三井郁男氏【最高値更新に向かうのか? 7月相場の展望を聞く】 <相場観特集>
前週末に4万円台を回復した日経平均株価は30日も一段高となった。短期的な過熱感が台頭し、一時700円を超す上昇となった後は伸び悩んだものの、終値は昨年7月11日につけた史上最高値(4万2224円02銭)に対し、あと1740円弱まで接近した。名実ともにあすから始まる7月相場で、日経平均の高値奪還は実現するのか。この先の展望についてアイザワ証券・投資顧問部ファンドマネージャーの三井郁男氏に話を聞いた。
●「日本株固有の上昇要因も」 三井郁男氏(アイザワ証券 投資顧問部 ファンドマネージャー) 米国による相互関税について上乗せ分の一時停止期間が延期されると期待されているとはいえ、ベースの10%分を含め、夏場以降に悪影響が顕在化するリスクがある。米国株はすでにバリュエーションの観点では買い上がりにくい水準まで切り上がったものの、中東情勢を巡る緊張緩和を受けてインフレ懸念が和らぎ、米連邦準備制度理事会(FRB)による利下げ観測が広がるようになった。米国株の頑強な動きを受け、リスク性資産への資金配分を抑制気味にしていた投資家が「追い込まれている」印象がある。 日本株に関しては、関税という悪材料のその先に、投資家の視線が向かいつつあるようにも感じる。具体的に言えば日本企業の変化がもたらすEPS(1株利益)の押し上げ効果だ。収益力の強化や資本効率性の向上への取り組み、業界再編の動きなどを通じて、不確実性のあるマクロ環境でも日本全体で企業価値が高まるシナリオが強く意識されるようになった。この先1ヵ月間の日経平均は3万9000~4万2000円の範囲で推移するとみているが、一時的に過去最高値を上回ることがあってもおかしくはない。AI・半導体関連は強い動きを続けると想定しており、アドバンテスト <6857> [東証P]や東京エレクトロン <8035> [東証P]といった製造装置メーカーのほか、イビデン <4062> [東証P]など周辺銘柄にも物色対象が拡大しそうだ。ソニーグループ <6758> [東証P]や任天堂 <7974> [東証P]、バンダイナムコホールディングス <7832> [東証P]といったゲーム関連も有望なセクターとなる。鹿島 <1812> [東証P]などゼネコン大手や、関電工 <1942> [東証P]をはじめとした電気設備工事関連も、業績面での期待からマークされることとなるだろう。
中小型株にも循環物色の輪が広がるに違いない。利益拡大に対する投資家の期待に応えてきたラクス <3923> [東証P]やジャパンエレベーターサービスホールディングス <6544> [東証P]に加え、グロース銘柄ではリテールテックで競争力を持つトライアルホールディングス <141A> [東証G]への関心が高まった状態が続きそうだ。グロース市場を巡っては時価総額が一定の基準に満たなければ上場廃止となる「足切りルール」が導入されるとみられており、新基準のプレッシャーを受ける企業には、時価総額の増加に向けた方策が講じられることとなる。このほか防衛関連として三菱重工業 <7011> [東証P]や川崎重工業 <7012> [東証P]、IHI <7013> [東証P]の重工3社やNEC <6701> [東証P]なども注目される局面が続くと予想している。
(聞き手・長田善行) <プロフィール>(みつい・いくお) 1984年からファンドマネージャーとして日本株運用を40年以上にわたり続ける。国内銀行投資顧問、英国の投資顧問会社、国内大手信託銀行を経て、投資顧問会社を設立。2013年からアイザワ証券の投資顧問部で日本株ファンドマネージャー。自ら企業調査するボトムアップ運用を続けている。 株探ニュース