「子供のため」治療諦める人も 高額療養費見直し がん患者訴え
高額な医療費の患者負担を抑える「高額療養費制度」が今年と来年の8月、段階的に見直されます。月々の自己負担上限は最大で約4割上がり、白紙撤回を求めるオンライン署名に約30万筆が集まるなど懸念の声が上がっています。制度は今後もセーフティーネット(安全網)の機能を維持できるのでしょうか。
スキルス胃がんの患者会代表として患者の声に耳を傾けてきた一般社団法人igannet代表理事の轟浩美さんは、自身も昨年、胆のうがんのステージ4という診断を受け、制度の重要さを痛感したそうです。「来年度の政府予算はまだ決まっていない。丁寧に審議する時間はあるはず」と訴えます。【聞き手・西田佐保子】
立教大教授の安藤道人さんの意見 保険料削減効果「月100円余」 高額療養費見直しを批判 識者 慶応大大学院特任教授の五十嵐中さんの意見
「自分はいつかいなくなる」 切実な声聞き
――2024年に高額療養費制度の見直し当初案で、患者の負担上限額を引き上げる議論が浮上した時、どう受け止めましたか。
◆現行制度でも厳しさに直面している現状があるのに、負担上限額が引き上げられれば、治療を諦める若い患者がさらに増える。それが最初に抱いた危機感でした。
私はスキルス胃がんで亡くなった夫の後を継いで、患者会の代表を10年間務めてきました。
スキルス胃がんは、若い女性が発症する割合が比較的高い病気です。
毎月削られる治療費を前に「自分はいつかいなくなる。だから治療費の代わりに、教育費として残したい」と、幼い子どものために治療をためらう30歳前後の母親たちの声を聞き続けてきました。実際、子どもの将来のためにと治療を途中でやめた方もいます。
――轟さんを含む患者団体の人たちが25年3月7日に石破茂首相(当時)と面会し、首相は負担上限額の引き上げを見送ると表明しました。予算案は現行憲法下で初めて参議院で再修正され、同年8月の引き上げは凍結されました。どう振り返りますか。
◆あの頃は国会に足を運び、傍聴席から首相を見ていました。テレビ中継には映らないふとした表情や言葉の端々から、心のあたたかさを感じたのを覚えています。
なので、見直しの当初案(を反映した予算案)が衆議院を通過した後、3月5日に参議院の予算委員会に参考人として出席した時は、「首相に声を届けたい」という一心でした。
「日本人がノーベル賞を取った画期的な薬のおかげで、昔救えなかった若い命を救うことができる」「今も医療費の支払いに厳しさを感じている人がいる中、セーフティーネットの根幹を崩してしまう恐れがある」と訴えました。
その2日後に首相官邸に呼ばれた時、「急に…