「トランプ2.0」は何を変えたのか 翻弄の半年を記者4人が解説

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駒木明義 北京=井上亮 テヘラン=大野良祐 ニューデリー=石原孝

 米国のトランプ大統領が復権して20日で半年。矢継ぎ早に繰り出す施策に、米国内だけでなく世界も翻弄(ほんろう)されてきた。爆撃、関税、停戦交渉、対外援助の停止――。先鋭化する「トランプ2.0」がもたらしたものは何か。各地の記者が報告する。

2025年7月15日、ワシントンのホワイトハウスで報道陣に応じるトランプ大統領=ロイター

 ロシアのプーチン大統領にとっては、ほぼ思い通りに乗り切った半年だった。

 トランプ氏は今年1月7日、ロシアによるウクライナ侵攻を「6カ月か、もっと前に終わらせたい」と語った。20日の就任式を前に、24時間以内の終結という当初の目標を後退させたのだが、それさえ守れなかった。

 プーチン氏がトランプ氏に伝えているメッセージは2点に集約できる。①ウクライナへの攻撃は目標達成まで続ける②米国とは経済などで建設的な協力を進めたい――。

 トランプ氏が望む停戦について、プーチン氏は「根本原因の除去」が必要だと主張し、抵抗を続けるウクライナに責任を転嫁。トランプ氏も、ウクライナのゼレンスキー大統領を「独裁者」と呼ぶなど、同調した。

 2月末に行われたトランプ氏とゼレンスキー氏の会談は激しい口論に発展して決裂した。プーチン氏が望む展開だった。

 その後もトランプ氏は、停戦に応じないプーチン氏にいらだつ場面はあっても批判は避けた。

 6月にカナダで開かれた主要7カ国首脳会議G7サミット)は、米国の反対で、ロシア批判の声明を出せずに終わった。米国と欧州の間にくさびを打ち込むことを狙うプーチン政権にとって、大きな成果だ。

2025年5月11日、モスクワのクレムリンで記者たちに発表をするロシアのプーチン大統領=ロイター

 ただ、ここにきて風向きが変わりつつある。トランプ氏は7月14日、我慢が限界に達したのか、ロシアが50日以内に停戦しなければ、ロシアから資源などを輸入する国に100%の関税を課す考えを表明。北大西洋条約機構(NATO)を経由したウクライナへの武器支援も強化する構えだ。

 とはいえ、現時点ではプーチン氏の想定の範囲内のはず。引き続き電話協議の機会などを通じて、トランプ氏を引き戻そうとするだろう。

 国際法や小国の主権を軽んじ、強国が分割統治する世界を望む両大統領が、再び意気投合する可能性は否定できない。

 トランプ米大統領の返り咲きから20日。トランプ氏の1期目に駐米大使を務めた佐々江賢一郎さんは、トランプ外交が突きつけるものには、「米国の姿勢に関係なく、いずれ向き合わなければいけないテーマもある」と指摘します。

【中国】高関税にも「大して影響ない」 二つの正反対の見方

 米国からの高関税によって、中国の企業はかなり困っているのではないか――。

 米中が互いに100%以上の関税をかけ合い、対立が激化していた4月中旬、そんな思いをめぐらせながら中国東部の浙江省義烏市にある雑貨や衣料品などあらゆる商品を扱う世界最大級の卸売市場を歩き回っていた。

 広大なビル内で、米国が中国に大きく依存するクリスマス装飾品やツリーなどの商品を扱う店舗を50近くは回っただろうか。聞こえてきたのは、予想に反して「大して影響はない」という声だった。

 第1次トランプ政権を経て、店主らは中南米やロシアなど輸出先の多角化を進めていたのだ。確かに市場には多くの外国人バイヤーが訪れており、スペイン語などが飛び交っていた。

2019年6月、大阪で開かれたG20サミットで会談するトランプ米大統領(左)と、中国の習近平(シーチンピン)国家主席=AP

 昨年の米大統領選の際、中国には二つの正反対の見方があった。

 一つ目は、対中強硬路線を鮮…

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この記事を書いた人

駒木明義
国際報道部記者|ロシア・欧州担当
専門・関心分野
ロシア、国際関係、外交
井上亮
中国総局|政治外交担当
専門・関心分野
中国社会、人口減少、移民

2024年の米大統領選で共和党のドナルド・トランプ前大統領が返り咲きました。「米国第一主義」を掲げるトランプ氏の再来は、どんな影響をもたらすのか。最新ニュースをお伝えします。[もっと見る]

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