“千日手シリーズ”制し3連覇 藤井聡太名人が将棋界で果たす役割

第83期名人戦の対局を振り返り、笑顔を見せる藤井聡太名人=東京都渋谷区で2025年6月22日、西夏生撮影

 第83期名人戦七番勝負(毎日新聞社、朝日新聞社主催)を4勝1敗で終え、3連覇を果たした藤井聡太名人(22)。

 挑戦者の永瀬拓矢九段(32)と戦った全5局のうち2局が千日手となり、それ以外にも千日手模様の局面が続く、例のない“千日手シリーズ”をどう受け止めていたのだろう。

 単独インタビューに応じた藤井名人は、最も興味がある戦法や得意とする詰め将棋、羽生善治前会長から新体制になったばかりの日本将棋連盟の今後についても語った。【丸山進】

後手番善戦、先手番は有利生かせず

 ――今期の名人戦を振り返って。

 藤井名人 永瀬九段と持ち時間9時間で指すのは初めてで、充実した時間だった。第4局は逆転負け、第5局は逆転勝ちになったが、どちらも千日手指し直し。番勝負の後半に行くにつれて勝負という側面が出てくるのを、これまでのタイトル戦よりも強く感じた。

 私自身は千日手がそれほど多くはないが、今シリーズは千日手含みの局面が多く、千日手は意外と起こりやすいんだなと感じた。最近は後手番の待機戦術や千日手含みにした作戦が増えてきているので、以前より千日手が起こりやすくなっている。

 千日手が絡む局面で形勢をどう判断し、打開するのか、千日手を選ぶのか。判断するのはかなり難しい。判断の精度を含めて今後、考えていかないといけない。

 ――千日手が多かったのは相手が永瀬九段だったからか。

 ◆それも一つの要因。永瀬九段とは長い間VS(1対1の練習対局)をしている。序盤について、ある程度共通認識がある。それを踏まえて作戦を立てるので、膠着(こうちゃく)状態になりやすい。

 後手番の待機戦術は今後も主要な戦術の一つになる。角換わり腰掛け銀は千日手含みの序盤が多く、お互い少しずつ形を変えながら相手の形が崩れるのを待つ戦い方が多い。

 ――持ち時間9時間だと千日手になりやすいか。

 ◆当然、より慎重になるところはあるし、リスク…

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