日本株にサプライズ決算の援軍、アナリスト予想の引き上げは海外超え
日本企業の業績は、旺盛な人工知能(AI)需要や米関税影響の縮小、為替の円安を追い風に、市場予想を上回るケースが相次いでいる。高値圏で推移する日本株に新たな援軍となりそうだ。
ブルームバーグのデータによると、東証株価指数(TOPIX)構成企業の半数超が10日までに四半期決算を発表し、そのうち2人以上のアナリストがカバーする銘柄の約6割で市場予想を上回った。岡三証券の調べでは、第2四半期決算の「ポジティブサプライズ」比率は2020年以来の高さという。
業績に対する市場の目線も引き上がっており、ブルームバーグがまとめたTOPIX企業の今期1株利益(EPS)のリビジョンインデックス(アナリスト予想の上方修正比率と下方修正比率の差)は、欧米やアジアの主要指数を上回る水準で推移する。11日はソフトバンクグループやソニーグループが決算を発表する予定で、この流れをさらに後押しする可能性がある。
しんきんアセットマネジメント投信の藤原直樹シニアファンドマネジャーは、国内外の環境が企業決算を支えているとし、「業績が底上げされて来期に向けての見通しも改善すれば、日本株はそこまで割高に見えないのではないか」と話す。
AI関連投資が幅広い企業の業績に追い風となっている。例えば安川電機は主力のACサーボモーターでAI向けの引き合いが強く、10月の決算発表から足元までに株価は30%上昇した。
高市早苗政権下で為替が円安傾向で推移していることも大きい。ブルームバーグのデータによれば、国内上場企業の想定為替レートは対ドルで145円台半ばと、実勢の154円前後と比べて円高水準にある。為替の影響だけでみれば、輸出企業を中心に会社の利益予想にはなお上振れ余地がある。
米関税懸念の後退も支えだ。一部企業では価格転嫁を進めており、日立建機は決算説明会で6月に続いて10月も建機などの価格を引き上げたと明らかにした。
一部の市場関係者はアナリスト予想の上方修正数の増加について、既に株価指数が高値を更新してきた主要因の一つとして織り込まれてきたと指摘する。
SBI証券の鈴木英之投資情報部長は、上方修正の比率は上限に達しつつあると言い、株価上昇は「いったん休みとなるかもしれない」との見方を示す。
それでも、企業業績の強含みが相場の支えになるとの見方は多い。野村証券の伊藤高志シニア・ストラテジストは直近の決算を受けてアナリスト予想の引き上げが一層進み、業績回復が見込まれる来期だけでなく、今期も増益転換への期待が高まるとみる。
実際、伊藤氏が主要企業の今期経常利益について野村証アナリスト予想の推移を集計したところ、前期比で減益予想続きだったのが足元で3%の増益に転じたという。「業績面からは日経平均株価が5万円近辺で停滞するとは考えにくく、日本株は年末年始にかけて上値を狙える」と同氏は述べた。