「石破にNOでなく自民にNO」:玉川徹氏の問題すり替え

ジャーナリズム

玉川徹氏は「石破政権にNOでなく、自民にNOなんじゃないですか?」と、石破首相に退陣を迫る自民党議員を批判した。しかし、これは数字から見ても事実ではない。

三年前から自民党は9.5%減っており、参政党が4%増え、新しい日本保守党が3%だから、自民党から公明党以外の国民民主党など中道リベラルに流出したのは2.5%だけである。

大雑把にいえば、自民党から流出した票のうち、四分の三はアンチ石破、四分の一がアンチ裏金議員ということになる。以下は、2022年(第26回)と2025年(第27回)の参議院比例代表選挙における各政党の得票率である。

自由民主党(自民党)

年 得票率 得票数 2022年 約34.4% 約18,256,244票 2025年 約24.9% 約12,808,306票

参政党

年 得票率 得票数 2022年 約3.33% 約1,768,349票 2025年 約7.4% 約7,425,053票

日本保守党

年 得票率 得票数 2022年 該当なし(未結党) ― 2025年 約2.9% 約2,982,093票

何度でも言うが、自民党が議席を減らした主因は、裏金問題の処分が厳しすぎた結果である。逆ではない。参政党や保守党の増えた分はそうであるし、国民民主党へ流れた分も、ある程度そうだ。一方、立憲民主党、共産党、社民党などはみんな減っているではないか。

参照:自民党の退潮は「裏金処分」が軽すぎたから?重すぎたから? 八幡和郎

民主主義という制度は、ある政策が評判がいいかどうかではなく、その政策なり判断が票にどうつながるかを意識して行動することを正しいとする制度だ。

もともと頑強な反対派を喜ばせても、何の得にもならない。安倍さんが上手だったのは、岩盤支持層、浮動層、岩盤反対層をそれぞれ三分の一ずつに分けて、

  1. どんな場合でも離さない岩盤層
  2. 選挙のときにだけは味方になってくれたらいい中間派
  3. 相手にしない岩盤反対派

と分けて対処したことだ。

内閣支持率だってそうである。石破支持がそこそこあるとか、今後の総理候補の中で石破氏を望む人が多いといっても、その大半はこれまでも自民党に投票していないし、石破氏が続投しても投票することのない人たちであるから、相手にする必要はない。

自民党にとって大事なことは、早く石破総裁を交代させ、次期統一地方選挙や総選挙に参政党や保守党から立候補しようとする人を思いとどまらせることである。

もうひとつ、玉川徹がこのような発言をするには、裏がある。玉川徹は「僕もずっと昔から知っている財務官僚が今度トップに立つことになった。矢野(康治)さんって人ですけど…彼は昔から改革マインドがずっとあって、トップを立ちながらそれをやろうとしている」と発言したことがある。

玉川徹氏(モーニングショーHP)と石破首相(首相官邸HP)

玉川氏はテレビ朝日系『羽鳥慎一モーニングショー』などで、財政規律や財務省の立場に理解を示す発言を繰り返しており、SNS上では「財務省寄り」「ザイム真理教」と揶揄されることもある。本人は「財務真理教ではない」と否定しつつも、「借金しても大丈夫というより、借金してはいけないという方に理がある」「財政規律を守るのは先進国では当たり前」「財務省はもっとアナウンスメントすべき」と言っている。

自民党批判のなかには、積極財政の立場からのものもあるわけだが、そちらに話を持っていかれると困るので、玉川氏は裏金問題こそが国民の関心の中心だという方向に誘導したいのだろう。

【参照】

関連記事: