48歳で出産→現在は6歳の息子を育てる新聞記者が語る“高齢出産のリアル”「5年の不妊治療の末、10回目の移植で授かって…」「実際は、そこからが大変」|au Webポータル

『48歳、初産のリアル』(遠藤富美子 著)現代書館

 2022年に保険適用となった不妊治療。適用に年齢と回数の制限はあるが、裾野は広がりつつある。

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『48歳、初産のリアル』の著者で読売新聞記者の遠藤富美子さんは、40代で不妊治療に取り組み、48歳で出産。現在は6歳の子供を育てている。

「不妊治療をしていると、妊娠がゴールになってしまうんです。でも実際は、そこからが大変。流産してしまうこともあるし、無事出産しても、高齢での育児が始まる。親の介護が重なりましたし、仕事も現役です。こんな自分の体験は、事例が少ないものかもしれませんが、不妊治療や高齢での子育てに悩んでいる人のヒントに少しでもなるならと、記録として書き残しました」

 遠藤さんが治療に取り組んでいた2010年代は、まだ保険適用ではなかった。

「今は、経済的な負担は多少軽減されていますが、卵子を採取するのは痛みも大きく、病院では他の女性の表情が気になったり、仕事との時間のすり合わせが難しかったりと、身体的、精神的にも負担は大きい。私も治療を続けている間、ずっと膠着状態というか、人生が止まっているような感覚がありました」

 そんなとき遠藤さんを救ったのは、不妊ピア・カウンセラーの勉強だった。

「ピア・カウンセラーというのは、同じ境遇を体験した者として相談に乗る人を指します。もし子供を持てなかったとしても、自分の経験を社会に少しでも還元できれば、辛かった気持ちも成仏できるんじゃないか、と思ってNPO法人『Fine』の講座に申し込みました。実は、初めて妊娠をしたものの、流産してまもない時期で、最初は気が重かった。講座では、参加者がそれぞれ自分の『不妊体験』を語りました。2017年でしたが、当時は今よりも不妊を語ることがタブーな雰囲気がありました。だからこそ、自分の経験を話すことができ、静かに受け止めてくれる空気があったことには救われました。そうして気持ちのこだわりが薄れてきた頃、ホルモンの数値が安定して、思い切って凍結胚を移植したところ、妊娠しました」

 不妊治療は5年に及び、10回目の移植だった。上司に伝えるタイミング、新型出生前検査を受けるかどうかなど、検討すべきことは山のようにあった。

「夫婦のあり方は正解がない。とことん話し合うのがよい場合も、なんとなく探り合う方がよい場合もある。ただ、私自身は楽観的な方なので、それがよかったかな、と思う時はあります。高齢で子供を授かった場合、自分達の健康など問題は山積みです。不安を感じる瞬間は毎日のようにありますが考えてもきりがない。子供が自立するまでのマネープランはある程度立てつつも、心持ちを軽くしておき、そのときそのときで対応できればと思っています」

 本書では、子供と過ごすユーモラスな日常も綴られている。周囲からの感想は、男女で違いがあるという。

「男性の方が本の内容をより深刻に受け止めている気がします。ワーママからは、子供の話に笑っちゃった、などの感想をもらいました。また、あくまで私個人の実感ですが、かつてより『親』の年齢や属性の線引きがあいまいになり、周囲の受け止めがおおらかになってきているように思えます。本書は不妊治療を積極的に呼びかけているものではなくて、私の妊娠出産や子育て、介護はどういうものか、社会制度はどうなっていて、それをどう利用したか、という、数あるサンプルの一つとして読んでもらえたら、と思っています」

えんどうふみこ/1970年生まれ。読売新聞記者。マニラ支局、生活部などを経て英字新聞部長兼THE JAPAN NEWS編集長。NPO法人「Fine」認定の不妊ピア・カウンセラーの資格を持つ。

(「週刊文春」編集部/週刊文春 2025年10月16日号)

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