「ニュースがなくても生きていける」 エンタメに染まるZ世代の日常:朝日新聞
ストーリー
「オールドメディア」の記事が同世代に響かない――。入社以来そう感じてきた20代後半の朝日新聞記者が、かつての同級生らと向き合い、すれ違う理由と情報をめぐるZ世代のリアルに迫ります。
3回目は、魅力的なエンタメ情報に囲まれ、水を差すようなニュースを忌避する男性に聞きます。記事末尾の「取材後記」で、取材を経て見えたメディアやニュースの今後を記者が考察します。
広告制作会社で働く同級生の男性=2026年3月20日、東京都港区、浅田朋範撮影カップルや家族連れでにぎわう、3月中旬の東京・赤坂のレストラン。パスタを食べながら、広告制作会社で働く同級生の男性(29)は、3年ぶりに再会した記者(29)にちゅうちょなく語った。
「ニュースがなくても生きていけるよね」
そうならば、手元のスマホから、いつもどんな情報を得ているのか? ニュースを見ないなら何を? 立て続けに尋ねると、スマホの画面には、芸能人がパーソナリティーを務めるラジオやお笑い番組の視聴記録がずらりと並んでいた。
机を並べた中学時代、男性は同じクラスで学級委員を務め、修学旅行や校外学習といった行事のたびに、まとめ役を担うリーダー格だった。サッカー部ではゴールキーパーで、放課後のグラウンドでボールに食らいつく姿が印象的だった。
大学を卒業し、2020年から働く都内の広告制作会社では、企業の要望に応じて、新商品の販売促進イベントの企画や制作を担当する。
練り上げた企画が実現し、SNSやイベントの来場者の好意的な反応を目にすると、「自分がこれをつくったんだ」という達成感が味わえ、仕事の原動力になっている。
繁忙期は、退勤時に終電を逃す時もある。それでも仕事はやりがいがあり面白い。
エンタメに埋め尽くされた日常
平日は午前5時半に起き、30分で身支度を整えて家を飛び出す。ワイヤレスイヤホンを耳に付け、スマホアプリの「radiko(ラジコ)」をタップする。深夜に放送された「オールナイトニッポン」の軽妙な曲が耳に心地よい。
同時に、X(旧ツイッター)やインスタグラムを開く。小さな画面に表示されるのは友だちの近況や、サッカー選手のプレー動画。出社前に立ち寄るジムでは、ランニングマシンで走りながら、お笑い芸人のコントを聞く。
昼食時も皿の隣に置くスマホで、30分ほどのお笑い番組を見ながら食べるのが日課だ。午後8時半ごろに会社を出ると、再びイヤホンを着けて帰路に就く。
信号待ちをする広告制作会社で働く男性=2026年3月20日、東京都港区赤坂2丁目、浅田朋範撮影仕事中などスマホを使えない時間帯以外は、浴びるようにラジオやお笑い動画を視聴する日々。神奈川県の自宅から都内の大学まで片道2時間の通学時間にはまって以来、ラジオやお笑いで埋め尽くされた毎日に、ニュースが入り込む余地はない。
仕事でミスをしても、ラジオ制作者になったつもりで「これをどうやったら面白く伝えられるか」を考えると、ポジティブな気持ちになれた。
社会人になって6年が経ち、学生時代と大差なく「お笑いばっか見てていいのか」と、後ろめたい気持ちに駆られる時もある。
「一つくらいは賢いものも見…
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この記事を書いた人
- 浅田朋範
- 東京社会部|司法クラブ
- 専門・関心分野
- 司法、日本で暮らす外国人、ヘイトスピーチ