水中をぐうーっと進んでバシャーンと飛び立つ、潜水鳥ロボに鳥肌

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長谷川賢人 ( GIZMODO編集部 )
image: MIT Mechanical Engineering

映像を見て、二度見どころか三度見しました。水中を勢いよく潜っていたロボットが、バシャッと水面をぶち破って、そのまま羽ばたいて空へ進んでいく…

「もう、鳥じゃん!」

これぞ百聞は一見に如かず。まずは動画をどうぞ。以下、文章とスクリーンショットでも色々お伝えはしていきますが。

この300グラムに満たない飛行ロボットを作ったのは、MIT(マサチューセッツ工科大学)機械工学科のRaphael Zufferey助教授のチーム。スイスのローザンヌ工科大学との共同研究です。

彼らがお手本にしたのは、パフィンやアビ、ウミガラス、ミズナギドリといった「潜水鳥」たち。飛ぶのも泳ぐのも両方こなせる鳥って、実は世界に100種近くいるらしいんです。

(ちなみにパフィンのたくましい泳ぎと捕食シーン、以下の動画でどうぞ)

だったら、その体の使い方をまるごとロボットに持ってきちゃおう、というのが発想のきっかけでした。

足を使わずに飛び立つ

image: MIT Mechanical Engineering

このロボットには「FAAV」という、ちょっと硬い名前がついています。“flapping-wing aerial-aquatic vehicle”でFAAV。訳すと「羽ばたき式空中・水中両用機」といった感じでしょうか。

特徴の1つが、足をつかわずに水面から飛んでいくこと。鳥が水面から飛び立つとき、たいてい足で水をバシャバシャかいて助走をつけますよね。パフィンもカモも同じです。

image: MIT Mechanical Engineering

FAAVは、翼と尾ヒレみたいな尾翼だけで、水面をくぐり抜けて飛んでしまう。研究チーム自身、実験してみるまで「足って本当に要らないの?」と半信半疑だったそうで、いざやってみたらロボットには要らなかった、とのこと。

動物を参考にしてみたけれど、いつの間にか動物より身軽になっていた。そういうこともあるのですね。

小型の潜水鳥と同じテンポ感

image: MIT Mechanical Engineering

構造はシンプルで、胴体・翼2枚・尾翼のみ

胴体にはバッテリーと防水仕様の電気モーターが内蔵されていて、クランクシャフトを駆動することで、あらかじめ設定された周波数で翼を上下に動かします。

翼は、水をはじく疎水性ナノ粒子でコーティング。60cm・80cm・100cmの3サイズを作って比べたところ、いちばん安定して飛べたのが「80cmだった」と報告されています。

image: MIT Mechanical Engineering

水中では秒速およそ1メートル、空中では秒速およそ6メートルの推進力があります。羽ばたきの回数はどちらもだいたい1秒間に5回で、これは小型の潜水鳥(空中で毎秒約10回、水中で毎秒約4回)とも近いテンポ感。

尾も電動式で、角度を変えることでロボットを上昇・下降させます。水を突き破る瞬間は、機体を70度というかなり急な角度に傾けるのがコツらしく、これより寝かせると翼の先が水面に引っかかって、そのままコケてしまうのだとか。

ちなみに本物のパフィンは水中を秒速3メートルで泳ぐこともあるそうなので、俊敏さではまだ鳥の圧勝です。ロボットだってまだまだがんばれる余地があると。

海洋観測での実用化が進むかも!

image: MIT Mechanical Engineering

水陸両用ロボット自体はいろんな方式があり、そこまで目新しい話ではありません。Raphael Zuffereyさんも、元々はインペリアル・カレッジ・ロンドンで、化学反応によるガス噴射で水面から飛び出す水陸両用ロボットの研究室に所属し、博士号を取得した人です。

今回のポイントは、ガスという「燃料」をきっぱり捨てて、純粋に機械的な羽ばたきだけで離水を実現したこと。

水は空気よりだいたい1000倍密度が高くて、同じ翼の動かし方はまず通用しません。Raphael Zuffereyさん自身、研究をはじめた当初は「空気と水の両方である程度うまく働く翼なんて、正直あり得ないと思っていた」と振り返っているくらいです。

それを、翼のしなり方・大きさ・羽ばたきの頻度という3つの配合で実現した。派手さはないけれど、地味にとんでもないことでしょう。

image: MIT Mechanical Engineering

研究チームが見ているのは、海洋観測での実用化です。氷山のそば、港の設備、クジラの群れの上空など、船だと近づくのが危険な海域にも、この機体なら気軽に飛んでいけます。潜ってサンプルを採り、飛んで戻ってデータを届けて、また潜りに行く。

毎週じゃなくて、毎時間でも送り出せるようになるかもしれません

と、期待を語っています。

まだ研究室レベルの試作機ではありますが、水と空気という正反対の世界を、たった1組の翼で渡り歩く姿を見てしまうことにまず驚き。今後はさらに翼の設計を改良し、上下運動に加えて旋回も可能にするつもりだとか!

荒れた海域を泳ぎ抜けたり、強風の中を飛行したりするなど、乱流条件下でのロボットの性能試験も実施予定。まだ見ぬ海の可能性をひらくロボットかもしれませんね!

Source: MIT News, EPFL News, Science, NPR

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