MUFGとグーグル、金融AIエージェントで戦略提携 「エムット」は"非金融”強化

三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)は、Googleとリテール領域における戦略提携に合意した。GoogleおよびGoogle Cloudと連携し、AIだけでなく、Googleの各サービスを活用した金融AIエージェントなどを展開。さらに、エージェンティック・コマース/決済のための次世代インフラをGoogle Cloud上に構築する。

MUFGは、三菱UFJ銀行を中心に25年から個人向けサービス「エムット」を展開しており、新規口座数やカード利用者数も拡大している。今回の提携では、このエムットと連携する「非金融サービス」の強化に向けて両社が協力すもので、「金融エージェントの強化によるエムットの拡大が目的」(三菱UFJフィナンシャル・グループ執行役専務 リテール・デジタル事業本部長 兼 グループCDTO 山本忠司氏)としている。

提携で特に強調しているのが、商品選択・購買から決済に至るまでの一連のプロセスを自律的に支援するエージェンティック・コマースとエージェンティック・ペイメント(決済)の国内展開について。そのためのインフラをGoogle Cloudに構築するほか、日本におけるAIエージェント時代の購買・決済の新たなスタンダードの確立を目指す。

同基盤上で連携するAIエージェントが、日常の購買や支払い、手続きにおける意思決定プロセスを支援。顧客の意思を尊重しながら、優しく先導する新しい金融のあり方「自律型金融」の実現を目指すという。

金融分野では、従来のAI活用ではAIが「相談相手」であり、ユーザーの判断を支援し、決定はあくまでユーザー自身が担うものとなっていた。今後の金融AIエージェントでは、ユーザーは「条件設定」を行ない、AIが調整や実行までを担う形を想定し、対話型から自律型AIへのシフトを進める。

自律型金融のためのAIエージェントのイメージビデオでは、「年収840万」「時短勤務・在宅可」「返済額128,000円」などの住宅ローンのシミュレーションを提示し、この金額であれば無理なく返済できるとアドバイス。さらに貯蓄額やライフプランに応じた繰上返済や積立投資の拡大などの提案も行なう。

また、ベビー用品の写真をカメラで撮影し、過去の購入履歴と照合。定期購入や子どもの成長にあわせた商品への変更などを促す。エージェント経由の支払い方法は、「エムット」に登録した三菱UFJカードなどからポイント還元率の高いものを紹介し、購入後は自動で家計簿登録されるなど、利用者の「選択の負荷」を減らすようサービスを構築していくという。

AIエージェントが利用状況を理解・支援することで、一貫した安心感と利便性を提供。一人ひとりに寄り添った継続的なサポートを実現するという。金融AIエージェントは、2026年度中の概念実証(POC)開始を予定している。

また、MUFGとGoogleは、データマーケティングの高度化やパーソナライズされた顧客体験設計でも協力。「探さなくてもちょうどいい情報が届く」体験の実現を目指すという。

サービス連携については、Google FitbitをMUFGの特定サービス加入者に提供するほか、家計簿サービス「Moneytree」アプリにヘルスケア機能を実装し、金融だけでなく家計管理とヘルスケアを組み合わせた新たなサービスを展開する。MoneytreeとFitbitの連携は、26年秋を予定している。

また、対象アプリから三菱UFJ銀行口座を開設し、キャンペーンにエントリーした人を対象に、YouTube Premiumの3カ月無料プランを提供する。このキャンペーンは今夏開始予定。

さらに、GoogleのAIを搭載した、次世代3Dビデオ会議システム「HP Dimension with Google Beam」を導入。三菱UFJ銀行の店舗などで、遠隔地でも対面に近い自然なコミュニケーションを実現し、手続きや相談などのシーンにおける顧客体験の向上を目指す。この取り組みはGoogle Beamの日本導入時に、MUFGが最初のユーザーとなる想定としている。

そのほかにも、Googleのサービス・エコシステムとの連携を検討しており、日常生活における金融体験の「広がり」を目指すという。

なお、MUFGと三菱UFJ銀行は、OpenAIとも戦略提携を締結しており、全行員約35,000人がChatGPT Enterpriseを日常業務で利用可能としたほか、「エムット」などのサービスでもAI導入で協力するとしていた。

OpenAIとの連携については、主にデジタルバンクでのAI活用や、ChatGPTからの金融サービス利用を前提としたものを想定。「我々のアプリの中のサービスがOpenAIとの提携の範囲」(MUFG 山本専務)という。

今回のGoogleとの提携については、Googleのサービスや他社の旅行アプリなど、主に非金融の領域に金融エージェントを入れて、「日常に金融を溶け込ませる」(山本専務)と位置づけ。重複するものではないと説明する。

三菱UFJフィナンシャル・グループ執行役専務 リテール・デジタル事業本部長 兼 グループCDTO 山本忠司氏は、金融を取り巻く環境の変化について説明。金利ある世界が定着し、金融が身近になり、AI活用が広がる中で、消費者にとっては「選ぶ」負荷も高まっているという。

そうした中で、「利用者の負荷を下げ、生活の流れの中で自然に金融が機能する必要がある」と山本氏。金融とともに日常を支える社会インフラともいえるGoogleとの連携で、様々な利用シーンに金融サービスを"負担をかけずに”導入する必要性があるという。

三菱UFJフィナンシャル・グループ山本専務(左)グーグル・クラウド・ジャパン 日本代表の三上 智子氏(右)

その構想が「エムット」で、MUFGグループの銀行・証券・カードなどの金融サービスを統一ブランドの元で展開。その結果、25年度は前年度比で三菱UFJ銀行の新規口座開設が63%増、三菱UFJカードの発行枚数が1.9倍、三菱UFJ eスマート証券の仲介口座開設数が7倍、ウェルスナビの預かり資産残高が33%増と拡大しており、「大きな前進で、次世代への基盤ができてきた」とする。

こうした好調なエムットの世界を、金融サービス“以外”にも広げていくのが今回の提携の狙いという。Googleとの提携は、エムットとともに構想を発表している「デジタルバンク」が皮切りとなり、今回が第二弾。両社の強みを活かすとともに、“日常”サービスに強いGoogleとの提携に価値があると説明、「金融を日常に溶け込ませるための提携」(MUFG山本専務)とした。

グーグル・クラウド・ジャパン 日本代表の三上 智子氏は、デジタルバンクにおけるGoogle Cloudの連携の実績とともに、コンシューマ向けサービスの充実や、AIエージェントの標準規格をGoogleが主導していることなどから、今回の提携に至ったと説明。「単なるITベンダーではなく、デジタルを通じたお客様への新たな価値創造に向け、日本の新たな未来を切り開く覚悟」と語った。

エムットは今後、デジタルバンクの開業や統一ポイント(エムットポイント)、共通ID、ロイヤリティプログラム、デジタル相続プラットフォームなど金融軸でも強化。そこにあわせて非金融領域のパートナー拡大に向け、新たな金融AIエージェントを提案していく。

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