トランプ米大統領、AI半導体輸出規制を撤回する方針-関係者

トランプ米政権は、バイデン前政権が打ち出した人工知能(AI)向け半導体の輸出規制強化策である「AI拡散規則」を撤回する方針だ。事情に詳しい関係者が明らかにした。ハイテク大手や外国政府から強い反発を受けてきた半導体輸出規制全体の見直しの一環だという。

  前政権が1月に公表したAI拡散規則はエヌビディアなどの半導体の輸出先を三つのカテゴリーに分けて制限を課す内容。関係者によると、トランプ政権は5月15日の発効を見送る方針とされる。

  トランプ大統領が中東訪問の準備を行う中で方針変更が進められている。サウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)を含む中東諸国はAI向け半導体の輸出規制に反発してきた。

  方針変更が非公表だとして関係者が匿名で明らかにしたところでは、トランプ政権の当局者は対外的な半導体輸出管理を強化する新ルールの策定を進めている。

  7日の米株式市場ではブルームバーグの報道を受けて半導体株が上昇。エヌビディアは3.1%高で通常取引を終えた。フィラデルフィア半導体指数は1.7%上昇した。

  関係者の一人によると、方針変更は早ければ8日にも発表される可能性があるという。

  AI拡散規則は、中国が第三国経由で先端AI技術を入手することを防ぐ目的に加え、米国の先端技術へのアクセスに安全保障要件を設定することで、より多くの国々を影響圏に引き入れる狙いもあった。

  米商務省産業安全保障局(BIS)は報道官の声明で、「バイデン政権のAI規則はあまりに複雑かつ官僚的で、施行されれば米国の技術革新を阻害する」とし、「われわれは米国の技術革新を促進し、AI分野における米国の優位性を確保する、よりシンプルな新規則に置き換える」と説明した。

  ただ、関係者によれば、商務省は新規則策定中も現行の半導体輸出規制は厳格に運用する方針だという。なお、今回のAI拡散規則撤回の狙いの一つは、中国への半導体の迂回(うかい)輸出が指摘されているマレーシアやタイなどに対し、個別の輸出規制を課すことだと関係者の一人が語った。

  AI向け半導体最大手のエヌビディアは、米国の規制強化に繰り返し異議を唱えてきた。同社は第三国への規制はこれらの国を中国に接近させるだけだとして、AI拡散規則の全面撤廃を求めている。同社のジェンスン・ファン最高経営責任者(CEO)は今週、中国のAIチップ市場は今後数年で500億ドル(約7兆1900億円)規模に達する可能性があり、米企業にとって同国にアクセスできることが極めて重要だとの見方を示していた。

関連記事:エヌビディアCEO、中国のAIチップ市場は500億ドル規模に成長へ

  一方で、トランプ政権は中国の技術的野心を標的にした規制を強化しており、米国の輸出規制に準拠しつつ中国向けに設計されたエヌビディアのAIアクセラレータ「H20」製品の中国向け輸出を事実上禁止。エヌビディアはこれにより第1四半期(2-4月)に約55億ドルの費用を計上する見通しだと明らかにした。

  エヌビディアにコメントを求めたが、すぐには返答はなかった。

原題:Trump to Rescind Chip Curbs After Debate Over AI Rules (3)Trump to Rescind Global Chip Curbs Amid AI Restrictions Debate(抜粋)

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