ウクライナ軍は弾道ミサイルの迎撃が困難、関連データの公開を停止
ウクライナ軍はロシア軍の長距離攻撃を迎撃した結果を発表してきたが、8月9日以降のミサイル攻撃に関するデータ公開を停止、ブルームバーグも11日「ウクライナ軍は安全保障上の措置として報告形式を変更した」と報じ、これはパトリオット迎撃ミサイルの供給が追いついていないためだ。
参考:Ukraine Stops Reporting Russia Missile Data as Defenses Struggle
これまでウクライナ軍参謀本部はロシア軍による長距離攻撃の規模、迎撃結果、着弾数を発表し続けてきたが、8月9日以降の発表から弾道ミサイル(イスカンデルM/KN-23/RM-48U)、巡航ミサイル(Kh-101/カリブル/イスカンデルK/Kh-32)、対艦ミサイル(ツィルコン/オニクス)、対レーダーミサイル(Kh-31/Kh-31P)、誘導ミサイル(Kh-59/Kh-69)の発射数と迎撃数のデータ公開を停止し、発射されたミサイル種類、自爆型無人機の発射数と迎撃数、ミサイルと自爆型無人機の着弾数しか公開しなくなった。
ブルームバーグも11日「ウクライナ軍は11日未明にロシア軍のドローン120機中98機を撃墜したと発表したものの、発射されたミサイル数に関するデータは公表しなかった。これは28発のミサイルを1発も阻止できなかった先週の攻撃(8月5日)を受け、弾道ミサイルの迎撃に関する報告を取りやめた数日後の出来事だ」「匿名の関係者によればウクライナ軍は敵の攻撃に対する安全保障上の措置として報告フォーマットを変更したという」と報じ、トランプ大統領はゼレンスキー大統領に毎月一定数のPAC-3 MSE供給を約束しているものの、これが弾道ミサイルの攻撃規模に見合っていないことは誰の目にも明らかだ。
ゼレンスキー大統領はPAC-3 MSEの確保に奔走しているものの、対イラン作戦=エピック・フューリー作戦の影響で米軍備蓄は推定2,330発から推定759発~827発まで減少しており、毎月生産されるPAC-3 MSEの数も推定54発~58発程度(年650発~700発)しかなく、たったこれだけのPAC-3 MSEを米国を含む同盟国・パートナー国のパトリオット運用国(計17ヶ国+ウクライナ)で奪い合っているため、どれだけ支援を求めてウクライナに供給されるPAC-3 MSEの数が短期間に増えることはないだろう。
出典:Lockheed Martin
そのため現実的な対応策はエネルギーインフラのみを限られたPAC-3 MSEで保護し、軍需産業を含むあらゆる産業は分散と地下化、人間はシェルターへの避難で対応しながら、長距離攻撃能力で弾道ミサイルの製造に関連したサプライヤーを攻撃して生産を妨害し、イスカンデルM、KN-23、RM-48Uを発射するランチャーを直接破壊して被害を抑制するしかない。
このような自軍にとって都合の悪い公式データの公表停止はウクライナに限ったことではなく、ロシア連邦国家統計庁は2024年に戦死者数の推定に活用されていた人口統計データの「死亡数」と「外因死」を非公開にし、最近では精油所への攻撃に起因した燃料価格の高騰を国民から隠すため、連邦国家統計局=ロススタットのウェブサイトで公開されていたガソリンおよびディーゼル燃料の消費者価格に関するデータを非公開にしたばかりなので、交戦国にとって「わざわざ敵の情報戦に利用されるデータを与えてやる必要はない」といったところだろう。
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※アイキャッチ画像の出典:Lockheed Martin