「ラーメン一杯1000円超え」でも業績好調な一風堂と一蘭…高いと思わせないための「意外な工夫」
ラーメンチェーン店業界に今、劇的な変化が起きている。昨年11月、全国に約180店舗を展開する背脂醤油ラーメンチェーン『魁力屋(かいりきや)』が、首都圏で天下一品などのフランチャイズ店を運営するエムピーキッチンHDの買収を発表。
他にも『肉そばけいすけ』など17店舗を運営する『グランキュイジーヌ』を買収するなど、その勢いは目覚ましいものがある。
「ラーメンが1000円は高い」という時代は終わったのか
一方の天下一品は、危機を迎えている。
「今回の離脱は、いずれも都市型店舗だったので影響が大きい。昨年10月に新宿西口店を出店するなど、エムピーキッチンが抜けた穴をなんとか埋めようと奔走しています。
ファンを取り逃さないためにも機動力を重視した出店が必要ですが、そうなると割高な物件でも妥協せざるを得ず、コストが膨らむ。また、エムピーキッチンの業績が上向けば、他のフランチャイジーがそれに倣(なら)って離脱する可能性もあります」(飲食業界紙記者)
業界の雄が危機を迎え、新勢力がM&Aで勢いを増す。激動の時代を迎えたラーメン業界で、天下一品と同じく「一」のつく人気ラーメンチェーン『一風堂』、『一蘭』はどのように戦うのだろうか。
「国内に150店舗を構える一風堂は、約140ある海外店舗に軸足を移しています。高市総理の『円安ホクホク』発言に頷いているでしょうね」(同前)
かつてラーメン業界に存在した″1000円の壁″は完全に崩壊しており、一風堂の人気ナンバーワンメニュー『極 白丸元味』は1290円。臭みがなくクリーミーで、ラードのコクを感じられる優しい味わいの満足度は高いが、かなり強気な価格設定だ。客足は遠のいてもおかしくはないが……。
「国内では、駅ビルへの出店を強化しています。ラーメンに1290円を払うのは二の足を踏むかもしれませんが、客単価が2000円をゆうに超える牛タン屋や洋食屋、寿司屋などがひしめく駅ビルに出店されることで、相対的に一風堂が安く感じる。女性人気も高く、好業績をキープしています」(フードジャーナリストの長浜淳之介氏)
一風堂よりも価格が高いのが、一蘭だ。通常のラーメンに卵、チャーシュー、海苔、きくらげのトッピングをつけた『ICHIRAN5選』の値段はなんと1620円~。それでも、クリアなとんこつスープと辛味のある秘伝のたれのハーモニーを「味集中カウンター」で楽しむ体験に、ファンはカネを惜しまない。
「一蘭は外国人観光客に大人気。彼らからすれば、この価格でも安く感じるくらいでしょう。インバウンド客が訪れる大都市圏の繁華街にエリアを絞り、競合他社が避ける2階や地下1階にも出店するというのが一蘭のスタイル。
店舗数は天下一品、一風堂に劣りますが、経営効率は断トツです。一蘭のブランド力を活(い)かし、セカンドブランドを立ち上げるなど、次の一手を打てば、業績はさらに上がるはずです」(飲食業プロデューサーの須田光彦氏)
一蘭は商品開発も巧みで、店舗にお土産として売っている『一蘭ラーメン 博多細麺ストレート』は5食入りで2300円という高価格だが、売れ行きは好調。具なしで1個537円のカップ麺も、手軽に店の味が楽しめると好評だ。
「無理に出店せず、店舗での売り上げと物販という新たな収益源の両輪で効率よく稼いでいる。年商は天下一品を上回る433億円です。ラーメン店経営の新たな形を提示しています」(前出・長浜氏)
「こってり」へのこだわり、M&A攻勢、外貨獲得――。大激変中のラーメン業界の今後を制するのは、どこのチェーンか。答えはまだ丼の底に隠れている。
『FRIDAY』2026年3月6日号より