米イラン「覚書」の行方は 仲介役として浮上したカタールの存在感が増しているワケ
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アメリカのトランプ大統領がイランとの「合意案」について修正を求め、先送りした。アメリカとイラン双方が接近しているのがカタールだ。存在感を増している理由とは?
「覚書」巡る主張に深い溝?
アメリカとイランが協議をしていた合意案についてみていく。それが、両国が暫定的に合意していたとされる14項目の「覚書」だ。トランプ大統領は先月29日、自身のSNSに「ホワイトハウスでこれから会議を開き、最終判断する」と投稿していた。
ホワイトハウス当局者はANNの取材に対して「会議は2時間行われた」と明かしたが、ニューヨーク・タイムズによると、政府高官は「結論に至らなかった」と話しているという。
結論に至らなかった背景には何があったのか。イランのファルス通信は両国の主張には深い溝があるとしている。
まずは「ホルムズ海峡」について、トランプ大統領が「イランはホルムズ海峡を通航料なしに開放する義務を負う」と主張しているのに対して、イランは「そのような条項は存在しない」「アメリカの封鎖解除が先」だと主張するなど、真っ向から対立している。
また、「核開発」についてもトランプ大統領は「イランが核物質を撤去あるいは廃棄する」と明言しているが、イラン側の関係筋は「そのような内容は存在していないだけでなく、この主張自体に何の根拠もない」と強く批判している。
そもそも両国の信頼関係にも深い溝が指摘されている。
トランプ大統領は先月23日、SNSに「(合意は)間もなく発表される」と投稿していたが、翌日には「アメリカの代表団に、急いで合意を結ばないよう伝えた」と投稿するなど、発言のブレが指摘されている。
ロイター通信によると、その後、イランのガリバフ国会議長は「アメリカが先に行動で示さない限りイランは動かない」と、言葉ではなく実際の行動にもとづいて判断を行っていく考えを示すなど、信頼関係に疑問符がつく状況になっているという。
また、ニュースサイトのアクシオスによると、トランプ大統領は「覚書」について、ホルムズ海峡の通航再開に関する文言の一部や、高濃縮ウランの引き渡し方法を具体的にするなどの修正を求めている。
ニューヨーク・タイムズはトランプ大統領がより厳しい条件を提示し、イランに圧力をかけている可能性もあると伝えている。
こうしたアメリカの動きについて、イランのタスニム通信によると、情報筋が、イラン側が独自の修正案を提示する見通しだと明かしたというが、これは「トランプ氏の提案をイランが受け入れたことを意味するものではない」と強調している。
このような状況の中、中東・カタールが存在感を示している。
朝日新聞によると先月25日、イランのガリバフ国会議長やアラグチ外相らがカタールを訪問した。
番組が取材した「日本エネルギー経済研究所」堀拔功二研究主幹によると、「カタールが両国の妥協可能な部分を探る中で停戦ができるのでは、とアメリカ側もイラン側も期待している」という。
なぜカタールに期待が集まるのか。
そもそもカタールは「全方位外交」を掲げ、仲介活動を外交の柱の一つに据えていて、20年以上にわたって各地の紛争などで仲介役を果たしてきたという実績がある。
それに加えて、カタール国内に中東最大級のアメリカ軍基地が存在し、アメリカの同盟国でもある。なおかつ、世界最大級のガス田をイランと共有しているイランの友好国でもある。両国との関係が深いことが期待される要因の一つだという。
イラン側がカタールを訪問した背景には、アメリカが凍結しているイランの資産も関係しているという。
先月25日にカタールを訪問したイラン代表団には、ガリバフ国会議長に加え、イランの中央銀行の総裁らも同行していた。イラン資産の凍結解除についても協議したとみられる。
イランのタスニム通信によると、イランが解除を求めている凍結資産は日本円で約3兆8000億円に上るが、カタールにはその4分の1にあたる約9500億円のイラン凍結資産が保管されているともいわれる。
この凍結資産の解除をイランが求めているが、アメリカは拒否してきた。
ただ、イランの反体制メディアのイラン・インターナショナルによると、イランは凍結を解除せずに資金を受け取る方法を模索しているという。
その方法は、まず、カタールがイラン対してに凍結資産の一部を送金する。表向きは、あくまでカタールが自らの資金を送る形をとる、言わば「立替」だ。その後、それを補填するような形で、同等の金額をアメリカからカタールに送金する。
ある政治アナリストは、この方法によってアメリカがイランに直接支払うことはなく、イランは資金を得ることができるといい、イランは外貨を獲得でき、アメリカのメンツも保たれるという。
イランの代表団とカタール当局者が、凍結資産の受け取り方法などについて議論したという。
そんな中、日本もカタールなどの仲介国を支援するという。
先月28日、茂木敏充外務大臣がカタールのムハンマド首相兼外相と電話会談を行い、中東情勢の安定に向けた連携を確認した。
茂木外務大臣は「アメリカとイラン間の協議実現が重要だ」としたうえで、今後もカタールなどの仲介努力を後押ししながら、必要な外交努力を行っていくと強調している。
(2026年6月1日放送分より)