エマニュエル・トッドが洞察「米国はイランだけでなく欧州諸国も攻撃している」EU指導者は“米国の召使い”なのか(文春オンライン)

〈「イラン攻撃の“真の狙い”は体制転覆ではなく…」エマニュエル・トッドが看破する「『脅迫の帝国』に変貌した」米国の“テロリスト的”外交政策〉 から続く 【動画を見る】エマニュエル・トッドが洞察「米国はイランだけでなく欧州諸国も攻撃している」トランプ政権の狙いは「第二のエネルギーショック」にあり  米国とイスラエルによるイラン攻撃を受け、欧州各国首脳の反応が割れている。歴史人口学者で2024年に『 西洋の敗北 』(文藝春秋)を刊行し世界27カ国で翻訳されたエマニュエル・トッド氏はそんな欧州に厳しい視線を向ける。文藝春秋PLUSの緊急インタビューで、トッド氏は欧州指導者の「臆病さ」を指摘し、その背景にある構造的な問題を明らかにした。通訳を務めたのは慶應義塾大学名誉教授の堀茂樹氏。(全2回の2回目/ はじめから読む ) (初出:「文藝春秋PLUS」2026年3月9日配信)

 たとえばトッド氏はスペインのペドロ・サンチェス首相について「勇気があり、立派だ」と称賛する。サンチェス首相は米軍基地の使用を禁止し、それに対しトランプ大統領は即座に報復を示唆した。  一方で、他の欧州諸国については厳しい評価を下す。「フランス、ドイツ、イギリスの指導者たちの行動は、はっきり言って臆病です。彼らは真実を述べることを恐れ、米国の顔色をうかがっているばかりで、憂慮すべき状況です」

「米国やイスラエルのこうした行動は、国際関係を弱肉強食に則った『ジャングルの掟』が支配する世界に変えかねない、非常に問題のあるもの」だと指摘する。  さらに深刻な帰結として、核拡散の問題を挙げる。「『ジャングルの掟』がまかり通る世界になれば、各国は自衛のために核兵器を保有しようとするでしょう。つまり、核拡散を推し進めているのは、ほかでもない米国とイスラエルです」

 トッド氏の分析はさらに根源的な問いへと向かう。「欧州の指導者たちの振る舞いは、多くの大きな疑問を投げかけます。彼らは自国民の代表なのか、それとも米国の召使いなのか、判然としないからです」  その実例として、トッド氏は二つのエネルギー危機を挙げる。「例えば、ロシアからのガスパイプラインを破壊されても欧州はまともな反応ができず、また現在進行中のイランの危機に対しても、適切な対抗策を講じることも、反論すらすることもできていません」  ロシアからのガスパイプライン破壊は「欧州を恒常的な経済危機の状態に陥れた」とトッド氏は指摘する。そして今、イラン戦争による「ホルムズ海峡の封鎖と欧州への石油・ガス供給の停止」という「第二のエネルギーショック」が迫っているという。


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 トッド氏は、衝撃的な仮説を提示する。「米国は今回イランを攻撃したとされていますが、本当に対象はイランだけなのでしょうか。結局のところ、米国はイランだけでなく、欧州諸国をも攻撃しているのではないでしょうか。トランプ政権の発足以来、米国指導者たちは欧州を屈辱的に扱ってきた。ヴァンスも早い段階からそうしていた」  こうした観察から、トッド氏は結論に至る。 「その背後には、現代米国のニヒリズムが垣間見えます。米国の国際的な行動を合理性の原則だけで解釈しようとすると、本質を見誤るでしょう」  トッド氏は、次のように断じる。 「米国の行動は、合理性から逸脱した衝動、あるいは暴走するニヒリズムの表れと見るべきです。これは純粋なカオスであり、従来の地政学や外交問題の枠組みでは捉えきれない次元の問題を含んでいます」

「文春オンライン」編集部

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