ウクライナ東部の要衝ポクロウスク、ついに陥落か 戦略的価値低くても「象徴的な戦い」へと変質

(CNN) ロシア軍が、ウクライナ東部の要衝ポクロウスクを制圧する寸前まで来ているとみられる。ポクロウスクの占領は、ロシアのプーチン大統領にとって1年9カ月にわたって追い求めてきた象徴的な勝利だが、その代償は極めて大きい。 【映像】要衝ポクロウスクで激しい戦闘 ロシア軍が市内への侵攻に成功したことで、戦闘はここ数日で激化。ポクロウスクの陥落はほぼ避けられない情勢となっている。同市の戦略的な価値はすでに大きく失われているものの、ロシアにとっては2023年以来最大の戦果となる見通しだ。 ウクライナ側は5日、ポクロウスクでウクライナ軍が包囲されたというロシアの主張を否定し、ロシア軍の前進を阻止するための作戦は続いていると発表していた。しかし現地の兵士たちは、ますます厳しい状況に言及した。 ある大隊の司令官は安全上の懸念を理由に匿名でCNNの取材に答え、「状況は厳しく、市街地ではあらゆる種類の戦闘が行われている」「ほぼ包囲されているが、我々は慣れている」と述べた。別の兵士も名前を伏せた上で、ロシア軍が多数の兵士を率いて前進を続けていると語った。 ウクライナ軍ドローン部隊の兵士によれば、ロシア軍の動きが激しく、ウクライナのドローン操縦者は追いつけていない。ロシア軍は3人1組で進み、2人が倒されても1人が街に到達して拠点を築くという前提で動いており、こうした集団が1日におよそ100組も通過することがあるという。

兵士2人を犠牲にして1人を前進させるという主張は一見、理解しがたい。だが、ポクロウスク周辺で非常に多くのロシア兵の犠牲が出ているという国際的な研究者の観察と一致している。同市の制圧が戦況に与える実際の影響は限られているにもかかわらずだ。 ポクロウスクの戦いはもはや戦略的な物流拠点をめぐる戦いではなく、「象徴的な戦い」へと変質している。 「戦場という観点から見ると、まったく理にかなっていない」と語るのは、米シンクタンク戦争研究所(ISW)でロシアと地理空間情報チームを率いるジョージ・バロス氏。 ポクロウスクはかつて、ウクライナ側にとって重要な道路と鉄道の結節点とみなされていた。同市は東のドネツクやコンスタンチノフカ、西のドニプロやザポリージャへとつながる複数の主要道路の交差点に位置している。 「この地点が作戦上重要だったのは、ポクロウスクがウクライナ軍の兵站(へいたん)を支える補給線だったからだ。それがさらに広がり、物資が周囲の集落や軍の戦術的拠点を支援していた」(バロス氏) 状況は夏にロシアがポクロウスク包囲を始めてから一変した。 幹線道路と鉄道への無人機や砲撃の頻繁な攻撃により、ウクライナは代替補給路を探さざるを得なくなり、補給拠点としての機能はポクロウスクから移された。これはロシア側にとって大きな成果となった。市内にはウクライナで最後に稼働していたコークス炭鉱があったが、今年初めに操業停止を余儀なくされた。 「これ以降、ロシアにとってポクロウスクは実戦的な効果は実際には何もない。なぜなら、ロシアが必要としていた主要な効果はすでに達成されているからだ」とバロス氏は語った。 ポクロウスクはすでに大部分が廃虚と化し、戦略的価値はほぼ失われたものの、今では象徴的な存在となっている。膠着(こうちゃく)状態にある戦争のなかで、こうした象徴が重要な意味を持つのは明らかだ。 ポクロウスクは、ロシアが23年5月に制圧したバフムート以降で、最大の占領都市となる見通しだ。戦前は約6万人が暮らしていたが、22年2月のロシアによる全面侵攻以降、その大半が避難した。ウクライナ当局によると、現在も約1200人の民間人が市内に残っているという。 「戦略的、政治的、情報的な観点から、ポクロウスクは極めて重要だ。なぜなら、プーチン大統領は、同市の占領について国内外で何度も公の声明を出してきたからだ」とバロス氏は述べた。「プーチン大統領は、戦場でのロシアの軍事的勝利が不可避であることを示すための戦略的な情報キャンペーンを展開している」 プーチン大統領は、東部のドネツク州とルハンスク州全域、さらに南部のヘルソン州とザポリージャ州の制圧を目標としている。 ポクロウスクを掌握すれば、ロシアは攻勢の焦点を北東方向の工業都市群に移し、地域防衛の中核をなすこれらの都市への圧力を強めることができる。

CNN.co.jp
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