プーチンが恐れる「国家崩壊」危機…ロシア・ウクライナ戦争が“終わらせられない戦争”に変質しつつある理由(集英社オンライン)
ロシア・ウクライナ戦争は3年以上に及ぶ長期戦となり、国際社会の関心は中東や米中対立へと移りつつある。しかし、この戦争は単なる膠着状態ではない。プーチン大統領にとっては「国家崩壊」という最悪のシナリオを避けるためにも、容易に終わらせることのできない戦争となりつつある。そして、戦争が終結した後には、日本の安全保障を揺るがしかねない新たなリスクも待ち受けている。戦後を見据え、日本が備えるべき五つの論点を考える。 【画像】ロシア・ウクライナ戦争で飛躍的に高度化し、世界中に拡散されつつある戦術ドローン
中東での対イラン戦争が一旦の小休止に入り、トランプ政権の関心は徐々に自国の裏庭である中南米へと移りつつある。 近年、中南米では右派勢力が相次いで国政選挙で勝利し、今年10月にはブラジル大統領選挙も控える。さらに、キューバ政権の転覆を含む大胆な政策目標が掲げられているとされ、米国の地域戦略は新たな局面を迎えている。 他方で、米中間の経済安全保障をめぐる中長期的な対立構造は依然として続き、世界の地政学的緊張はむしろ拡大している。 こうした国際情勢の激動の中で、世界から徐々に忘れられつつある戦争がある。それがロシア・ウクライナ戦争だ。 トランプ大統領は当初、「24時間以内に問題を解決する」と強調していたが、実際にはロシア・ウクライナ双方ともに譲歩の気配を見せず、戦闘は現在も継続している。 地上戦線は一進一退の膠着状態にあり、ミサイル攻撃やドローン戦による空中戦だけが断片的に報じられる状況だ。 むしろ、このような空中戦主体では敵対勢力に決定的な敗北をもたらすことは困難であり、もはや終わりの見えない、不毛な消耗戦が続いていると言ってよい。
しかし、冷静に考えると、この戦争は「終わらせてはならない戦争」へと変質しつつある側面も否定できない。なぜなら、戦争が終結した瞬間、国際秩序は大きく揺らぎ、その変化が世界中に予測不能なリスクをもたらす可能性があるからだ。 トランプ政権が意図的に戦争の長期化を容認しているとの見方が一部で語られるのも、こうした構造的リスクを背景にしている。ただし、どれほど長期化しようとも、戦争はいつか必ず終わりを迎える。 したがって、我々は「戦後」を見据え、国際秩序の変化に伴うリスクへの備えを今から始めなければならない。 以下では、日本が最低限想定すべき五つのリスクを整理する。
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(1) ドローン戦争技術の世界的拡散 ロシアとウクライナの戦場では、ドローン技術が実戦経験を伴って飛躍的に高度化した。製造技術だけでなく、操縦・運用に習熟した戦闘員が大量に育成されている。戦争が終われば、これらの技術と人材は当然ながら世界中へと拡散する。 すでにウクライナのドローン技術は西側諸国や湾岸諸国と共有されつつあり、ロシア側も同様だ。問題は、その拡散先が国家に限られない点にある。 ドローン兵器は安価で入手しやすく、非対称戦に極めて有効であるため、テロ組織や非国家主体が容易に利用できる。 国家の枠組みでは拡散を完全に制御することは難しく、世界中の紛争地帯に新たな火種をもたらす危険性が高い。これは国際安全保障にとって極めて深刻な問題である。 (2) ロシアの国際社会への復帰 停戦の条件次第ではあるが、戦争が終わればロシアは遠からず国際社会への復帰を模索するだろう。 現在、ロシアは中国の影響下にあるとされるが、それでもエネルギー大国・軍事大国としての基盤は揺らいでいない。エネルギー供給、北極海航路、核問題など、ロシアが関与する国際課題は多岐にわたる。 欧州や日本は、ロシアとの関係再構築において難しい判断を迫られる。ウクライナ復興支援を通じた経済的利得を確保しつつ、ロシアとの関係でも実利を追求する必要がある。 制裁解除のタイミングや外交的距離感を誤れば、国益を損なう可能性もある。戦後のロシアをどう扱うかは、日本外交にとって避けて通れない課題となる。
(3) 米ロ関係の再編と米欧関係の亀裂 トランプ政権は欧州のポリティカルコレクトネスに基づく価値観を強く批判しており、ロシアが国際社会に復帰すれば、米欧関係の亀裂は一層深まる可能性がある。 ロシアは反ポリティカルコレクトネス的な価値観を発信する国であり、米国の一部政治勢力と親和性を持つ側面もある。 リベラルな論調の報道一色の日本から見ると、このような米ロの「敵の敵は味方」というロジックは見えにくく、国際政治の底流に流れる米欧対立の本質を掴み損ねる可能性がある。この力学を注意して意識することは極めて重要なことだ。 もし米ロ関係が何らかの形で改善すれば、その影響は米中関係にも波及し、国際秩序の力学を大きく変える。 日本としては、米ロ関係の変化が中国政策に及ぼす間接的影響を慎重に分析し、複数のシナリオに基づくコンティンジェンシープランを構築しておく必要がある。