「香港市民をバカにするな!」高層マンション大火災を尻目にやりたい放題、中国政府の足元でくすぶり始めた“民意の炎”(ダイヤモンド・オンライン)

 世界を震撼させたあの高層マンション大火災からわずか10日後、香港では立法会選挙が強行された。被災者支援に集まった市民の輪は一夜で消え、民主派の最後の砦だった政党は31年の歴史に幕を下ろした。火災を人災だとして責任を追及しようとした大学生の逮捕、廃棄された追悼の花束。そして、78歳のメディア王に下った判決は……。激動の12月、香港で何が起きていたのかを紹介したい。(フリーランスライター ふるまいよしこ) 【この記事の画像を見る】 ● 高層マンションの大火災からわずか10日後に選挙が行われた  12月7日、香港で最高議決機関である立法会の4年に1回の議員選挙の投票が行われた。あの、世界中の目を引いた高層マンション団地の大火災からわずか10日後のことだった。さすがに延焼が続いていた2日間と、その後3日間は各陣営に選挙活動を控えるよう通達がなされたものの、香港市民の心を打ち砕いたあの激しい火災の直後に、政府は「選挙決行に支障はない」と判断し、予定通り投票を行うことを決めた。  それは不思議な選挙戦だった。選挙活動の一時停止期間中には、団地内の8棟のうち7棟が火に包まれ、燃え続けた大火災を引き起こしたと考えられる要因や詳細が次第に明らかになった。  そして、マンションで進められていた改修工事担当施工会社や監督会社の責任があぶり出され、関係者が逮捕された。その一方で、独立オンラインメディアが、このマンションでは実は施工前の入札段階で不正疑惑が巻き起こっていたと伝え、当時の報道情報を掘り起こした。当時、不満を持つ住民がその疑惑を政府の監督局に訴えたにもかかわらず、管理者組合が選んだ施工業者によって工事が強行され、各戸が300万円相当の「費用」を強制的に払わされ、このような大事故へとつながってしまったというタイムラインも暴露された。

 市民の間ではそれは人災だとみなされ、さらに政府の監督が行き届いていなかったことへの非難が巻き起こった。 ● 署名活動を行った大学生が逮捕された  一方で見事だったのは、火災発生とほぼ同時に、1000人近くの市民たちが被災者支援に三々五々集まり、それぞれに衣類や布団、水や食べ物の無償供給や配送、分配など、できる限りのさまざまなボランティア活動が展開されたことだ。「訓練有素」(日頃の訓練あり)――あの市民の熱意に2019年デモを支援した人々の行動力を思い起こさなかった人はいなかったはずだ。  その中から、ある大学生が中心になり、被災地区の街頭に立って署名活動を始めた。「引き続き、被災した住民の支援を」「独立調査委員会を設立せよ」「新たに工事監督制度を見直せ」「当局の管理監督の過失と責任を全力で追及せよ」とする「四つの訴え」は、不安を抱えつつも見守っていた人たちも、「政治性もないし、大変理性的で納得できる内容」と評価した。一部、「『訴え』じゃなくて『要求』とすべきだ」と呟いているのを筆者は目にしたが、ここで「要求」とはせずに「訴え」という言葉にトーンダウンしたところに、発起人たちの苦渋の判断を感じた。  だが、当局はなんと、この「四つの訴え」署名活動を始めた大学生を、香港国家安全維持法(以下、国安法)違反で逮捕してしまった。  それとほぼ同時に、中国政府直属の駐香港国家安全公署(以下、国安公署)が、「反中乱港分子がこのチャンスを利用して撹乱を試みている。虚偽の情報を振り撒き、行政長官や特区政府への恨みを煽動している」とする声明を発表、「災害を利用して香港を混乱に陥れようとする者を厳しく取り締まるべきだ」と主張した。「反中乱港」とは「中国に反対し、香港を乱す」という意味で、2019年の香港デモ以降、中国政府が敵視する活動家らにつけられた、市民にとっては見慣れたレッテルだった。

ダイヤモンド・オンライン
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