られた。会談はアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の合間に行われ、トランプ氏はこの後、首都ワシントンに戻る予定。習氏はそのままAPEC首脳会議に出席する。

  トランプ氏は会談冒頭で、「大成功の会談となるだろう」との期待感を示した。

  両首脳は、週末にマレーシアで交渉された枠組み合意の詳細を詰めたとみられる。合意案では、中国が少なくとも1年間にわたりレアアース(希土類)輸出を巡る規制を停止し、米国産大豆の輸入を再開する代わりに、米国が関税を引き下げる内容が盛り込まれている。

  トランプ氏は冒頭で、「すでに多くのことに合意しており、今まさにさらに幾つかの合意を交わすところだ」と指摘。習氏を「非常に手ごわい交渉人」と評しつつも「偉大な国の偉大な指導者」と持ち上げた。

  また「われわれは長期にわたって素晴らしい関係を築くことになると思う」と述べた。  

  一方の習氏は「再会できて非常に温かい気持ちだ」とし、「中米関係の強固な基盤を築くため、引き続き協力する用意がある」と言及。

トランプ米大統領と中国の習近平国家主席が韓国で会談した

  さらに「世界の二大経済大国が時折、摩擦を起こすことは当然だ。風や波、試練に直面しても、われわれ両国の関係もかじを取る者として、正しい航路を維持し、中米関係という巨大な船を安定して前進させるべきだ」と強調した。  

  習氏は「双方の経済・貿易チームはそれぞれの主要な懸念に関して基本的なコンセンサスに達し、前向きな進展を遂げた。これが本日のわれわれの会談の必要条件を整えた」と述べた。

  また、パレスチナ自治区ガザや東南アジアなどでの紛争解決に向けたトランプ氏の取り組みをたたえ、「主要国としての責任を共に担い、平和の追求においてさらに成果を上げることができる」と語った。

  トランプ氏の選挙スローガンにも触れ、「中国の発展はMAGA(Make America Great Again=米国を再び偉大に)というビジョンと歩調を合わせていると常に確信している」と発言した。

  トランプ氏は29日、会談が3-4時間に及ぶ可能性を示唆していたが、ホワイトハウスの公式日程では2時間未満が確保されている。今回の合意は、米中両国が互いに輸出品への関税や規制を応酬してきた数カ月にわたる貿易緊張の一応の決着となる見込みだ。

  ただし、米中経済競争の根幹にある問題を包括的に解決するものではないとみられる。

  会談には、これまでの交渉に関与してきた主要メンバーが同席した。米国は米通商代表部(USTR)のグリア代表、ラトニック商務長官、ルビオ国務長官、ベッセント財務長官、ホワイトハウスのワイルズ首席補佐官、パデュー駐中国大使が出席。中国側は何立峰副首相や王毅外相、王文涛商務相らが同席した。

  枠組み合意の詳細が徐々に明らかになる中で、習氏が一時的な譲歩と引き換えに、重要な関税引き下げを勝ち取った可能性が示唆されている。

習近平氏(左中央)とトランプ氏(10月30日、釜山)

  トランプ氏は29日、合成麻薬フェンタニルを巡る中国の協力を理由に、米国が中国製品に課している20%の関税について、引き下げる意向を明らかにした。また習氏との会談で、米エヌビディア製の画像処理半導体(GPU)「ブラックウェル」を巡り協議する見込みだとした。

  今回予想される関税緩和措置には、トランプ氏が11月1日に実施を警告していた100%関税の棚上げも含まれる。さらに、11月10日に期限を迎える同様の高関税に関する休戦の延長のほか、重要ソフトウエアや航空機部品の幅広い輸出管理措置の一時停止も盛り込まれる見通しだ。

  一方で中国側は、制裁対象となっている企業の子会社のうち、持ち株比率が50%以上の企業にも同様の制限を適用する米国の規則を撤廃するようトランプ氏に求める見通しだ。この規則は数千社に影響を及ぼす可能性があり、輸出業者にとってはデューデリジェンス(適正評価)の負担増にもつながっている。

  トランプ氏はまた、通商合意の一環として、中国にエヌビディア製ブラックウェルへのアクセスを付与することについてオープンな姿勢を示した。これは大きな譲歩に当たり、ワシントンの国家安全保障の強硬派を刺激する可能性がある。

  このほか、動画投稿アプリ「TikTok」の米国事業売却の承認、中国による米国産大豆の購入再開、レアアースを微量でも含む製品の輸出にライセンスを義務付けるとした中国による措置の停止などが含まれる見通しだ。

  トランプ氏はまた、ウクライナでのロシアの戦争に対する支援を抑制するよう習氏に求める見込み。米当局者によると、世界的な和平協定に関する協議も行うという。

  ただ、ウクライナ侵攻以降にロシアとの関係を強化してきた中国が、本格的な対応に踏み込むとの見方は少ない。

  一方、台湾問題を巡っては、トランプ氏は今回の会談を前に議題から外す意向を示唆している。

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原題:Trump, Xi Meeting Ends After Around 90 Minutes of Trade Talks(抜粋)

— 取材協力 Josh Wingrove and Jordan Fabian

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