「99%中国製」でニデックEVモーターに復活の兆し-トヨタも採用

ニデックの電気自動車(EV)基幹部品事業に回復の兆しが見え始めている。一時は赤字に陥ったが、コスト競争力を磨き、今春にはトヨタ自動車の中国市場向け戦略車に部品が採用された。部品を構成する材料に至るまでほぼ完全な「中国製」を切り札に、激しい価格競争を勝ち抜こうとしている。

  「99%中国製の部品や材料で作っている」。岸田光哉社長は9日中国・青島でのインタビューで、トヨタに選ばれたニデック製品についてこう説明した。採用されたのは、「E-Axle(イーアクスル)」と呼ばれる駆動用モーターや減速機などを組み合わせた部品。中国製の部材のみでイーアクスルを作り上げるのは難易度が高いと岸田氏は強調する。

  ニデックの部品を採用した「bZ3X」は、地場メーカーがシェアを高めつつある中国市場でトヨタが反転攻勢を目指す戦略モデルで、3月の発売以降、約2万台を販売するなど好調だ。約11万元(約225万円)からとトヨタがこれまで販売したEVの中で最も安く、ニデックは価格低減に寄与した格好だ。トヨタの広報担当者によると、bZ3Xはニデックのイーアクスルを採用した初めてのモデルだという。

  ニデックがイーアクスルの量産を始めたのは2019年で、EV普及の鍵になる部品として注力してきたが、22年ごろから収益が悪化。一時は、創業者の永守重信氏が「作れば作るほど赤字になる」と言うほどの散々な状況となっていた。その後受注を絞り構造改革を進め、同事業が含まれる「車載」製品グループの営業損益は前期黒字転換した。

  品質や価格など厳しい調達基準で知られるトヨタ向けの納入が決まったことで、今後弾みがつく可能性もある。トヨタは2月、上海にレクサスブランドのEVや車載電池工場を建設し、27年以降に生産開始予定であることも発表している。

  また、ニデックはこのほど、青島に設けた新工場で家電用などのモーターと電子部品の生産を始めた。岸田氏は開業式の場で、大規模な売上高の成長を目指す前に、足元の事業をしっかりコントロールしてより効率的な体質を目指したいと話した。青島への新たな投資は、中国経済の成長鈍化や米国との貿易摩擦の深刻化を受けて多くの企業が中国での事業規模を縮小する中、日本企業が中国での存在感を拡大する珍しい事例にもなる。

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