ベランダの泥汚れがあっという間に落ちる…賃貸マンションの住人が「コンパクト高圧洗浄機」を使ってみた結果 「マイカーのある庭付き一軒家で使う」イメージを覆した
水圧で頑固な汚れを落とす「高圧洗浄機」の小型化が進んでいる。使い心地は一体どうなのか。清掃機器大手ケルヒャーの商品(1万4980円)と、アイリスオーヤマの商品(1万2800円)を家電プロレビュアーの石井和美さんが比較検証した――。
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場所を選ばずに使えるコードレスタイプの高圧洗浄機「OC 5 Handy(ハンディジェット)」
実物を見てまず驚いたのは、本体のサイズが小さいこと。全長はたった22.8cm、幅は7.1cm、重さは760gと軽量で、女性でも片手で無理なく扱える大きさとなっている。
さらに充電式であるため、場所を選ばず使用でき、ペットボトルを直接水源として使うか、あるいはバケツに水をためて専用ホースで給水することが可能だ。水道がない場所でも使用できるのは、屋外作業で便利だろう。
基本的に高圧洗浄機は、水道へホースを繋ぎ、コンセントに挿して使用する。そのため、使う場所が限られ、延長用のホースや電源コードが必要になったり、接続用のアダプタを準備したりと、ハードルが高いものも多い。
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中を確認すると、本体のサイズが小さいので驚いてしまった。バケツから給水するホース、ペットボトルアダプター、泡洗剤タンクなどが同梱されている
電源には取り外し可能な18V 2.0Ahのバッテリーパックを採用しており、約5.5時間の充電時間で最大約23分の連続使用が可能だ。充電には付属のUSBタイプCケーブルを使用し、バッテリーの端子に直接接続して行う。なお、このバッテリーは別売り(9878円)でも販売されているため、予備を用意しておけば、交換しながら長時間の使用も可能。
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使う前にバッテリーを充電しておく
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2Lのペットボトルをつけてみた。本体は軽いが、やはり2Lの水を入れると少々重い
5種類の洗浄モードを切り替えて使う
さらに、先端には「5in1ノズル」が装備されており、用途に応じて5種類の洗浄モードを切り替えることができる。低圧のフォームモードでは約23分、強い直線水流を放つポイントジェットモードと標準モードでは約13分、角度をつけて噴射する傾斜モードと、広く水を拡散する広角モードでは約15分の連続使用が可能である。洗浄箇所や汚れの程度に応じて適切なモードを選べる点も、この製品の魅力の一つだ。
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ノズルを回すだけで洗浄モードを変えられる
ただし、これだけ小型で充電式となると、水圧の強さが気になるところである。いくら取り回しが良くても、肝心の水圧が弱ければ高圧洗浄機としての意味がない。実際に使用し、洗浄力を確かめてみた。
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窓のサッシの溝も、狭くて手が入りにくい箇所まで水圧で汚れが落ちていく。洗剤やブラシを使わずとも、一瞬でキレイになるのは頼もしい。
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サッシの溝汚れは短時間で落ちる
エアコンのフィルター掃除にも使ってみたところ、細かなホコリもしっかり洗い流され、短時間で清掃が完了した。こすり洗いが不要な分、フィルターを傷めにくいのも利点である。
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エアコンフィルターもこすらずにこびりついたホコリが落ちる
さらに、自転車の洗車にも適している。泥はねなどで汚れた車体に噴射するだけで、みるみる汚れが落ちてスッキリした。
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使用前(左)/使用後(右)。自転車についてしまった泥も落ちた
本体は軽量かつコンパクトで、水源や電源の位置を気にせず使用できる点が魅力である。これまで高圧洗浄機といえば車を洗ったり、戸建ての庭などで使ったりするイメージが強かったが、このハンディジェットは狭い範囲にピンポイントで水を当てられるため、水の飛び散りを抑えながら排水口などの掃除にも使える。室内外問わず活躍の場が広がりそうだ。
気になるのは、ペットボトル給水の場合、すぐに水がなくなることと、連続使用するとバッテリーが短時間で切れてしまうこと。本腰を入れて掃除する際は、予備バッテリーの用意があると安心だ。
もう一つの選択肢「アイリスオーヤマ」
同様のハンディタイプ高圧洗浄機として、アイリスオーヤマの「充電式ハンディウォッシャー」もある。価格は1万2800円で、ケルヒャーのハンディジェットより約2000円安く、こちらもペットボトルまたはバケツからの給水に対応している。水の出方は4段階。見た目やサイズ感も非常に似ており、使い勝手も近い印象を受けた。
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アイリスオーヤマ「充電式ハンディウォッシャー」(1万2800円)
ただし、装着可能なペットボトルはケルヒャーが2Lのペットボトルを使用できるのに対し、アイリスオーヤマは500mLのペットボトルに限られるため、短時間で水が尽きる。そのため、広範囲を一気に洗うというよりも、「汚れた箇所だけをサッと洗いたい」という用途に向いていると言える。
ノズルの長さも異なるポイントだ。アイリスオーヤマのノズルはケルヒャーに比べて短め。床面などの掃除では、ノズルが長いほうがより効率的に洗浄できるが、キッチンや洗面台などの排水口や自転車のような高さのあるものに対しては、短いノズルのほうが扱いやすい場面もある。
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右がケルヒャー、左がアイリスオーヤマ。ノズルの長さが異なる
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ケルヒャーは2Lのペットボトルを使って給水できるので、最初に動作を試すことにした。本体には給水用のボトルは付属していないため、自宅にあったお茶の空き容器をしっかり洗浄し、水を入れて使用した。
本体は非常にコンパクトなため、正直あまり期待していなかったが、実際に使用してみると、そのパワーに驚かされた。
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標準モード。トリガーを引くと、ビューンと水が遠くまで飛んでいく。かなりパワフルだ
「ポイントジェットモード」は一点に集中して噴射するモードで、狭い範囲の頑固な汚れに適している。「標準モード」はそのパワーを保ちながら、やや広い範囲を効率的に洗浄可能。「傾斜モード」は車のルーフなど角度が必要な場所に便利で、「広角モード」は広い面積を一気に洗い流すのに適している。
特に「ポイントジェットモード」と「標準モード」の勢いは強く、水が遠くまで飛ぶ。対象物にこの勢いで噴射すれば、こびりついた汚れも容易に落とすことができそうだ。
ベランダの泥やコケがみるみる落ちる
実際に、以前から気になっていた賃貸マンションのベランダを掃除してみた。床面だけでなく、壁面にも土やコケのような汚れが付着しており、全体的に茶色と緑色が混ざった状態になっていた。手作業でこすらなければ落ちないと思っていたが、ハンディジェットを使うと、固まった泥もコケもあっという間に洗い流されていった。
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ベランダで、汚れていた箇所に当てるとどんどん落ちる
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掃除前(左)/掃除後(右)。ハンディ式でこれだけキレイになっていれば十分
洗浄の気持ちよさについ広範囲を掃除したくなったが、2Lのペットボトルは約2分弱で空になった。最大吐出水量は約2.5L/分であるため、ベランダのような広い場所を掃除する際は、バケツなどから給水したほうが効率的である。
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バケツから給水したほうが広い範囲を掃除するときは便利
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玄関の掃除にもぴったり
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掃除後。しみついた汚れは取れなかったが、泥などは落ちる
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洗浄力に関しては、スペック上の差がある。ケルヒャーの最大許容圧力は2.4MPaに対し、アイリスオーヤマは1.4MPaとやや控えめである。実際に使用した際、大きな差は感じなかったが、ベランダの泥汚れを洗浄してみたところ、ケルヒャーのほうがスピーディに落とせた。
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アイリスオーヤマもパワフルで、水の勢いは強い
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ケルヒャーでベランダの汚れを落としたところ(左)/アイリスオーヤマでベランダの汚れを落としたところ(右)
また、ケルヒャーのほうが安全性に配慮している。誤作動防止のトリガーロック機能があり、うっかり水が出てしまうということがないので、室内でも安心して使える構造だ。そのあたりは、高圧洗浄機の代名詞的存在としての信頼感がある。
一方、アイリスオーヤマで気になったのは、バッテリーが取り外しできない点である。連続使用時間は約15分(充電時間は約2時間)と短いため、本格的な清掃を行うには物足りなさを感じる。バッテリー交換ができないため、連続使用したい場合や長く愛用したい場合にはやや不便だ。また、バッテリーが一体型であることは、交換や廃棄、リサイクルの面でも不利になる。
とはいえ、アイリスオーヤマの洗浄力も十分に高く、サッシの溝やエアコンフィルターのような軽度の汚れであれば問題なく対応できる。
本格的な商品と比べると欠点もある
高圧洗浄機と聞くと、大きな本体に長いホース、電源コードを接続し、水道から給水して使うというイメージが強い。しかし、今回使用したようなハンディタイプであれば、そうした手間は一切不要。バケツやペットボトルから水を注ぎ、充電式のバッテリーで稼働するため、電源や水道の場所を気にせず、気軽に使うことができる。
ベランダの掃除も、ゴシゴシこすらず高水圧で一気に汚れを落とせるので、作業の時短にもなる。収納スペースも小さく済み、必要なときにサッと取り出せるのも便利だ。
ただし、バッテリーが短時間で切れる、水がすぐになくなるといった点は否めない。従来の本格的な高圧洗浄機を使っていた人にとっては物足りなさを感じるかもしれないが、手軽に使いたい人、特にマンション住まいなどで蛇口や電源に困る環境では、こうしたハンディタイプは重宝するだろう。