中ロの人工衛星、英独は「もはや無視できない」 どのような脅威なのか

宇宙関連の会議でロシアの宇宙活動の脅威を警告するピストリウス独国防相=9月25日/John Macdougall/AFP/Getty Images

ロンドン(CNN) ロシアと中国が人工衛星で欧米諸国の衛星を偵察する行為は、これまでたびたび観測されてきた。ドイツと英国は最近、中ロ両国の衛星からの脅威が拡大していると警告。ロシアの衛星が自国の衛星につきまとい、電波妨害などを繰り返していると強調した。

ピストリウス独国防相は9月、首都ベルリンで開催された宇宙企業との会議で「ロシアの行為、特に宇宙空間における行為はわれわれに重大な脅威を及ぼす。この脅威はもはや無視できない」と訴えた。

米シンクタンク、ランド研究所によれば、通信衛星が狙われると衛星画像や電気通信、衛星ブロードバンドが影響を受け、衛星測位システムが妨害されると民間航空や軍事作戦にも影響が及ぶ可能性がある。

宇宙空間における衛星の脅威について、当局者や専門家らはどう語っているのだろうか。

ロシアは何をしてきたか

ピストリウス氏によると、最近、ロシアの偵察衛星2機が米インテルサットの衛星2機を追跡しているのが見つかった。インテルサットの衛星はドイツや同盟諸国の軍、欧米各国の政府、企業にサービスを提供している。

同氏は「ロシアと中国は近年、宇宙戦力を急速に拡大している。他国の衛星に対して電波妨害やセンサーの無効化、不正操作などの攻撃を仕掛けたり、物理的に破壊したりすることができる」と述べ、宇宙安全保障の予算を数十億ドル分増額すると発表した。

英宇宙司令部を率いるポール・テッドマン少将も先月、英BBCとのインタビューで同様に警鐘を鳴らし、ロシアの衛星が「週単位」で英国の宇宙アセットにつきまとったり、電波を妨害したりしていると述べた。

これとは別に、北大西洋条約機構(NATO)のルッテ事務総長は今年、ロシアが宇宙における核兵器の開発を計画していると改めて警告した。

ロシアのプーチン大統領は、宇宙に核兵器を配備するつもりはないと公言してきた。しかしロシアは昨年、宇宙空間に核兵器を配備しないよう求める国連安全保障理事会の決議案に拒否権を発動。中国は採決を棄権した。

衛星の偵察活動はどう検知されるのか

宇宙軍が他国の衛星を検知し、位置を特定するのは比較的簡単だが、その衛星の能力や目的を判断することは難しい。

米ワシントンのシンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)の専門家、クレイトン・スウォープ氏によると、当局はロシアの衛星が宇宙空間のどこにあって近くに何があるかを見たり、過去に似たような衛星が何をしたかというパターンを参照したりして、衛星の狙いを推定する。

例えば、欧州の通信衛星の近くに長時間とどまっている場合は偵察が目的と考えられる。

専門家らによると、インテルサットの衛星に接近したロシアの衛星は、信号の傍受を図っていたとみられる。

一方スウォープ氏がCNNに語ったところによると、低軌道では過去に、ロシアの衛星が「兵器のように見える物」から「飛しょう体を発射」する実験を行ったこともある。

「兵器という意味での脅威か、情報収集の脅威かを区別するのは非常に難しい」と、同氏は強調する。手探りで見当をつけるしかないケースもあるという。

ロシアの脅威はいつから存在したか

海洋大気庁(NOAA)の統合極軌道衛星システム2(JPSS-2)の低軌道飛行試験に向けた準備が進められる様子=2022年10月5日、カリフォルニア州バンデンバーグ宇宙軍基地(VSFB)/Aaron M. Taubman/USSF 30th Space Wing/NASA

警鐘を鳴らしたのは独英が初めてではない。米国とフランスは10年以上前、自国の民間衛星を含むアセットをロシアの衛星が偵察し、情報を収集しているようだと最初に警告を発した。

米国防総省は2015年、ロシア軍の衛星がインテルサットの衛星2機に接近していたため、「不審」とされたこの挙動についてロシア側に連絡したと述べた。

独シンクタンク、国際安全保障研究所(SWP)で安全保障政策を研究するユリアナ・ズース氏によると、17年には、フランスとイタリアが共同で打ち上げた偵察衛星にロシアの衛星がさっそく接近し、様子をうかがおうとした。

同氏は最近の偵察や干渉の報道について、CNNにこう語った。「このような挙動がまったく初めてというわけではないが、ウクライナの文脈、そしてロシアがNATOの領空を繰り返し侵犯しているという文脈でとらえるべきだと考える」

関連記事: