夜道で「不審者」扱いされないために 男性にできる「一手間」
その行動、不審がられているかも――。
神戸市のマンション内で今年8月、住人の女性が刺殺されるという痛ましい事件が起きた。日常に潜む危険を改めて見つめ直す必要があると感じた女性も多いだろう。一方、男性側も、無用な不安や誤解を周囲に与えないよう、「一手間」かけて日ごろの所作を見直したほうがいいようだ。
夜道の歩き方やマンション内での振る舞いについて、専門家の見解を聞いた。
夜道の歩き方
「女性が見知らぬ人物から後ろをつけられるということは、日常的に結構な頻度で起きている。私が聞き取りをしてきた中でも、怖い思いをした女性はかなりの数に上ります」
Advertisementこう強調するのは、生活総合情報サイト「All About」の防犯ガイドで、安全生活アドバイザーとして活動する佐伯幸子さん。
頭を使った「知的護身術」を提唱し、女性向けの防犯講座で講師を務めるなどしている。
乗客でごった返す電車内。なるべく女性のそばに立たない、両手でつり革を握るなど、痴漢と間違われないための防衛策は多くの男性がとっているはずだ。
夜道では、どうだろうか。
例えば前を歩く女性がたまたま同じ方向で、意図せず歩調も合ってしまっていたとしたら……。
「意識できている人は、あえて靴音を立てて足早に追い越す工夫をしていますね。その際は周りに人けが多いうちに追い越したり、道の反対側に渡るなどして相手と距離をとって追い越したりすれば、お互い安心です」
男性だって怖い
女性が後ろから急に羽交い締めにされる、手で口を塞がれる、体を触られるといった被害は現実として、日々起きている。
佐伯さんは「怖いのは、女性に限った話ではありません。『考えすぎだろう』とは、決して思わないでほしい」と指摘する。
「例えば自分よりもかなり大柄な人物が同じ歩調で後ろを歩いてきたら、どうでしょうか。その人物は『早く家に帰ろう』と思っているだけかもしれませんが、不安や恐怖心を抱くのではないでしょうか」
エレベーターは「同乗しない」
集合住宅のエレベーターホールで偶然、女性と2人きりになってしまうケースもある。こんな時、不安感を与えないようにするにはどう振る舞ったらいいのだろう。
気をつけるべきは、立ち位置?
「原則として女性も男性も、エレベーターは他人と一緒に乗らないようにする。『お先にどうぞ』の意識が大切です」
とはいえ、それだと譲り合ってしまうこともあるのでは。「相手が不安がっているように感じるなら、『自分だけ先に行きますね』と男性がさっと乗り込むのは一つの手。あるいは、電話をするふりをしてその場をいったん離れる。小芝居なんて面倒くさいと思うかもしれないけれど、機転を利かせて相手に配慮すると考えてもらえたら」
大事なのは、想像力
お金をかけずとも、プラス1のアクションで安全度を上げられる――。
そんな思いから、佐伯さんはかねて「安全は 一手間かける 心がけ」と呼びかけてきた。
「自分が女性ならこの状況は怖いよね、と想像してほしい。男女平等社会といっても力では男性の方が圧倒します。だから恐怖を感じている。そこに想像力を働かせ、何かしらの工夫を心がけてほしいのです」
全く意図しないのに誤解が生じてしまい、トラブルに発展することもある。
電車内と同様、夜道やマンションで相手に想像力を働かせて一手間かけることが、女性に安心感を与えるだけでなく、男性側を守ることにもつながるかもしれない。【千脇康平】