習近平政権は「水危機」で静かに弱体化している…中国共産党が喧伝する「穀物自給率98%」の真っ赤なウソ(プレジデントオンライン)

習近平の長期政権を脅かすものは何か。新刊『習近平は何を恐れているのか?』(ビジネス社)を上梓した評論家の白川司さんは「首都北京、中国共産党の中枢、人民解放軍の総司令部、そして最大の産業集積地が、水リスクを抱えている中国北部に集中していることだ」という――。 【写真をみる】水の「南北格差」に苦しむ中国大陸 ■AIより水インフラの整備が急務  2026年4月28日、中国共産党中央政治局会議は、「六つのネットワーク」の整備を打ち出した。水網、新型電力網、算力網、次世代通信網、都市地下管網、物流網である。  7月に新華社が配信した解説記事では、これを「治水の偉業」として誇ったが、この実質的な宣伝記事は、実は意図せずして中国の最大の弱点を晒したものになっている。  中国北部は慢性的な水不足に悩まされており、南部の長江の水を北部へ送り込む巨大プロジェクト「南水北調」が進められてきた。長江の上・中・下流から取水する「西線」「中線」「東線」の3ルートで構成され、このうち東線は2013年、中線は2014年に通水している。一方、青蔵高原東部を通る最難関の西線は、技術的・環境的な困難からいまだ着工に至っていない。  新華社は、この南水北調の東線・中線一期による累計送水量が892億立方メートルを超え、沿線48の大中都市・約1億9500万人が恩恵を受けたと伝える。華北の治理区では、2025年末時点で、2020年比で浅層地下水位が3.76メートル、深層が7.65メートル回復したとしている。  これらの数字を信じれば、北京の水道水の7割以上が南水北調のルートから来ており、天津中心部はほぼ全量を南方の水に依存している。  重要なことは、基幹インフラ計画で水がAIや通信より上位に置かれた点だ。これは水問題が今後の国家運営にとって大きな制約になることを、中国政府が自ら暴露したようなものである。

■水資源の割合は「南部8:北部2」  中国の水問題の根本は、水資源において南北に極端に分断されている点にある。  中国国家発展改革委員会の調査報告(2009年)によれば、長江以南は国土面積の36.5%で水資源量の約81%を占め、淮河以北・西北地区は国土面積の63.5%を占めながら水資源量は19%にとどまる。  耕地で見ればさらに深刻だ。北部の海河流域と淮河流域は、全国の耕地面積の4分の1を抱えながら、水資源はわずか4%しかない。  ※姜美松「北京市の水資源管理対策の現状と課題――流域ガバナンスの視点から――」(『名城論叢』2013年9月)  上記のデータはやや古いが、この基本構造は変わっておらず、全体から評価すればむしろ悪化していると考えられる。  これはつまり、北部の水不足地帯のど真ん中に、北京(約2200万人)、天津(約1400万人)、石家荘(約1100万人)といった重要都市が並んでいるのである。共産党の中枢も、人民解放軍の総司令部も、中国最大の産業集積地もここにある。  北京の一人当たり水資源量は国際平均の数十分の1に過ぎない。中国はわざわざ水リスクが高い場所に国家の心臓部を置いているのだ。 ■最大の穀倉地帯を支える「化石水」  水不足は都市の問題にとどまらない。より深刻なのは農業である。  全水使用量の約6割を農業用水が占め、その多くが地下水の汲み上げで賄われる。とりわけ華北平原は中国最大の穀倉地帯だが、生産を支えるのは持続不可能な地下水の大量採取だ。冬小麦と夏トウモロコシの二毛作は灌漑なしに成立せず、年間降水量のうち冬季に得られるのはわずか30%しかない。  地下水には、雨が補充する浅い帯水層の「流れている水」と、補充されない深い帯水層の「たまっている水」の大きく二種類がある。  華北平原では浅い層が枯れ、深井戸で後者を汲み上げるのが常態化した。現在使われているのは数万年から数十万年かけて蓄積した「化石水」であり、一度失えばもとには戻らない。  NASAの重力観測衛星GRACEのデータを解析した研究によれば、2003年から2010年にかけて華北では年間約83億立方メートルの地下水が失われ続けた。地下水位の低下速度は年2.2センチに達する。  地下水位はその後、実際に回復に転じている。ただしそれは、南部から水を回してもらい、農地を減らすという大きな代償を伴っている。  ※Wei Fengほか「Evaluation of groundwater depletion in North China using the Gravity Recovery and Climate Experiment (GRACE) data and ground-based measurements」(『Water Resources Research』2013年) ※Di Longほか「Unprecedented large-scale aquifer recovery through human intervention」(『Nature Communications』2025年)

プレジデントオンライン
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