世界最恐の寺『懸空寺』に入ってみて知った「日本人に厳しすぎる事情」

気づいたら世界最恐の寺に行くことになっていた。そんな『刃牙』みたいなことあるのか。自分ですら疑ってしまう出だしだが、マジで行ってきたんだから仕方ない。

寺にたどり着くのに3日かかった。そんな『鉄拳チンミ』みたいなことあるのか。自分でも疑ってしまう文章だが、マジで中国山奥の秘境だったから仕方ない。山西省の岩山の断崖絶壁に建造されたその寺は、宙に浮いてるような様子から「天空寺院」と呼ばれている。こいつは修行が捗りそうだぜ……

ってマンガかよ!!

・リアルチャイナ

大同市中心部から南東へ約60km、中国五岳の1つ「北岳恒山」の麓にある金龍峡の谷間に位置する『懸空寺(けんくうじ)』。日本からの道のりを思い返すと、まず飛行機で北京入りして、新幹線で大同南駅に行き、駅がある中心部から車でさらに山を分け入った先となる。

個人的には中国の新幹線に乗るだけで冒険なんだけど、中でも車パートが印象的だった。鉄道も届かない山中に向かってひた走る道なので、車窓の景色のディープさが駅前とは格が違うのである。

崩れかけたレンガの建物とか、政府の目が届いてるのか不明なオーラを放つ謎の集落とか、『ドラゴンボール』の1話で悟空がブルマと出会う場所みたいな山道とか、リアルチャイナの息遣いを感じずにはいられなかった。

・日本人が寺に入るのはかなり厳しい

そんな車移動の時間は1時間ちょいだったので、アクセスだけなら飛行機移動1日、新幹線&車の2日で行けなくもない気がする。ただ、懸空寺へ入りたいなら、3日の道程で考えた方が良いだろう。なぜなら……

チケット購入は現地で午前から並ぶ必要があるから。チケットは、エリア一帯に入れる入場チケット(15元≒355円)と懸空寺に入れる登臨チケット(100元≒2370円)の2つがあって、中国人以外が予約購入することはできない。

したがって、日本人が懸空寺に入るには現地の窓口で販売される当日券を購入する必要があるのだが、登臨チケットは1日あたりの上限数が決まっている。チケット売り場オープンは7時30分からなんだけど、到着した8時40分頃には余裕で完売していた。

・午後の当日券販売の状況

なんなら、話を聞いた売り場のお姉さんからは「この時間で間に合うわけねえだろ」的なオーラさえ感じられたから日本人にはハードルが高すぎる。お姉さんによると、12時から午後のチケットが販売されるようだが、これも10時から並ばないと無理らしい。そんなわけで2時間並んでみたところ……

ヤバイことになった。

ホールくらい広大なチケット売り場が人で埋め尽くされて、もはや最後尾からはどの窓口に並んでるか分からないレベルの行列。コミケの壁サーかよ。

受付のお姉さんによると、当日券は朝と昼大体600枚ずつ販売とのことだったが、600枚即完なだけある人混みだ。なんなら中国人の女性同士が怒鳴り合いのケンカをしていたりする。なんでこの人たちネット予約しないんだよ。

・天空寺院の中

そのカオスに中国を感じつつも、入場チケットと登臨チケットの購入完了。ちなみに、懸空寺は恒山エリアに入場してからさらにバスに乗って8分くらい。このバスの乗車賃は20元(≒473円)となっている。

そんなこんなで片道3日。日本人が入るには厳しすぎる事情も越えて登臨した懸空寺は……

圧巻の景色だった。

迫ってくるように雄大な岩山。絶壁に突き出す細い廊下を歩くと、地上がはるか下に見える。見晴らしが良すぎて怖い! 別に高所恐怖症でもないはずだけど、それでも思わず壁に手を当ててしまう。1500年前の建物だからか、廊下も部屋も手すりが腰くらいまでしかなくて空中を歩いてるようなのだ。

・世界で最も危険な建築物

さすが天空寺院。空を飛ぶ夢でも見てるみたいな景色だ。たまに、空を飛んでる途中に飛び方を忘れて落ちる夢を見るけど、なんかふとした瞬間に落ちてしまいそうな雰囲気まで夢っぽいのである。

一線を越えた絶景にますます中国っぽさを感じたわけだが、私がその魅力と背中合わせの怖さを感じたのもさもありなん。実は懸空寺は、アメリカのTIME誌による「世界で最も危険な建築物トップ10」で4位に選出されている建築物でもある。

構造的な脆さや安全基準の欠如による危険性というより、物理的な傾き、不安定に見えるデザインやバランスなどの感覚値での「危うい魅力」を基準に選ばれているというこのランキング。寺で選ばれているのは懸空寺だけなので、世界最恐の寺と言っても過言ではないだろう。

・最恐の寺になった理由

なお、懸空寺がなぜこんな場所に建造されたかというと、1500年前の中国が戦乱や盗賊で物騒だったため、防犯も兼ねて地上を離れたという説もあるそうな。寺の前に地上が最恐なところがさすが反乱の国である。

その景色だけではなく歴史まで中国ならではのディープさが感じられた懸空寺。前述の通り、登臨チケットの購入は日本人にとってはハードルが高いけれど、寺に入った時の感動は想像を絶するものだった。

もし行く人がいれば絶対入場チケットだけじゃなく登臨チケットを購入すべきだと思うため、私が訪れた2026年夏のことを記事に残しておくことにする。天空寺院攻略の参考にしていただけると幸いだ。

・今回紹介した遺産の情報

店名 懸空寺 住所 中国山西省大同市渾源県 恒山金龍峡西側翠屏峰 当日券販売時間 7:30、12:00 定休日 無休

執筆:中澤星児 Photo:Rocketnews24.

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