市況 - 株探ニュース

株式評論家 植木靖男
「インフレ相場の戦機近づく?」 ●マネーの流れが日本株反転の道をつくる

 日経平均株価は上に放れるか、下に振れるかのギリギリの均衡点で推移しているようだ。強弱感が対立しているというよりも、売り方、買い方とも見送りといった展開だ。一時は4万円台に乗せ、いよいよとの期待もあったが、それもわずか2日、過熱感が警戒されて売りが膨らんでしまった。

 4万円まで戻せたのは、意外にも米国株の堅調が背景にある。市場では、トランプ政権の関税政策を巡って、返り血を浴びて米国株は下げるとみられていたが、当てが外れた形である。

 もっとも、ナスダック総合指数S&P500が確りしていても、いままでのように日本株はそれに同調せず、停滞感をにじませている。

 それはなぜか。やはり日米関税政策を巡る不確実性が最大の要因か。加えて参院選への不安だ。石破茂首相が国難と呼ぶトランプ関税に対して現政府は打つ手がないようだ。与党が公約に掲げる給付金にしても、経験的に貯蓄に回ってしまうことだろう。思い切った、世間があっと驚くような政策を現政府に求めるのは無理か。  これではいま国民が最も期待している物価対策は期待できない。

 だとすると、物価高は容易に収まるとは思えない。結局、野党が主張する消費税減税に落ち着くのか。すでに超長期金利は不気味な水準にある。土地の値上がりを考えると、一刻も早く利上げしなくてはならないが、日銀は動くに動けない。物価上昇、円安は今後一段と進行する可能性がありそうだ。

 こうした点を考慮すると、市場はジリジリとインフレ色の強い相場になっていくように思われる。  株価反転の時期だが、これまでの上昇の整理が終了する、言ってみればバカンスシーズンの夏相場の後に訪れるとみてよいだろう。  材料的により大事なのは、やはりマネーの流れだろう。目下、外国人投資家は4月以降、日本株をすでに4.9兆円買い越しているとされる。今後、米国株次第では資金が米国から流出して、欧州、日本株などに一段と流入してくるとみる。  また、外資系企業が日本各地に研究拠点、工場新設を計画しているという。  株式市場にとって最も必要なのはマネーだ。資金流入が豊富になれば景気は良くなり、企業収益も好転する。かくして、株価上昇のタイミングはそれほど先ではないとみる。そのタイミングは材料というよりチャートからみて判断するのが常道だ。 ●物色対象として注目される金融株、個別では?

 物色対象はどうか。その対象は徐々に減少している。これまでテーマとされていた防衛関連株にしても欧州で人気が離散しつつあることが気掛かりだ。また、個別材料株も徐々に対象となり得る銘柄が減じている。

 もっとも、この週末にはさすがに目先筋が意を決して金融株を仕掛けてきたようだ。遠からず日銀は利上げに追い込まれるとの判断によるものだ。  そして金融株に引きずられるように個別株にも動意がみられるようになった。

 こうした状況を踏まえてあえて言えば、金融ではみずほフィナンシャルグループ <8411> [東証P]、三菱UFJフィナンシャル・グループ <8306> [東証P]。また、個別では下水道関連の日本鋳鉄管 <5612> [東証S]、さらに防衛関連の切り口を持つ大阪チタニウムテクノロジーズ <5726> [東証P]、キユーピー <2809> [東証P]を追いかけるケンコーマヨネーズ <2915> [東証P]などが面白そうだ。

 また、気になるのはやはり日本製鉄 <5401> [東証P]だ。ようやく注目が集まりだした。だが、慌てることはない。平成バブル相場時のIHI <7013> [東証P]を思えば、本番はまだ先だ。

2025年7月11日 記 株探ニュース

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