強姦しようとした相手の舌を噛み切り有罪になった韓国女性、61年ぶりに再審で無罪

1964年の性的暴行事件で、加害者の舌を噛み切ったとして有罪判決を受けた韓国のチェ・マルジャさんに対し、釜山地裁は9月10日、事件から61年ぶりに無罪を言い渡した。

朝鮮日報英語版によると釜山地裁はチェさんの傷害罪での有罪について「証拠が不十分」と判断。加害者の舌を噛み切る行為は正当防衛にあたると認め、無罪と判断した。

チェさんは18歳だった1964年5月に、慶尚南道金海市で当時21歳の男に襲われた。

加害者はチェさんを押さえつけ、口に無理やり舌を入れてきたため、チェさんは逃れようとして舌を約1.5センチ噛み切って、強姦を免れた。

しかし事件後、チェさんは被害者ではなく加害者扱いされた。

検察はチェさんを加害者に対する傷害罪で起訴し、裁判所も「正当防衛の範囲を超えている」として、チェさんに懲役10カ月・執行猶予2年の判決を言い渡した。

一方、加害者は強姦未遂ではなく住居侵入と脅迫の罪で起訴され、チェさんよりも軽い懲役6カ月・執行猶予2年の判決が下された。

人生の半分以上を「犯罪者」という烙印を背負って生きなければならなかったチェさん。2010年代に、韓国でも#MeToo運動が高まったことに触発され、声をあげようと決意した。

チェさんは女性人権団体の支援を受けて、再審を請求し、下級裁判所では退けられたものの、最高裁判所で再審が認められた。

釜山で2025年7月23日に行われた再審の初公判で、検察は性暴力被害に遭ったチェ・マルジャさんの行動は「正当な防衛行為であり、過剰でも違法でもなかった」と述べ、謝罪した。

コリア・タイムスによると、9月10日の判決言い渡しの後、現在79歳のチェさんは裁判所の外で支援者から花束を受け取り、震える声で「チェ・マルジャは無罪です」と宣言し、支援者らが「チェ・マルジャはやり遂げた!」と応えた。

チェさんさんの運動を支援してきた団体「韓国女性ホットライン」代表のソン・ランヒさんは、「今後、女性の防衛行為は正当な行動として理解されるでしょう。不当な苦しみを強いられる女性が減ると信じています」BBCに語っている。

「少なくとも今回の判決は、被害者へのメッセージになります。今あなたが経験していることがどんなに苦しく不当であっても、『あなたの声には意味がある。声を上げてほしい』と伝えています」

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