【日本市況】債券と円が急伸、中東情勢緊迫化でリスク回避-株下落

13日の日本市場では株式が大幅下落し、日経平均株価の下げ幅は一時600円を超えた。イスラエルがイランを空爆し、中東情勢の緊迫化からリスク回避の動きが強まった。逃避需要で債券は急伸(利回りは低下)。一方、円は買い先行後、対ドルで下落に転じている。

  イスラエルがイランの核・弾道ミサイル関連プログラムへの空爆を行った。イラン軍のシェカルチ報道官は「シオニスト政権と米国は厳しい打撃を受けるだろう」と述べ、最高指導者ハネメイ師もイスラエルが間違いなく報復を受けると明言。一方、ルビオ米国務長官は米国の攻撃への関与を否定した。

備考:イスラエルがイラン核施設空爆、革命防衛隊司令官も殺害-反撃を警戒

  中東での戦争拡大懸念からアジア時間の取引で原油価格は急騰し、金価格も上昇。対照的にアジア株や欧州の株価指数先物は下落し、米長期金利は急低下した。

  T&Dアセットマネジメントの浪岡宏チーフ・ストラテジスト兼ファンドマネジャーは、事態を「かなり深刻に受け止めている」と言う。中東緊迫化による原油価格の高騰で米国が利下げしにくくなり、スタグフレーションに陥れば、日本もネガティブなショックを受けると分析。「リスクオフ的な動きの中で株価が下落していくと、企業業績にもネガティブに効く」と述べた。

国内株式・債券・為替相場の動き-午後2時5分時点
  • 東証株価指数(TOPIX)は前日比1.1%安の2753.56
  • 日経平均株価は1.2%安の3万7728円29銭
  • 長期国債先物9月物は朝方に前日比86銭高の139円68銭まで上昇、その後上げ幅を縮小
  • 新発10年債利回りは5.5ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低い1.40%
  • 円は対ドルでニューヨーク終値比0.1%安の143円59銭
    • 朝方に142円80銭と5日以来の水準に上昇した後、143円76銭まで下落

株式

  東京株式相場は大幅安。イスラエルによるイラン攻撃や為替相場が一時円高に振れたことを受けて、景気や企業業績への懸念から売りが優勢となった。

  トランプ米大統領が自動車関税を引き上げる可能性を示唆したことも嫌気され、輸送用機器や電機のほか、化学や非鉄金属、繊維など素材株が下落。金利低下もマイナス要因となり、銀行や保険など金融株も安い。

  半面、原油高メリットを享受する鉱業や石油・石炭製品株は上昇。三菱重工業やIHIなど防衛関連の一角、航路運賃上昇の思惑から海運株も高い。

関連記事:海運株上昇、イスラエルがイラン軍事施設空爆-運賃上昇の思惑広がる

  三井住友DSアセットマネジメントの市川雅浩チーフマーケットストラテジストは「地政学リスクによる原油高はインフレ圧力や政策不透明感を高める上、企業にとって原材料コストの上昇につながりかねない」と述べた。

  りそなホールディングスの武居大暉ストラテジストは、日本株が高値圏にあったため、地政学リスクの高まりが利益確定売りを誘発するような動きになったと指摘。TOPIXコア30指数の下げに言及し、海外の大口投資家が利益確定をしている可能性があるとの見方を示す。

債券

  債券相場は上昇。米国で30年債入札の好調やインフレ鈍化を受け長期金利が低下した流れに加え、地政学リスクの高まりで買いが膨らんだ。

関連記事:米30年債入札、需要は堅調-超長期債巡る懸念和らぐ

関連記事:米PPI、5月は前月比0.1%上昇-前年比では2.6%上昇

  SMBC日興証券の奥村任シニア金利ストラテジストは、イスラエルのイラク空爆を受けた日本国債買いは「少し過剰な反応に見える」と分析。地政学リスクの高まりで初期反応として債券が買われても、「原油価格上昇などを受けて巻き戻されることがよくあり、金利低下がトレンドだとは見ない方が良い」と話した。

  ニッセイアセットマネジメント戦略運用部の三浦英一郎専門部長も、イスラエル・イランの紛争はこれまでもあった上、米国が抑え役に回る可能性が高く、「地政学リスクは長続きせず、債券相場の上昇は行き過ぎ」と見ている。  

為替

  東京外国為替市場の円相場は1ドル=142円台後半まで上昇した後、143円台後半に下落している。リスク回避の円買いが先行したが、徐々にドル買い優勢に転じた。 

  マネックス証券のトレーダー、相馬勉氏は「最初はリスクオフといえば円買いという反応をしたが、本来の逃避先は金とドルだ」と指摘。欧州は中東に地理的に近く、選挙を控える日本も世界が動いているときに政権がどうなるか分からず、「よくよく考えればドルしか買う通貨はない」と述べた。

  みずほ銀行国際為替部の加藤倫義ディレクターも「米中対立を受けた台湾有事への懸念もあり、リスク回避の円買いは以前ほど強くない」と分析。投資家は短期的にリスクオフでポジションを張ってみたが、「新しいニュースが入らない限り、週末を控えポジションを中立にして帰りたいのではないか」と指摘した。

  来週は日米で金融政策の発表が予定されている。ブルームバーグ・ニュースは、日本銀行はインフレ動向は予想よりやや強めに推移しているとみており、世界的な貿易摩擦が緩和した場合、利上げの議論のきっかけとなる可能性があると報じた。みずほ銀の加藤氏は「為替市場の反応は限定的だった」と述べた。

関連記事:日銀はインフレが想定よりやや強めと認識、価格転嫁の継続で-関係者

関連記事: