中間選挙後もトリプルレッドは継続か?:選挙区再編が狂わす民主党勝利
米国政治の数少ない「鉄則」がある。大統領の政党は中間選挙で下院議席を失うというものだ。1850年代に二大政党制が確立して以来、42回の中間選挙のうち38回で、大統領の党は議席を減らしてきた。この記録こそが、多くの政治専門家が今年11月の選挙で民主党が議席を回復し、下院を奪還すると予測する根拠だった。
しかし今、その前提が揺らいでいる。トランプ政権が仕掛けた前例のない「選挙区再編戦争」が、民主党の勝利シナリオを複雑に狂わせつつある。
トランプ大統領 ホワイトハウスHPより
トランプが火をつけた「選挙区再編戦争」
2026年の選挙区再編は、近代米国史上最大規模の任期中選挙区再編の試みとなっている。発端は2025年夏、トランプが下院での共和党多数派を維持すべく、テキサス州共和党に選挙区の再編を要請したことだった。ミズーリ州、ノースカロライナ州がすぐに続き、共和党系州議会は次々と新たな選挙区地図を可決した。
トランプが共和党系州に対して不公正なゲリマンダーを促すよう圧力をかけ、テキサス、ノースカロライナ、ミズーリ、オハイオ、フロリダがすでに実施した。最高裁のルイジアナ判決を受けて、アラバマ、ルイジアナ、テネシー、サウスカロライナもこれに加わる可能性がある。
民主党も黙っていなかった。カリフォルニア州の有権者は選挙区再編を承認し、民主党優位選挙区を追加する措置が取られた。
最高裁判決が戦局を一変させた
均衡していた攻防は、2026年4月末の連邦最高裁判決によって決定的に共和党有利に傾いた。
最高裁は6対3の判決(保守派対リベラル派)で、ルイジアナ州が2024年の選挙区地図で設けた「第2のマジョリティ・ブラック選挙区」を「違憲の人種的ゲリマンダー」と判断した。技術的には投票権法第2条を維持しつつも、この判決は公民権運動の遺産である1965年の投票権法を事実上空洞化させる一連の判決の最新作となった。
最高裁は、州は政治的に一方の党を有利にする目的で選挙区を引くことができると判示した一方、非白人候補の当選可能性を最大化する地図は憲法の平等保護条項に違反するとした。この論理は、南部諸州が黒人有権者の多い選挙区を解体するための法的根拠を与えた。
判決直後、フロリダ州議会は共和党に有利な4選挙区を新たに創出する新しい選挙区地図を可決した。テネシー州やジョージア州の議員たちも即座に新たな選挙区の策定を求める声明を出した。
バージニア判決が追い打ち
ルイジアナ最高裁判決の約2週間後、バージニア州最高裁も民主党にとって痛烈な打撃を与えた。
バージニア州の有権者が民主党に有利な新選挙区地図を可決してから2週間も経たないうちに、バージニア州最高裁がその地図を無効とする判決を下した。2週間で状況は一変した。
バージニア州最高裁の判決は民主党にとって特に大きな痛手だ。カリフォルニア州以外で、再編によって複数議席を確保できる最大の好機だったからだ。民主党はこの州に数千万ドルを投じていた。
民主党は「まだ有利」か
それでも、専門家の大勢は民主党の下院奪還を見込んでいる。
クック・ポリティカル・レポートのキャリー・ダンは「共和党は構造的優位を疑いなく強固にし、再編によって理論上最大13議席を獲得できる可能性がある。しかし国内の政治環境は共和党にとって厳しいままで、共和党が再編した選挙区の多くは2026年選挙でも激戦区のままだ。再編による共和党の純増は5〜7議席が現実的な見通しであり、11月の民主党の大幅躍進を止めるには不十分だろう」と述べた。「民主党は依然として11月の有力候補だが、かつてほど圧倒的ではなくなった」とも付け加えた。
その背景にあるのはトランプの支持率の低さだ。トランプの支持率は平均39.1%、不支持率57.5%で、净支持率はマイナス18.4ポイントと第2期政権で最低を記録している。支持率が低い大統領は単に10数議席を失うだけでなく、その数倍を失うことも珍しくない。
民主党は2024年に比べ、補欠選挙や州議会選挙で相次いで大幅な善戦を見せている。ミシガン州上院補欠選挙では、2024年にハリスがわずか1ポイント差で勝利した選挙区で、民主党候補が約19ポイント差で勝利した。
「終わりなき選挙区再編戦争」の到来
今回の一連の動きが示す最も深刻な示唆は、「終わりなき選挙区再編戦争」という新たな現実の到来かもしれない。州が党派的利益のために選挙区を常時引き直す状況が常態化すれば、それは共和党に有利に働く。単純に、共和党はより多くの州議会を支配しているからだ。
今回の最高裁判決がもたらしうる最悪のシナリオは、民主党が下院を奪還するために必要な議席数が、もはや10議席ではなく25議席になるという事態だ。そうなれば、数議席の攻防が来年1月に誰が議長席に座るかを決めることになる。
民主党は「地図の戦争」で劣勢に立たされつつも、民意の風は依然として追い風だ。問題は、トランプが「鉄則」を壊すために敷いた構造的な罠が、その風をどこまで相殺できるかにある。