アングル:イラン核開発、米軍爆撃でも知識は破壊できず 北朝鮮の二の舞懸念
[ウィーン/パリ 22日 ロイター] - トランプ米大統領は米軍の攻撃によりイランの主要核施設が「壊滅」したと表明したが、今回の攻撃でイランの核開発計画に遅れが生じたとしても、核兵器の保有に向けた動きを阻止することは困難との指摘が専門家かからでている。
イランの核開発は過去20年にわたって強化されており、物理的なインフラを破壊できても、同国が蓄積した知識やノウハウを消し去ることは難しいという。
米シンクタンク・軍備管理協会は、米軍の地下貫通弾(バンカーバスター)によるイラン攻撃後、「軍事攻撃だけでは、核に関するイランの広範な知識を破壊することはできない」と指摘。「今回の攻撃でイランの核開発は遅れるだろうが、その代わり、イランは核開発の仕切り直しを強く決意するだろう。核拡散防止条約(NPT)脱退を検討したり、核兵器の製造に踏み切るリスクもある」との見方を示した。
イスラエルはイランの核科学者を殺害したと主張しているが、複数の当局者は、短期的に核開発に遅れが生じることはあっても、イランの核に関する知識に深刻な打撃が及ぶとは考えにくいと指摘。
国際原子力機関(IAEA)の5月末の報告書によると、イランが保有する濃縮度60%の高濃縮ウランは、濃縮度をさらに高めれば、核爆弾9個を製造できる量に相当する。
イスラエルと米国の攻撃でイランの核施設がどのような影響を受けたかは現時点で不明。大きな問題の1つは、攻撃後にイランがどの程度の高濃縮ウランを保有しているかだ。
イラン高官筋は22日、フォルドウの核施設に保管されていた濃縮度60%のウランの大部分が米国の攻撃前に非公開の場所に搬送されたとロイターに述べた。
イランのガリババディ外務次官は先週末、国営テレビに対し、イランは核物質と核関連装置を守るため、対策を講じるが、IAEAには報告せず、今後は従来のようにIAEAと協力することはないと発言した。
<北朝鮮の二の舞>
IAEAは、イスラエルが9日前にイランへの攻撃開始して以降、イラン国内で査察を実施できていないが、イラン当局とは連絡を取り合っているという。
イランが核開発計画について今後どのような措置を講じるかも不明だ。
ある欧州の当局者は「最大のリスクは北朝鮮の二の舞になることだ。今回の攻撃を受け『体制を維持するには核兵器を保有するしかない』とイランが確信するというシナリオだ」と指摘。
北朝鮮は2003年にNPT脱退を表明。IAEAの査察官を追放し、核実験を実施している。
外交官などの間では、今回の攻撃を受け、イランが遠心分離機を使って極秘の濃縮施設を設置するのではないかとの懸念がすでに浮上している。濃縮施設は倉庫のような比較的小さく目立たない建物にも設置できるためだ。
ある西側当局者は「われわれが知らない濃縮施設が存在する可能性は十分にある。イランは大きな国だ」と指摘した。
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