これぞNothing流の最高級ヘッドホン。「Nothing Headphone (1) Pro」レビュー
個性的であること。それこそがNothingの真骨頂。
トランスペアレントで個性的なデザイン、独自のユーザーインターフェイス、欧米では定番の飲みゲー「スピン・ザ・ボトル(spin the bottle=瓶回しゲーム)」ができるドットマトリクスといった風変わりな機能などなど、新鮮で遊び心あるプロダクトを展開する英国テックメーカー、Nothing。
その奇抜なアイデアやデザインには、ワイヤレスイヤホンに搭載された音声録音機能などの実用的で興味深いアイデアがある一方で、充電ケースの「スーパーマイク」機能や、駄作AI生成アプリのような見栄えを気にしただけの無意味とも思える機能も見受けられます。
しかし、どれほどくだらなくて何の役に立たない機能が含まれていたとしても、Nothingのチャレンジ精神が退屈なスマートフォン市場において評価に値するものであることは間違いありません。
そして、このような実験的な試み以上に個人的に高く評価しているもの——それは、めちゃくちゃ音の良いワイヤレスヘッドホンです。
Nothing「Headphone (1) Pro」6万4,800円(税込)
長所
・3基のドライバーによるサウンドシステム
・かなりクールなデザイン性
・モードが選べる空間オーディオ
・FLAT EQボタンなどのクリエイター向け機能
短所
・ANCは平均的
・バッテリー駆動時間は30時間
・本体よりも重いハードシェルケース
マルチドライバーが機能している好例
Image: Raymond Wong / Gizmodo新型ハイエンドヘッドホン「Headphone (1) Pro」は、明らかに変わった見た目をしていますが、私が心底満足しているのはデザイン性ではなく、そのすばらしい音質です。
Headphone (1) Proは、Nothing初のオーバーイヤー型ヘッドホン「Headphone (1)」が、40mmダイナミックドライバー1基だったのに対し、3基のドライバーシステムを採用しています。
日常使いのヘッドホンならドライバー1基でも音の鳴りは十分ですが、オーディオ製品においてはドライバーが多いほど音質が向上するというのが一般的。(1) Proもまた、その好例と言えるでしょう。
Headphone (1) Proでは、各周波数帯域に専用のドライバーを搭載。低音域、中音域とボーカルの明瞭度、そして高音域とそれ以上の周波数帯域に、それぞれ3基のドライバーを割り当てました。
これは独立型スピーカーからヒントを得たアプローチです。さらにNothingが提供するソフトウェアと組み合わせることで、非常に豊かで繊細なサウンドを実現するヘッドホンとなっています。
Image: Raymond Wong / Gizmodo私がいつもレビューの際に使うテスト曲を聴いてみると、実際に豊かな質感とクリアさが感じられました。リズムギターの明るさは耳に心地よく、ステレオ分離もすばらしい。箱から出しただけの未カスタム状態でも、低音がかなり強調されているように感じられます。
低音専用ドライバーのおかげで低音が強調されつつも、クリアでバランスの取れたサウンド。
これはダフト・パンクの『Da Funk』のようにベースが効いたダンスミュージックでも同様。パンチの効いた重厚な低音がミックス全体を圧倒することなく、しっかりと存在感を放っています。
Headphone (1) Proを使うなら、パーソナライズ可能なEQはぜひ活用したい機能。「Nothing Xアプリ」で聴力テストを行うと、両耳の聴力に基づいてリスニング体験がさらに最適化されました。
私の聴力特性は高音域のブーストが必要なのですが、この製品ではまさにその通りに調整してくれたのです。
Image: Raymond Wong / GizmodoさらにEQを手動で調整したい人向けに、搭載された特定のドライバーを微調整できる高度なEQ機能も用意されています。
この機能を使いこなすには音響に関する知識が必要になりますが、より高度な選択肢があるのはいいことですね。
空間サウンドモードも利用できます。なかにはロンドンの有名な音楽スタジオ「Metropolis Studios」と共同開発した「Studio B」と呼ばれるモードもあり、まるでコントロールボードで聴いているかのようなサウンドを実現。
Image: Raymond Wong / Gizmodo多くの場合、空間サウンドモードにはEQを台無しにしてしまう傾向があるため、個人的にはあまり好みではないのですが、Nothingはこの機能をうまく活かしている感があります。
「Studio B」モードを標準の空間オーディオモードと比べると、奥行きが増し、サウンドステージに質感が増していると思います。その他の「クラブ」モードや「コンサートホール」モードは少し不自然に聞こえましたが、あくまでも私の好みの問題です。
玄人向けな「FLATボタン」を新搭載
Image: Raymond Wong / Gizmodo冒頭で述べたように、常に新しいことに挑戦しているNothing。今回のHeadphone (1) Proにも新しいギミックが追加されています。それが、左イヤーカップの内側にある「FLAT」と書かれた小さなスイッチです。
フラットボタンは、本格的に音楽制作やオーディオミキシングを行う人向けのプロ向け機能です。このスイッチを入れると、再生中の音源から処理や、人工的な色付けが取り除かれ、ミックスが比較的加工されていない状態でどのように聞こえるかを把握できます。
私はプロのオーディオエンジニアではありませんが、趣味で音楽をつくっています。いくつかの曲で試してみたところ、フラットボタンはちゃんと機能しているように聞こえました。
そして、ミックスの中で各要素がどこに配置されているかを把握しやすくなりました。例えば、作業中のトラックや編集中のビデオのレベルを素早く確認したい場合などに便利だと思います。
この機能はクリエイター向けのニッチな機能なので、一般的にはそれほど魅力的に映らないかもしれません。たとえその機能に興味を持ったとしても、一般のリスナーがこのヘッドホンを購入する理由にはならなそうですが、それはそれで構わないと思います。
Image: Raymond Wong / Gizmodoフラットボタンのいいところは、必要なければ無視して、アクティブノイズキャンセリング(ANC)などのより一般的な機能を使うことができるという点です。
Nothingによると、Headphone (1) ProではANCがわずかに改善され、ANCの度合いが2dB上昇しているとのこと。
でも正直に言うと、改善されたとてこの差はわずかなものです。
地下鉄やニューヨークの賑やかな歩道でHeadphone (1) Proを試してみましたが、ANCに関してはHeadphone (1) とほぼ同じようなものでした。電車の騒音や人の話し声は依然としてかなり聞こえましたが、屋外環境では多少改善されたように感じました。
競合製品であるソニーの「WH-1000XM6」や、Boseの「QuietComfort Ultra Headphones(第2世代)」と比べると、Headphone (1) ProのANCにそれほどの競争力はないと思います。しかし、Nothingはそれ以外のあらゆる点において、比類なき魅力を放っています。
相変わらず秀逸なデザイン
Image: Raymond Wong / Gizmodo初めてHeadphone (1) Proのリーク画像を見たとき、Headphone (1) と同じくらいクールなデザインになるのか半信半疑でしたが、実際に使ってみると、同じくらいどころか、それ以上にクールでした。
イヤーカップの外側にはガラス素材が採用されており、内部のドライバーや音響チャンバーが見えるNothingらしいトランスペアレントなデザインになっています。
アームなどの壊れやすいパーツに、チタン合金といった軽量で耐久性のある高級素材が使われているのも高評価です。
みんなに振り向かれるようなワイヤレスヘッドホンをお探しなら、Headphone (1) Proはいい選択肢でしょう。
数日間のレビュー中にも、見知らぬ人から何度か声をかけられました。
Image: Raymond Wong / Gizmodoクッションを部分的に柔らかく、厚みのあるものにするなど、装着感も少し改良したようですが、実際に装着してみて特別感動したことはありませんでした。とはいえ、装着感に不満は一切ありません。
ボリュームやノイズモードの調整に使うピル型ローラーや、再生曲スキップ用のパドルなど、Headphone (1) で気に入っていた個性的なボタンたちも健在。
音声アシスタントを起動したり、音源を切り替えたりするための「カスタム」ボタン、3.5mmジャック用のポート、そして電源のオン/オフスイッチも備えています。個人的にはさまざまな機能も兼ねたボタンよりも、電源専用のスイッチのほうが操作しやすいので好みです。Nothingさん、本当にありがとう!
見た目の話が出たので、付属するハードシェルケースについても触れておきましょう。AirPods Maxの“ブラジャー型ケース”に少し似ていますね。
Image: Raymond Wong / Gizmodoこのケースに賛否があることは承知していますし、その理由も理解できます。重さは384グラムもあり、ワイヤレスヘッドホン本体よりも重いです。しかも、Headphone (1) Pro全体を覆うわけではなく、ヘッドバンド部分が露出したままになってしまいます。
Image: Raymond Wong / Gizmodoとはいえ、個人的にはこのデザインはアリ。イヤーカップの一部がガラス製であることを考えると、Nothingがソフトケースではなくハードケースを選んだ理由も納得です。
ケースの重さは、実際に使ってみると特に気になりませんでした。
ワイヤレスヘッドホンは普段バッグに入れて持ち歩いているので、384グラムという重さ自体はそれほど大きな問題ではありません。
ケースが重いと思う方は、ケースを使わずに首にかけて持ち歩くのがベターでしょう。
バッテリーは改良されなかったけど
Headphone (1) から改良が見られなかった点がありました。それはバッテリー駆動時間です。Headphone (1) はフル充電時からANCをオンにした状態で35時間駆動しますが、Headphone (1) Proは30時間と短くなってしまいました。
バッテリー駆動時間が短くなった理由は、ドライバーが1基ではなく3基に増えた新しいサウンドシステムにあると思われます。Headphone (1) より(1) Proのほうが2万5,000円も高いので、スペック上ではやや残念ですが、個人的にこのトレードオフは十分な価値に値すると思います。
実際に、ANCをオンにした状態で音量50%で1時間ほど音楽を聴いてみましたが、Nothing Xはバッテリー残量を10%刻みでしか表示されないため、テスト終了時にもバッテリー残量は100%のままでした。
昔ながらの良質なオーディオ
Headphone (1) Proを聴いてみると、Nothingが基本性能を非常に重視していることがよくわかります。
トリプルドライバーシステムはスペック上は分かりにくいかもしれませんが、実際に聴いてみると違いがはっきりとわかります。何度も言いたい、この音質はめちゃくちゃすばらしい!
アクティブノイズキャンセリング機能はBoseやソニーに対抗できるほどではないものの、デザインやギミックという点において、Nothingは他の競合ブランドを圧倒しています。税込み6万4,800円という価格に見合う価値が感じられます。
空間オーディオやフラットなイコライザーは一部の人にとっては嬉しい機能ですが、ほとんどの人にとっては劇的な変化をもたらすものではないでしょう。
いつも考えさせられるような何かを提供してくれるNothingにはいつも感謝していますが、Headphone (1) Proで本当にありがたいと思ったのはその優れた音質、その一言に尽きます。