PixelとiPhone、あなたにはどっちが合っている?——4ヶ月使ってわかった、機能でもデザインでもない選び方
こんなスマホの選び方、あったんだ。
「最新機能があるか?」「使いやすいか?」「デザインは気に入るか?」
スマホの選び方は人それぞれ。でも——
「スマホを造ったメーカーの"理念"」で選んだことってありますか?
これは普段は意識しない視点かもしれません。けれど、この"理念"の違いを知ると、そのスマホの目指している価値が見えてきます。そして、あなたに本当にフィットするスマホを、見つけられる手掛かりになるかもしれません。
iPhoneとPixelの、言語化しにくい体験の違い
iPhoneをずっと使って来た筆者は、今年から人生で初めてのAndroidスマホ、Pixel 9 Proを導入しています。
iPhoneにはない便利で驚く機能が満載で、感動しっぱなしの日々。ですが、使い始めた当初からずっと、不思議に思っていたことがありました。
それが、「なんとも言語化できない、iPhoneとの使用感の違い」。これは、単なる機能の違いではなく、優劣の話でもありません。スマホ体験の"感覚的な違い"です。
「何が違うんだろう?」
この違いを理解できれば、スマホ選びや使い方の質がぐっと高まる気がして、ずっと考えていました。
そして最近、やっとその答えが見えてきました。
その違いとは——
両スマホのコンセプト、つまり、企業がどんな理念でスマホを造っているのかに起因する違いだったのです。
2社の異なる理念:人々の生活を良くしたいAppleと、情報を整理したいGoogle
iPhoneを造っているAppleと、Pixelを造っているGoogle。それぞれの企業理念、知ってますか?
Appleは、自社の企業価値を説明する「Our Values」のページで、こう発信しています。
We believe that business, at its best, serves the public good, empowers people around the world, and binds us together as never before.
和訳:最良の形でのビジネスとは、公共の利益に貢献し、世界中の人々に力を与え、かつてないほど私たちを結びつけるものだと、私たちは信じています。
Apple CEO Tim Cook Investor Relations
一方、Googleは、自分たちのミッションを以下のように定義しています。
Google の使命は、世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにすることです
Appleは「ベストな製品を造って世界中を良くしたい」。Googleは「世界中の人がもっと情報を扱いやすくしたい」。まったく違う理念を掲げています。
この違いについては、Gizmodoの過去のYouTubeでも紹介されていますが、その思想がスマホというプロダクトにも色濃く反映されているように感じます。
結論から言うと、
- iPhoneは、とにかく直感的で、どんな人でも使いやすく、Appleが定義する「良い体験」をベースに作られたスマホ。
- Pixelは、いかに情報を早く、的確に、そして自分好みに取得できるかを第一に造られたスマホ。
であると感じています。
企業理念が反映された、それぞれの個性的なスマホ体験
一体どいういことでしょう。それらの理念に基づく個性は、それぞれのスマホ体験の端々に表れています。以下に、いくつかの顕著な例を紹介します。
起動だけでわかる、思想の違い
まず、スマホを起動させるところから、両者には明確な違いがあります。
iPhoneは、生体認証としてFace IDを使ってロックを解除します。一方、Pixelは顔認証に加えて指紋認証も搭載しています。
この時点で、開錠手段が多いPixelのほうが立ち上げでは有利です。
さらにPixelには、ロック画面をスキップするオプションまで用意されています。その結果、iPhoneよりもスムーズに、スマホの"情報"にアクセスできるように設計されています。
では、iPhoneがロック解錠の性能で劣っているかというと、そういうわけではありません。Appleは常に、"セキュリティとプライバシー"を重要視してきました。その上でiPhone X以降のiPhoneでは、セキュリティ面でより強力だと彼らが考える、Face IDのみを採用しています。
つまりAppleは、「素早く情報にアクセスできること」よりも、「安全に使えること」のほうが重要である、という考えに基づいて設計していると読み取れます。
ホーム画面を見れば、理念がわかる
スマホ体験の根幹となるホーム画面には、両者の違いがはっきりと表れています。
Image: AppleiPhoneのホーム画面は、とてもシンプルにデザインされています。極力余計な情報を排除し、直感的に操作できるよう設計されているのが特徴です。
Appleが、アプリ名など、画面上に表示される文字のフォントにも強いこだわりを持っているのは有名な話。フォント一つとっても、単に美しいだけでなく、製品体験全体を構成する重要な要素として捉えて、ユーザー体験を追求しています。
Image: Google一方Pixelのホーム画面は、利便性に優れていると感じます。Pixelの標準ランチャーで検索バーが画面下部に配置されているのは、情報へのアクセスを第一に考えた設計思想の表れでしょう。実際、検索のしやすさではiPhoneを凌ぎます。
さらに、Pixelのホーム画面には情報量も多く、表示する内容のカスタマイズ性も高い。右にスワイプすれば「Discover」が出てきて、ユーザーに合わせた記事や動画を自動で表示してくれます。
スマホ体験の中心であるホーム画面だからこそ、両者がユーザーに体験してほしいこと、提供したい価値が、詰まっているように感じます。
「これがベストだ!」のiPhoneと、「自分の好きにやっちゃって〜」のPixel
Pixel(Android)を使い始めて驚いたことは、そのカスタマイズ性の高さです。ホーム画面に並べられるアイコンの数や、キーボードのデザイン、バイブレーションのレベルなど、とにかく自分好みにカスタマイズできることが多いです。
その究極的な例が、ホーム画面を丸ごと作り替えられることでしょう。Androidスマホ(Googleが開発するOS、Android OSを搭載したスマホ)では、ホーム画面を、アプリアイコンが並んだお馴染みのものとはまったく異なる構造に変えられるのです。
ホーム画面を作り替えたPixelもう一度Googleの企業理念を思い出してみてください。Googleは、「人々が情報を扱いやすくなる状態をつくる」ことを目指しています。
情報をどう扱うか、どのような形が扱いやすいと感じるかは、ユーザーごとに違います。だからこそ、ユーザーが自分好みにスマホ体験を定義できることは、Googleの理念に照らしても理にかなっていると言えるでしょう。
一方のiPhoneでは、近年ではカスタマイズ性の幅が広がってきましたが、いまだにAndroidスマホには及びません。
しかしこれも、Appleの理念を見直すと納得がいきます。「最良の形でのビジネス」といっているように、良いかどうかはAppleが定義するという姿勢を打ち出しています。
つまり、Appleが導入しているインターフェイスや機能は、Apple自身が良いと考えるソリューションであり、そしてそれをApple自身が人々に使ってもらうことを望んでいるので、ユーザーが自由に書き換えられるものではないのです。
同じスマホでも、全然文化が違うことが、だんだん見えてきました。
AIの役割も、似ているようで実は違う
最後に、最近リリースされたばかりの、両者のAI機能についても見てみましょう。
Pixelでは、GoogleのAI「Gemini」が、iPhoneでは「Apple Intelligence」が使えるようになっています。ここでは、AI自体の性能の違いではなく、スマホにおけるAIの実装方法に違いがあるのです。
Photo: ヤマダユウス型Geminiは、とにかく調べ物をするのに便利です。
- 会話しながら情報を教えてくれる
- 画面に写っているものを質問できる
- Google系ツールとの連携により、メールから情報を抽出してくれる
- おすすめのスポットをGoogle Mapで示してくれる
など、効率的な情報収集をアシストする機能が豊富です。
Image: Apple一方、Appleが提供するAI機能、「Apple Intelligence」は、調べ物というよりも、具体的なアクションに有効な解決策を提供します。
たとえば、
- 文章生成をしてくれる
- メールの要約を一通ごとに表示してくれる
- 簡単に画像生成ができるアプリを提供している
などなど。
Geminiでもそういった機能は複数搭載されていますが、実際の実用性は置いておいて、ユーザー視点に立ち、わかりやすいインターフェイスで導入されているのは、iPhoneだと感じます。
情報の取得が得意なGeminiと、AIで人々の生活をどう便利にするかをUI / UXに落とし込んでいるApple Intelligenceとの違いです。
そのスマホが目指す体験に遡ると、自分にピッタリが見えてくる
ここまで書かせていただいたのは、あくまで私個人の考察です。本当に両企業が、上記で説明してきたような意図でスマホの機能を造っているかはわかりません。
ただ、両企業ともに紹介した理念を掲げていることは確かです。それを念頭に置くと、「なるほどだからこんなデザインになってるんだ」と腑に落ちる瞬間が確かにあるのです。
両者ともに、素晴らしいスマホ体験をもたらしています。そしてそれは、まったく違う体験です。
「使い慣れているから、次も同じスマホにしよう」という選び方は、確かに安心な選択でしょう。ただそのスマホが、どんな体験を目指して造られているのか、企業理念にまで遡って考えてみると、本当に自分に合ったスマホが見えてくるかもしれません。
とにかくシンプルに、わかりやすいスマホ体験を求めている人もいれば、完全に自分好みに作り変え、大量に溢れる情報を効率よく取得することに価値を感じる人もいるでしょう。
次にスマホを買い替えるとき、ぜひそのメーカーが「どんな世界を目指しているのか」にも注目してみてください。
スマホは、単なる便利アイテムではなく、毎日とあなたの価値観をつなぐ"パートナー"ですからね。