透析が必要になって後悔ではなく今日からできる「頑張りすぎない」5つのステップ 「崖っぷちからの生還」目指す必要はない
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健康診断の数値、見て見ぬふりをしていませんか? 疲れやすさ、むくみ、息切れ……小さなサインを見逃していないでしょうか。生活習慣病を放置した先にある、深刻な腎臓病と透析治療の現実――。10万人以上の患者と向き合ってきた腎臓内科医鈴木孝子氏の新著『からだの声を聴く習慣』より一部抜粋し再構成のうえお届けします。
1回目:『「生活習慣病のフルコース」60代男性は人工透析を、50代男性はインスリン導入回避できたワケ… 患者たちの“共通点”』
2回目:『「腎臓の数値が悪い」ピンとこない人に伝えたい腎機能の低下を放置が怖いこれだけの“理由” 健康診断で見るべき項目は?』3回目:『ある日突然「透析患者」に仕事一筋“50代男性”の悲鳴 「気分が悪い」とクリニックに→即入院→透析開始 心が追いつかず…』■最初の一歩を踏み出すために
1回目(『「生活習慣病のフルコース」60代男性は人工透析を、50代男性はインスリン導入回避できたワケ… 患者たちの“共通点”』)でご紹介した三人の患者さんを思い出してください。彼らは危機的な状況に追い込まれながらも、「小さな一歩」を踏み出すことで人生を大きく変えることができました。
もしあなたが今、まだ深刻な病気に至っていないとしたら、それは大きな幸運です。なぜなら、彼らのように「崖っぷちからの生還」を目指す必要はなく、予防という最善の選択肢を持てるからです。 透析が必要になってから、あるいは腎移植を検討しなければならなくなってから後悔するのではなく、今できることから始めてみませんか? 予防の力は、病気を遠ざけるだけでなく、日々の生活に安心と笑顔をもたらしてくれます。
では、具体的に何から始めればよいのでしょうか。三人が教えてくれた「小さな一歩から始める」という智恵を、あなたの日常にどう活かしていけばよいのか。
ここからは、日常を見直し、健康を取り戻すための具体的なアクションについて、詳しくお話しします。ポイントは「頑張りすぎない」「笑顔になる」の2点です。ステップ1:からだの声に耳を澄ませてみよう(現状把握)
24時間、365日、生まれてからずっと働き続けている私たちのからだ。ときに悲鳴が聞こえても、忙しい、面倒だ……と、耳を塞いでしまうことがあるかもしれませんね。でもそれは雑音ではありません。からだがあなたに送る大切なメッセージなのです。
【セルフチェック】□ 朝すっきり目覚めていますか。□ シャキシャキ動けていますか。□ 満ち足りた気持ちで生活できていますか。□ いつもと違う体調の変化はありませんか。■小さな変化が病気の初期サインかもしれない これらの小さなサインを見逃さないでください。生きものとしての感覚を研ぎ澄まし、あなたらしく生きるために、たったひとつの、大切なからだの声をしっかりキャッチしてあげてください。
私のクリニックでは、初診の患者さんには必ずこうした日々の体調の変化について詳しくお聞きします。「最近、以前と比べて何か変わったことはありませんか?」という質問から、重要な診断の手がかりが見つかることも少なくないからです。患者さん自身が「大したことではない」と思っているような小さな変化が、実は病気の初期サインだったということも多いのです。
ステップ2:〝なりたい自分〟を思い描く(目標設定) 少し先の未来を想像することで、今何をすべきかが見えてきます。たとえば、仕事のパフォーマンスを上げたい、友人と旅行に行きたい、好きなスポーツや趣味を楽しみたい……。そんな〝なりたい自分〟を思い描いて、できるだけ具体的に考えてみましょう。
すると、あなたの頭に浮かぶのは、それが仕事であれ、趣味であれ、いきいきとしている姿なのではないでしょうか。その「いきいきとした自分」を実現するためには、健康なからだは欠かせません。
そんな理想のイメージに自分を近づけるために、あなたは「健康であろう」と行動できるようになるはずです。そして、常になりたい自分の姿を意識することで、モチベーションを落とすことなく、日々目標に向けた正しい行動を続けることができるのです。 もし今、気になる症状があったり、疾患を抱えていたりする場合は、健康の回復を最優先の目標にすることも大切です。
ステップ3:できることをひとつ決める(具体的な対策と実行)
目標が決まったら、まず実践です。最初の一歩を踏み出しましょう。頭の中であれこれ思いを巡らせていても、何も変わりません。まずはひとつ、取り組む行動を決めてください。完璧を目指す必要はありません。
たとえば糖尿病の方なら、主食を食物繊維の多い玄米や雑穀米に替えて食後の血糖値をゆるやかにする、毎食必ず野菜を摂るなど、食事の見直しから始めましょう。甘いものが好きな方には、いきなり間食をなくすのはハードルが高いかもしれません。
その場合は、おやつの中身にひと工夫してみてください。糖分やカロリーの高いスナック菓子や洋菓子類の代わりに、小魚やナッツ類、干し芋、ドライフルーツなど、素材を活かした食品に替えてみましょう。カカオの含有率70%以上の高カカオチョコレートもお勧めです。■「これならできる」と思えることを実行する 運動については、できれば毎日30分程度、息が上がるくらいからだを動かすのが理想です。
忙しくて時間が取れないという場合でも、通勤時に階段を使う、掃除や洗濯、炊事などの家事でからだをこまめに動かす、ちょっと先のスーパーまで歩く、といった日常の中でできることを意識しましょう。座りっぱなしの生活が一番いけません。欲張らず、ハードルを低く設定して、「これならできる」と思えることを実行するのがポイントです。
ステップ4:楽しみを見つけ、ステップアップを(続けるための工夫) ひとつ行動を決めたら、あれこれ考えず、まず始めてみましょう。そして、続ける工夫を取り入れることが大切です。
散歩を例にすると、ひたすら歩くだけでは飽きてしまうかもしれません。そんなときは、季節の花を探したり、好きな音楽を聴いたりして、散歩を楽しい時間に変えるアイデアを取り入れてみましょう。万歩計を使って歩数を目標にするのも効果的です。
毎日続けるのが難しい場合は、まず週1日から始め、慣れてきたら週に2日、3日と増やしながらステップアップしていく気持ちで取り組みましょう。そうして続けるうちにからだが自然と動くようになり、やがて日課として定着していきます。頑張らなくても、生活の一部として自動化され、新しい習慣が自然と身につくようになるのです。ステップ5 :あなたが笑顔になるために(よい習慣を継続するためのアイデア)
人は何か「ご褒美」があると、俄然やる気になるものです。面倒だと思う運動も、散歩仲間や友人と情報交換をする機会があれば、会う楽しみや話す楽しみが加わって、気持ちも前向きになります。
また、1回目で紹介した患者さんの例では、「記録」をつけることでインスリン治療を回避できたケースがありました。自分の手で書き留めることで状況を客観的に把握でき、どうすれば結果に結びつくかを実感できるようになります。
結果が見えると楽しくなり、楽しいから続けられる。こうして、新しい習慣そのものが「ご褒美」となる好循環が生まれます。自分にとって何が「ご褒美」になるのか、一度考えてみるとよいでしょう。
鈴木 孝子
最終更新:4/10(金) 8:00