コラム:対中交渉力弱まるトランプ氏、大半の関税無効判断で
[香港 23日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 自分が全能を「装っている」だけなら独裁者と互角に渡り合うのは難しい――。これはトランプ米大統領が今、肝に銘じるべき教訓になる。米連邦最高裁判所がトランプ政権による中国製品向け関税の大半を無効と判断した一方、習近平国家主席は過去1年に及ぶ米国との交渉で強硬姿勢を貫いたことで、一層抜け目なさを身につけたように見えるからだ。トランプ氏にはまだ、安価な中国製品に対する米消費者の愛着に待ったをかける取り組みを続ける手段が多く残されている。それでも米中双方は、トランプ氏が来月予定される習氏との首脳会談に向けて、立場が弱まったことを理解している。
シティグループのアナリストチームは、トランプ氏が21日に世界全体への「代替関税」の税率を15%にすると表明したことを考慮に入れても、最高裁判断を受けて中国製品に適用される実効関税率は約5ポイント下がって26%になると試算する。この数字は、トランプ氏が2期目就任後の2025年2月2日に最初の中国製品への関税を発表して以来で最も低い。トランプ氏にとってさらに悪いことに、関税率が一気に11%まで下がるのを食い止めた通商法122条に基づく代替関税の有効期間はわずか150日にとどまる。それは来月31日から4月2日にかけての米中首脳会談で、中国側が何か具体的な約束をするのを控える動機になるかもしれない。
Line chart of changes to U.S. tariffs on Chinese goods pegged to key events since January 2025トランプ氏にはなお幾つか打てる手はある。既に進められている中国による不公正な貿易慣行の調査で通商法301条を通じた制裁発動の可能性が高まり、一時的な関税措置の代わりとして効力を発揮するかもしれない。この点は、米国が国内製造業者に中国のレアアース(希土類)供給を確保する見返りに、中国の米国製半導体利用を認めるといった有利な取引をまとめようとする際に、わずかながら役に立つのではないか。
しかしホワイトハウスは、かつて中国だけでなく、米国の最大の地政学的ライバルである中国と取引する同盟国に対しても気まぐれに行使してきた「いつでも、どこでも」関税を発動するという脅しの力を失ってしまった。例えばカナダが中国との予備的な貿易協定を進めるなら、100%の全面的な関税を課すとした先月のトランプ氏の宣言も、今はほとんど効果がなくなった。中国に対抗するための厄介な貿易同盟に欧州連合(EU)や他の貿易相手国を無理やり引き入れようとする今後の試みや、ベトナムのような中国製品の再輸出拠点に対する突然の懲罰的関税引き上げも同様により難しくなりそうだ。
これに対して中国の有利性は引き続き揺るぎない以上、中国最高人民法院が米国製品に対する現在の関税撤回を言い渡す可能性は事実上ゼロと言える。中国の輸出業者は、米国の与野党から敵意を向けられたため、過去1年で他の先進国市場や新興国市場へ販路を巧みに転換させてきた。その結果、中国の25年の貿易黒字は1兆2000億ドルと過去最高を計上した。さらに10年余りにわたって国家権力集中の努力を続けてきた習氏は、足元で「鼻っ柱」を折られたトランプ氏に比べて圧倒的優位にある。もちろん、こうした構図は大いに期待されている首脳会談が中止されないことが前提なのは言うまでもない。
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(筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています)
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Hudson Lockett is the Asia Columnist for Reuters Breakingviews in Hong Kong. Before joining Reuters in 2024, Hudson spent seven years at the Financial Times, most recently serving as the paper’s Asia capital markets correspondent. Prior to this he was editor of China Economic Review in Shanghai. Hudson has degrees in Journalism and Japanese from The University of Texas. He speaks Chinese.