AIはPCをどう変えるのか? そしてLegion Go 2が目指すモバイルゲームの現在地
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Lenovoは、IFA 2025開催に合わせてイベント「Lenovo Innovation World 2025」を開催した。同時に、Lenovo関係者によるグループインタビューも開催されたので、本稿ではその様子を紹介する。
グループインタビューに参加したLenovo関係者は、Intelligent Devices Group社長Luca Rossi氏、コマーシャル部門の上級副社長Steve Long氏、コンシューマ部門の上級副社長Ouyang Jun氏、 コマーシャル製品センターおよび中小企業部門担当の上級副社長兼GMのEric Yu氏、グローバルイノベーションセンター担当上級副社長Johnson Jia氏だ。
――Lenovoがハードウェアを設計したりコンセプトを考案するうえで、AIは役立っていますか。それとも、まだ人間の創造性が重要なのでしょうか。
A:Lenovoは、製品の研究開発に年間20億ドルを投資して、さまざまな研究を行なっています。その結果、今後3~5年ほどの間に、新しいフォームファクター、新しいデバイス、新しいユーザーモデルの製品が登場すると確信しています。
AIは、そういった新しいコンセプトの製品を実現するうえで有効かもしれませんが、我々にとっては、さまざまな実験の成果や過去の失敗からの学習など、人間的な要素と企業文化こそが製品開発の原動力となっています。そのため、それらがAIに取って変わられることはありません。たとえば、初の折りたたみディスプレイ搭載PC(ThinkPad X1 Fold)は、売れ行きはよくありませんでしたが、その経験が後の製品の成功につながっています。
――現在、大勢の人が、AIが自分たちを代替するのではないかと考えています。今後Lenovoの製品でAIが強化されることでそういった世界が進むと考えていますか。
A:我々は、PC、スマートフォン、タブレットにおけるAIが人間にとって強力なパワーになるべきだと考えています。それによって人々はより効率的で生産的に作業が行なえるようになり、無駄な作業から解放され、より価値の高い創造性に集中できるようになります。我々が多くの人にAIの強力なパワーを活用できる製品を提供することで、情報格差を減少させることになるはずです。
同時に我々は、AIが人々を取って代わるのではなく、人々を助けるように活用されるべきだと考えています。そして、すべての人が手ごろな価格でAIを利用できるように開発を進めています。
――AI時代のイノベーション構築における最大の課題は何でしょうか。
A:それは、これまでになく多くのことを考慮しなければならない、という点でしょう。これまでは、PCの入力デバイスはキーボードとマウスがあれば十分でしたが、今は自然言語やジェスチャーなど、さまざまな要素を考慮する必要があります。それまであった明快な境界線がなくなって曖昧になることで、これまでにない新しいアイデアが生まれると同時に、それが課題にもなります。
多くの新しいアイデアが生まれることで、そこから適切なアイデアを選び、正しく実現することが難しくなります。そのため、イノベーションの実現はこれまでよりもかなり複雑になっていますが、我々はAIをどう活用するのか、そして正しくAIを活用することを原則としてイノベーション構築に取り組んでいます。
――今後AI時代がより進むと、PCのスタイルや利用方法がどのように変化すると考えていますか。
A:コロナ禍以前は、PC市場は衰退していくと考えられていました。しかし、パンデミックによる在宅勤務の増加などから、PCは不可欠なツールであることが証明されて、中心的な地位を回復しました。実際現在のPC市場は10年前よりも良好で、さらなる成長が見込まれています。特に法人市場では、少なくとも今後3~5年程度はPCが中心的な位置を占め、オフィスからPCがなくなることはないと考えています。
それに対して一般消費者市場では、イノベーションが進むと考えています。たとえば、PCからキーボードがなくなり、自然言語が主要な入力インターフェイスになる可能性もあるでしょう。そういったPCがPCになるのかタブレットになるのかは分かりませんが、今後時間をかけて研究を進めることで、とても多くのイノベーションが起こると考えています。
そして、確実に言えるのは、将来は今よりも多種多様なデバイスが登場するだろうということです。非常に高性能で生産性に優れるデバイスや、腕時計型やメガネ型などのウェアラブルデバイスなど、さまざまなフォームファクターでこれまでにない製品が登場するはずですし、我々もそういった製品を提供することになるでしょう。そのために我々は、研究開発への投資を継続していきます。
「Legion Go 2」などモバイルゲーミングPCに関する質問については、Gaming PC部門の副社長兼GMのVoker During氏が回答した。
――Legion GoのようなモバイルゲーミングPCは、Lenovoにとってどういった位置付けの製品でしょうか。
A:モバイルゲーミングPCは、とてもクールなものだと考えています。新しいカテゴリーのデバイスで、ノートPCが発明された時に近いもので、人々のPCとの関わりを再構築するようなものです。そして、Legion Goシリーズを投入して、モバイルゲーミングPCがこれほど注目されるとは驚きでもありました。
初代Legion Goでは、かなり好意的なフィードバックが多くありました。たとえば、FPSモードや取り外し可能なコントローラは好評でしたし、8.8型ディスプレイもかなり好評でした。
ただ、技術的にはまだ制限があるのも事実です。その1つがバッテリ駆動時間です。Legion Go 2では、初代からバッテリ容量を50%増やしましたが、そのために重量が増えています。また、外付けのセカンダリバッテリも提供していますが、それも有効策とは言えないかもしれません。
理想的には、モバイルゲーミングPCというカテゴリに特化したプロセッサの開発が進むということで、それに期待したいと思っています。それと同時に、ノートPC同様に、モバイルゲーミングPCというカテゴリの製品も今後どんどん進化していくと考えています。
――NVIDIAやMicrosoftがクラウドゲーミングを推進し、将来一般消費者が小型で安価なクラウドゲーミングデバイスを選択する可能性がある点についてはどうお考えですか。
A:クラウドゲーミングは、我々にとって脅威とは考えていません。モバイルゲーミングをサポートできる技術で、新たな機会になると考えています。
たとえば、自宅内のパワフルなゲーミングPCからWi-Fi経由でストリーミングしながらゲームをプレイする、というのもクラウドゲーミングと同じですが、そういったソリューションについても検討しています。
我々は、常に将来を見据えていますし、あらゆる可能性を検討しながらさまざまなゲーマーに最適な製品を提供したいと考えています。それによって、さまざまなフォームファクターの製品が登場するはずです。そういった意味で、クラウドゲーミングはそういった可能性の1つであって、脅威とは考えていません。
――Legion Go 2は、欧州で999ユーロからとノートPCに近い価格ですが、この金額はユーザーに受け入れられると考えていますか。
A:そもそもLegion Go 2は、構成する高性能なプロセッサや有機ELディスプレイ、着脱可能なコントローラ、人間工学に基づいたデザインなど、すべてが高コストなので、どうしても価格が高くなってしまうのです。
そのためLegion Go 2は、趣味に投資をいとわない、いわゆるエンスージアストゲーマーをターゲットとしています。彼らは独自にハードウェアをカスタマイズしたり、独自の環境構築を重視していますし、高価であってもそういったハードウェアを選ぶものです。
確かに、こういったエンスージアスト向けの製品はそれほど市場は大きくないかもしれませんが、我々の存在価値を高めるために重要な市場であるとも考えています。
それに対して、より手ごろな価格の製品を求める人に対しては、Legion Go Sシリーズを用意しています。Legion Go Sは、箱から出してすぐに使える、という体験を重視していて、Steam OSモデルも提供しています。
――今回のイベントは「Smarter AI for All」というビジョンを掲げていましたが、Legion Go 2にも何らかのAI機能は搭載していますか。
A:Legion Go 2では、NPUを内蔵するプロセッサは搭載していません。将来的には、ソフトウェアの観点からどういったAI機能を実現できるか検討していますが、Legion Go 2にはAI機能を搭載できていません。
現在我々は、すべてのデバイスでAIの可能性を研究していますし、ゲーミングノートPCではAI機能を提供するソフトウェアを既に搭載しています。しかしモバイルゲーミングPCではNPUもありませんし、ゲームがCPUパワーの多くを消費することもありますから、現時点でAI機能は搭載していません。
――今後AIが進化して、ユーザーに代わってAIがゲームをプレイする、といった世界が来ることはあるんでしょうか。
A:我々はAIがユーザーの代わりにゲームをプレイするといった機能については検討していません。なぜなら、それは“チート”と見なされる可能性があるからです。
我々は、ゲーミングにおけるAIは、プレーヤーのゲームプレイ内容を分析して、何が悪くて負けたのかを振り返ったり、それに基づいてゲームプレイのスキルアップに役立つ提案を行なうというようなものであるべきだと考えています。
もちろん、ゲームの世界でAIを活用すべきではない、というわけではありません。たとえば、インディーズゲーム開発者は、AIを使って基本的なコードを作成したり、言語のローカライズを行なうことで製作期間を短縮していますが、それは非常に役立つAIの活用と言えます。