被害続出も「クマを駆除する自治体に抗議する」と家族に協力を求められた…どう対処すべきか?識者が提言|よろず〜ニュース
クマ(熊)による人的被害が相次ぎ、政府も「緊急クマ対策」に乗り出した。そんな危機的な状況にあっても、動物愛護の観点から「クマの駆除に抗議したい」と家族に協力を呼び掛けられた時、どう対応すればいいのだろうか。「大人研究」のパイオニアとして知られるコラムニストの石原壮一郎氏がその対策を提言した。
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【今回のピンチ】
義母が「熊を駆除する自治体に抗議したい。あなたも手伝って!」と言い出した。それはできない相談だが、昔から人の話を聞かないタイプで勢いが止まらない……。
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近くに住んでいる義母は、悪い人ではないのだが、昔から思い込みが激しくて人の話を聞かないタイプです。
何に感化されたのか、ある日「熊を駆除する自治体に抗議したいんだけど、あなたも手伝って! メールはどこに送ればいいの! 電話番号も調べて!」と言い出しました。「鉄砲で撃ち殺すなんて、そんな残酷なこと許せない!」と激しく怒り続けています。
義母には日頃お世話になっていますが、事態の深刻さを思うと、さすがにこれは協力できません。妻と顔を見合わせながら曖昧(あいまい)な態度を取っていたら、「あなたたち、熊がかわいそうだと思わないの!」と、どんどんヒートアップする一方です。
なんとも面倒臭い状況になりました。ケンカにならずに平和を保ったままお引き取り願うには、どうすればいいのか。
静かな口調で「お義母さんの気持ちもよくわかります」と、いったん寄り添う姿勢を見せるのは、相手を落ち着かせるセオリー。その上で「たしかに熊の命も大事ですけど、人間の命はもっと大切だと思うんですが」と言ってみる手はあります。
しかし、「動物の命を大切に思える心やさしい自分」に酔っている義母にとって、熊が出没する地域に住む人たちの恐怖心や危険性なんて知ったこっちゃありません。正論を説けば説くほど、ますます頑なになって、やがて怒り出してしまうでしょう。
ここは、義母に「こいつらに話しても無駄だ」と思わせたいところ。まずは、ノンキな口調で「いやあ、まさにクマったクマったですねえ」と力の抜けるダジャレを繰り出します。さらに「出くわしたら、あっかんベーアってやると逃げてくれるかな。ベアだけに」と畳みかけましょう。
義母がひるんだ(呆れた)スキに、こう提案してみます。「お義母さん。壺に入れたハチミツを持って、熊がいそうな山に登りに行きましょう。熊にもお義母さんの愛情が伝わって、きっと喜んでくれると思いますよ」。
熊がかわいそうというセリフは、安全圏にいる人にしか言えません。そして、そんなことを気軽に言っている人は、現地に行って熊と対峙する度胸はカケラもありません。
あるいは「そうだ、長い目で見て多くの熊の命を救うために、お義母さんが『保護熊』の制度を立ち上げるのはどうですか」と提案してみるのも一興。「そして、まずはお義母さんが、たくさんの熊を引き取ってください。きっとかわいいですよ」とも。
言うまでもなく、暗に「そんな覚悟もないくせに、外野から無責任に『熊を守れ』と言うのは人としてどうなのか」という皮肉を込めています。しかし、関係者の苦労も想像できずに「駆除はケシカラン!」なんて言えるトホホな人が、皮肉を察知できる可能性は限りなく低いでしょう。お気の毒ですね。