【分析】ウクライナ和平合意に動きなし、トランプ氏とプーチン氏は共に欧州を非難(CNN.co.jp)

(CNN) 米国のドナルド・トランプ大統領とロシアのウラジーミル・プーチン大統領は再び同じ考えを共有している。 【映像】ドローン攻撃の新たな映像、ロシアの航空機が炎上 米アラスカ州で行われた、注目度は高かったものの成果は乏しかった首脳会談から3週間が経過し、ウクライナ戦争の終結に向けた取り組みが停滞するなか、米国とロシアの大統領は今や、欧州を特に標的にしている。 トランプ氏は4日、欧州首脳との電話会談で、欧州に対して、さらなる取り組みを求めた。しかし、この戦争に関連した唯一の漸進的な外交活動は、米国の欧州の同盟国が和平合意後にウクライナを守るための安全の保証の確保に努めるというものだけだった。 トランプ氏によるおぼつかないウクライナ外交での最新の進展は、トランプ氏が記者団に対し、近いうちにプーチン氏と再び会談し、「今後何をすべきか」を決める予定だと語った翌日に起こった。トランプ氏は、プーチン氏が延長された2週間の期限を無視して和平交渉を遅らせ続けた場合、ロシアに対する厳しい直接制裁に同意するかどうかについて明言を避けた。直近の「最終期限」は5日だった。トランプ氏は3日、大統領執務室で、「彼がどのような決定を下すにせよ、我々はそれに満足するか不満を持つかのどちらかだ。もし不満であれば、何かが起きるだろう」と述べていた。 トランプ氏は4日、欧州首脳とともに、ウクライナのボロディミル・ゼレンスキー大統領と会談した。ゼレンスキー氏は会談後、ロシアへの経済的圧力と「ロシアの軍事力から資金を奪うこと」について議論したと語った。 しかし、会談後の米国から出たメッセージは、ロシアよりも欧州を非難する内容だった。 ホワイトハウス当局者は電話会談後、トランプ氏が「欧州は戦争の資金源となっているロシア産石油の購入をやめなければならないと強調した。ロシアはEU(欧州連合)から年間11億ユーロ(約1900億円)の燃料販売を受けた」と述べた。「大統領はまた、欧州の指導者たちは、ロシアの戦争活動への資金提供について中国に経済的圧力をかけなければならないとも強調した」 一方で、トランプ氏の指摘にも一理ある。欧州諸国がロシアから深刻な安全保障上の脅威を感じている現状を考えると、西側諸国が2022年のウクライナ侵攻をめぐってロシア経済の弱体化を図るために制裁を発動しているにもかかわらず、依然としてロシア産のエネルギーを購入しているEU加盟国が存在するのは奇妙だ。 それでも、トランプ氏のウクライナ戦争に関する多くの立場と同様に、欧州への圧力には非論理的で、偽善的な要素すら含まれている。結局のところ、トランプ氏自身は中国に制裁を科すつもりがないにもかかわらず、ロシアからの石油購入をめぐって欧州に対して中国を攻撃するよう要求しているのだ。 トランプ氏が米国にとって不利な状況にもかかわらず高関税による貿易戦争を開始したことで、米国は中国との貿易交渉で膠着(こうちゃく)状態にある。トランプ氏は合意の可能性を損なうようなことは一切したくないようだ。 しかし、欧州に対するトランプ氏の姿勢は、かつての友人であるインドに対する態度と似ている。インドは米国への輸出に50%の関税を課されて苦境に立たされているが、トランプ氏はロシア産原油の購入継続を理由に関税を正当化している。トランプ氏の行動は、インドをめぐって、同様に台頭するアジアの超大国である中国の勢力圏から遠ざけようとした歴代の民主・共和の大統領による30年にわたる試みを打ち砕いた。 トランプ氏の戦略の代償は、中国の習近平(シーチンピン)国家主席が強権的な指導者が集まる首脳会合で、インドのナレンドラ・モディ首相を陽気に歓迎したしたことで浮き彫りになった。一方、モディ氏はプーチン氏のリムジンで1時間を過ごしたが、これは3週間前のアラスカでの首脳会談でプーチン氏がトランプ氏の大統領専用車「ビースト」に乗ったことを彷彿(ほうふつ)させた。 いずれにせよ、プーチン氏の石油の購入を控えるよう欧州に圧力をかけても、決定的な効果は期待できない。ウクライナ戦争の激化を受け、欧州はロシア産エネルギーへの依存を減らす措置を講じてきた。ロシアはかつて、EUにとって最大の石油供給国だった。だが、EU加盟国はその後、海上の石油輸出と石油精製品の輸出を禁止した。CNNは先月、欧州への石油の輸出額が25年1~3月期は17億2000万ドル(約2500億円)となり21年1~3月期の164億ドルから減少したと報じた。 米国と欧州の分断を狙うロシア 一方ロシアは、ウクライナ東部の前線でロシア軍がさらに前進できる余地を作ろうと、北大西洋条約機構(NATO)加盟国の間に亀裂を生じさせようとする従来の戦略を強化している。 プーチン氏は中国訪問中にスロバキアのロベルト・フィツォ首相と会談し、ロシア政府が欧州への攻撃を計画しているとのうわさをめぐり、欧州諸国が「ヒステリー」をあおっているとして批判した。プーチン氏は「ロシアは、誰かを攻撃する意図を持ったことはこれまで一度もなく、持っておらず、これからも決して持つことはないということは、まともな人間なら誰でも十分に理解している」と述べた。プーチン氏は14年と22年にウクライナに軍を派遣している。 プーチン氏はアラスカで、米国の同盟国を頻繁に批判して来たトランプ氏と並んで立ち、欧州はトランプ氏との外交に「支障をきたすべきではない」と警告した。 欧州員会は、EUのフォンデアライエン欧州委員長を乗せた航空機が8月31日にブルガリアへの着陸を試みた際にGPS(全地球測位システム)に対する電波妨害の標的となったことを受けて、ロシアの関与が疑われると発表した。ロシアはこの主張を「偽り」であり、欧州の「パラノイア(妄想症)」の兆候だと激しく非難した。 ロシア外務省のマリア・ザハロワ報道官は記者団に対し、欧州に対する新たな批判として、ウクライナとの和平合意が成立した場合でも、外国軍を派遣するという考えは「受け入れられない」と述べた。これは、戦後にウクライナへの支援部隊派遣を求める欧州の動きを阻止しようとするロシア政府の新たな試みだった。 ホワイトハウスの当局者が2週間前には実現すると確信していたプーチン氏とゼレンスキー氏との会談も、実現の兆候はない。プーチン氏はロシア首都モスクワでの会談を提案したが、そうした場所ではゼレンスキー氏が安全と感じることは不可能であるため、これもまた妨害行為と映った。 トランプ氏はかつて、こうした協議に第三者として参加する考えを示していたが、まずは一対一の協議を行うべきだとのロシアの立場に戻った。ウクライナの同盟国は、プーチン氏が二国間協議で対立をあおり、ゼレンスキー氏が協議のプロセスを妨害したとトランプ氏に主張するのではないかと懸念している。 安全の保証へ向けて動き、だがロシアが障害に 4日には、わずかな前進の兆しが見えた。たとえそれが、本格的に動き出す前に行き詰まったトランプ氏が掲げる和平構想の成功という、実現の可能性が極めて低い条件付きのものであっても。 トランプ氏とゼレンスキー氏、そしてウクライナを支援する「有志連合」のメンバーとの会談後、フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、停戦合意が成立した場合、26カ国が潜在的な平和維持部隊への参加を約束したと明らかにした。 マクロン氏は、ウクライナ軍の強化と欧州軍のウクライナ派兵に加えて、ウクライナの安全の保証における三つ目の要素として、「米国のセーフティーネット」が必要だと指摘した。米国は同盟国に対し、ロシアとの和平が成立した場合、ウクライナへの安全の保証の提供で、限定的な役割を果たす用意があると表明している。 ウクライナでの和平に向けた動きがほとんど見られないまま、1週間が終わった。CNNが報じたように、トランプ氏がいら立ちを募らせているのも無理はない。 しかし、トランプ氏に、この膠着状態を打破するような画期的なアイデアがあるような兆候はほとんどみられない。 ◇ 本稿はCNNのスティーブン・コリンソン記者による分析記事です。

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