新聞に喝! 経済ジャーナリスト・石井孝明

新聞に喝! 経済ジャーナリスト・石井孝明

G20財務相・中央銀行総裁会議に出席し、会談した片山さつき財務相(右)とベセント米財務長官=8月31日、米アッシュビル(財務省提供、共同)

「リフレ政策はやめるべきだ」。9月1日の20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議後の記者会見で、ベセント米財務長官が日本について発言した。日本の新聞・メディアは、これを材料に高市早苗政権の経済政策批判を10月に至るまで続ける。

朝日新聞は「日本に『リフレ止めるべきだ』米財務長官、日銀総裁と会談 利上げ期待か」(9月3日付朝刊)、日本経済新聞は「『リフレ』日米摩擦の火種 日本売りの波及警戒 金利上昇抑制へ圧力」(同8日付朝刊)との記事で米国が日本を批判、干渉したとの記事を出した。他メディアも同じような高市批判の姿勢だった。

しかし、これらの発言をめぐる報道は、ゆがんでいる印象を受けた。ベセント長官は会見で前述の発言に加え「アベノミクスは成功した。その政策がもたらす結果を考えるべきだ」「今はタカイチノミクスの時代だ」などと続けた。全体を考えると、発言は日本への批判や干渉というより、評価と要請とみなすべきではなかっただろうか。

日本の新聞・メディアはこの問題で「市場関係者」の意見を集め、高市首相が日本経済への信頼を低下させ、円安、国債売り(金利上昇)の原因だと批判させていた。市場関係者とは金融市場で利益を得ようとする人たちで、当然自分に有利な情報を出す。金融市場は9月にこの発言をめぐる報道を材料に乱高下し、10月になってようやく落ち着いた。メディアを使用してもうけ、もしかしたらほくそ笑んだ取材元がいたかもしれない。

米国は自国の利益のために動く。朝日は「取材考記 米が利上げ圧力 インフレ対応の政策 今こそ」(10月7日付夕刊)で、金利の上昇基調に苦しむ米国側の事情を分析する記事を掲載した。しかし、大量の高市批判記事の中ではかすんでいる。メディアはいつも日本政府の米国追随姿勢を批判するのに、今回は米国の威を借りて高市政権を批判した矛盾する行動をしている。

経済報道で新聞・メディアが行うべきことは、政府当局者の行動や市場の動きの背景を客観的に深掘りした取材でつかみ、国民や関係者に伝えることであろう。批判ありきで同じ方向性の意見ばかり集めるのは、やはりゆがんだ報道ではないか。

「外国」と「権威」の口を借りて、他人を批判することは明治以来の日本で常にあった光景だ。令和になっても、新聞・メディアが経済報道の分野で古臭い手法を繰り返したことは残念である。

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石井孝明

いしい・たかあき 昭和46年、東京都生まれ。慶応大卒、時事通信記者などを経てフリーに。経済・環境情報サイト「with ENERGY」を主宰。著書に『埼玉クルド人問題』など。

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