性別変更の外観要件、高裁が違憲判断 トランス女性「やっと…」

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二階堂友紀

トランスジェンダーを象徴する青、ピンク、白の旗(中央)=2025年3月25日午前11時30分、大阪市北区、花房吾早子撮影

 出生時に決められた性別と性自認の異なるトランスジェンダーの人たちが、戸籍上の性別を変更する際、性器の外観も変えるよう求める法律の要件は違憲か――。この点が問われた家事審判の決定で、東京高裁(萩本修裁判長)は、当事者の状況によっては「違憲の事態が生じ得る」と判断した。申立人の場合は違憲になるとして、女性への性別変更を認めた。

 この要件に関する高裁の違憲判断が明らかになるのは初めて。さらに決定は「立法府は裁量権を合理的に行使し特例法の改正をすべきだ」などとして、国会に法改正の議論を促した。

 決定は10月31日付。家事審判は非公開の手続きで、申立人が朝日新聞の取材に明らかにした。

 この法律は性同一性障害特例法で、性別変更に五つの要件を定める。最高裁は2023年10月、精巣や卵巣の切除を求める「生殖不能要件」を違憲・無効と判断。今回問われた「外観要件」についても下級審の違憲判断が相次ぐが、特例法は改正されていない。

「違憲の状態が生じ得る」

 申立人は出生時に男性とされ、女性として長年生活している50代のトランスジェンダーの女性。今年1月に関東地方の家裁に性別変更を申し立てたが、3月に外観要件を満たさないとして却下され、即時抗告していた。

 高裁決定はまず、性自認に沿った法令上の扱いを受けることは「重要な法的利益だ」と指摘。その利益を実現するため、外観要件が性器の手術を必須とするなら、憲法13条が保障する「自分の意思に反して体への侵襲を受けない自由」を過剰に制約すると述べた。

 そのうえで、外観要件は公衆浴場などでの混乱を避けることが目的で、手術しなくても、ホルモン投与で性器の外観が変われば満たせるとした。

 ただ、ホルモン投与には重大な副作用の恐れがあるうえ、性器の外観が変わらない人がおり、体質などから投与できない人もいると言及。こうした人にまで外観要件を課せば手術を受けるしかなくなり、憲法13条違反になるとして「違憲の事態が生じ得る」と判断した。

トランスジェンダー女性の性別変更認める

 これを受け、申立人はホルモン投与を20年以上受けても陰茎が萎縮しておらず、外観要件を課せば違憲になるとした。女性として長年働いている点も踏まえ、この要件なしで性別変更を認めた。

 性別変更の家事審判は、国などの対立する当事者がいないため、今回のように性別変更を認める決定が出れば確定する。

 札幌家裁は9月、外観要件自体を違憲とする2件の決定を出した。最高裁によると、同月までに少なくとも計5件の違憲判断が出ている。札幌以外の3件がどこの裁判所の決定かは明らかにしていない。

後半では、申立人の思いや、決定のさらなる詳細、識者の見解を紹介しています。

つきまとう戸籍とのずれ

 司法がまた踏み込んだ判断を…

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この記事を書いた人

二階堂友紀
東京社会部
専門・関心分野
人権 性や家族のあり方の多様性 政治と社会

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