サムスンのストライキが目前に。メモリ危機のなか、AI業界に激震をもたらすかも
ボーナスがライバル企業の3分の1しかないのつらすぎる…。
火曜日(5月13日)に行なわれたSamsung(サムスン)と労働組合の交渉が決裂に終わり、予定通り5月21日から2週間にわたるストライキが決行されれば、世界中のAI業界に激震が広がる可能性が高まってきました。
労働争議の中心は危機状態にあるメモリ
サムスンの韓国にある3カ所の製造拠点(龍仁市器興区、華城市、平沢市)は、いずれもクラウドや高性能コンピューティング(HPC)向けの部品を製造しており、その中には今回の労働争議の核心でもある、AIに欠かせないメモリも含まれているため、AIハードウェア業界は今後の展開を固唾を飲んで見守っているはずです。
サムスンと国内のライバルであるSK Hynix(エスケイハイニックス)は、メモリを製造す世界でわずか3社のうちの2社なんです。
ライバル企業との賞与格差が火種に
Reuters(ロイター通信)によると、労働組合の代表であるChoi Seung-ho氏は、「組合が要求した議題がひとつも取り上げられなかった」と遺憾の意を示したとのこと。
争点となっているのは、賞与の上限撤廃を求める組合側の要求です。SKハイニックスは2025年に同様の措置を取っており、同社の従業員の賞与はサムスンの3倍に跳ね上がったそう。その動きを受けて、サムスン社内でも組合活動が一気に活発化したと伝えられています。
4月に起こったストライキの衝撃
では、ストライキはAI事業にどれほどのダメージを与えるのでしょうか?
実は今年4月、この労働組合主導のストライキが1日だけ行なわれた際、サムスンの生産量は一気に落ち込みました。報道によると、半導体製造受託部門の生産量は、ストライキが行なわれたシフト中に58.1%も急減し、メモリ製造工場の生産量も18%減少したといいます。
同労組は、全国的なストライキによる同社の損失について、30兆ウォン(約3兆2000億円)に達すると試算しています。中立的とは言い難い情報源による数値ではありますが、ケタ外れの損失が出るのは間違いないでしょう。
AI向け半導体の覇権争い
なにしろ、AI関連部品におけるサムスンの収益の急増ぶりは、目を見張るものがあります。2026年第1四半期に、サムスンは半導体による収益が前年同期比で約50倍に爆増しました。50倍て…。
サムスンの企業価値は5月に1兆ドル(約160兆円)の大台を突破し、現在は時価総額で世界第11位の企業になりました。
一方SKハイニックスは、昨年の総利益がサムスンを上回りました。同社は2024年にAI向けの広帯域メモリ(HBM)技術に多額の投資を行ない、サムスンに先んじてAIメモリのサプライチェーンにおいて重要な一角を占める地位を確立。
しかし両社を合わせても、現在の需要を満たすペースでHBMを製造できないそうです。
Reutersによると、サムスンの取締役会議長であるShin Je-yoon氏は、ストライキが実施された場合、「顧客の離反や競争力の低下により、市場での主導権を失うのではないかと懸念しています」と語ったそうです。
1兆ドル企業らしく、賞与をSKハイニックス並みに上げれば解決すると思うのですが、そんな単純な話じゃないんでしょうね…。