小鳥は超高速で点滅する光を認識する能力が人間の2倍以上も優れている
by Wikimedia Commons 空を飛ぶ鳥は、視界の中を高速で移動する昆虫や障害物などに素早く気づき、その正体を見分けて追跡する必要があります。スウェーデンの研究者らが2016年に発表した論文では、野生の小鳥がヒトの2倍以上もの視覚的な時間分解能(一定時間内に起きた視覚的変化を感知する能力)を持っていることが報告されています。
Ultra-Rapid Vision in Birds | PLOS One
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0151099Small birds' vision: Not so sharp but superfast | EurekAlert! https://www.eurekalert.org/news-releases/505824
Small Birds Have Ultra-Rapid Vision | IFLScience
https://www.iflscience.com/small-birds-have-ultra-rapid-vision-34628動物の視覚的な時間分解能については、高速で点滅する光を見た時にそれが連続した光に見えるか、それとも断続的な光に見えるかを周波数(Hz)で表した臨界フリッカー周波数(CEF)で測定されます。ヒトのCEFはおよそ60Hz程度といわれており、鳥や昆虫などの空を飛ぶ動物はより優れたCEFを持っていると考えられています。
研究チームは、いずれもスズメ目に分類されるアオガラ(Cyanistes caeruleus)・シロエリヒタキ(Ficedula albicollis)・マダラヒタキ(Ficedula hypoleuca)の3種の野生個体を捕獲し、CEFを測定する行動実験を行いました。
これらは体長およそ10~14cmほどの小型の鳥であり、日中に森の中を機敏に飛行することから、高いCEFを持っていると推測されていました。なお、CEFは代謝率や体格と相関関係にあることが示されており、これらの小型スズメ目の鳥類と同等の代謝率やサイズを持つ脊椎動物は、およそ100HzのCEFを持つと推定されているとのこと。by Wikimedia Commons 研究チームは捕獲した鳥を飼育しながら、点滅する光と継続的な光を見分ける訓練を行いました。訓練では、点滅して光るパネルと継続して光り続けるパネルを用意し、継続して光り続けるパネルの下に空いた穴にだけエサを置くことで、鳥が継続して光るパネルを好んで選択するように覚えさせました。 実験では各セッションの前に1時間エサを与えない時間を設け、鳥がエサを欲するように動機づけした上で、点滅して光るパネルと継続して光るパネルを見せてどちらを選択するのかを調べました。同じ点滅スピードでのセッションは5回行われ、5回中4回正しい方を選択できれば、鳥がその点滅スピードを識別できると判断されました。
セッションは50Hzの点滅から始まり、正しいパネルを選ぶことに成功するごとに点滅するスピードを80Hz、100Hz、120Hzとだんだん上げていきました。正しいパネルを選ぶのが難しくなったところで、鳥のCEFを決定するために点滅光を微調整したセッションに切り替え、厳密なCEFの測定が行われたとのこと。 実験の結果、アオガラのCEFは最大131Hz、シロエリヒタキのCEFは最大141Hz、マダラヒタキのCEFは最大146Hzであることが確認されました。これは、ヒトのCEFよりも2倍以上優れた値であり、代謝率やサイズから推定されるCEFも大幅に上回っています。
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スズメ目の小鳥が予測よりも非常に優れたCEFを持っていたという事実は、これらの種では自然選択の結果として高いCEFを持つ個体が生き残ってきたことを示唆しています。
論文の共著者であり、ウプサラ大学で動物生態学を研究するアンダース・オーディン氏は、鳥類全般でみれば高いCEFが典型的な特徴なのかもしれないと指摘。「アオガラ・シロエリヒタキ・マダラヒタキと生態学的にも生理学的にも類似した鳥類は数多く存在しており、おそらくそれらの種も超スピードの視覚という能力を共有していると考えられます」と、オーディン氏は述べました。
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