〈EIGHT-JAM「中森明菜」きょう出演〉中森明菜「AKINA NOTE」ができるまで ジャズ・ミュージシャンたちとの「マジック」の心地よさ

「AKINA NOTE」を支えるミュージシャンら。(後列左→前列右)熊谷ヤスマサ、松下真也、吉本章紘、小松伸之、佐藤えりか、中村恵介(撮影:佐藤創起) この記事の写真をすべて見る

 12日放送の「EIGHT-JAM」(テレビ朝日系・よる11時15分)は、中森明菜を特集する。音楽のプロからの質問を明菜本人にインタビューが実現! 中森明菜にまつわる記事を再配信する(この記事は「AERA DIGITAL」に2026年6月30日に掲載した記事の再配信です。年齢や肩書などは当時のもの)。

【写真】音に身を任せるように歌う中森明菜さん

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 中森明菜さんが歌うJAZZは、どのようにして生まれたのか。「AKINA NOTE」制作に参加したミュージシャンらが手応えを語った。AERA 2026年6月29日号より。

「ジャズって生々しい方がかっこいい。僕はそう思ってるので、その生々しさが明菜さんの歌も含めて、すごく伝わる作品だなと思います」

 中森明菜が自身の代表曲をジャズ・アレンジで歌ったアルバム「AKINA NOTE」について、トランペッターの中村恵介は語る。中村は現代日本ジャズ・シーンにおける俊英の一人であり、「AKINA NOTE」では多くの曲をアレンジ。2024年からファンクラブ限定で行われてきたこれまでのジャズ・ライブでも中心的な役割を担ってきた。

 始まりは、中森にとって思い入れ深い名曲「北ウイング」だった。23年11月に発売された作曲家・林哲司のトリビュート・アルバム「50th Anniversary Special A Tribute of Hayashi Tetsuji - Saudade -」に、新たなアレンジで吹き込んだ「北ウイング -CLASSIC-」が収録された。実はそのとき、別バージョンで「北ウイング -JAZZ-」も制作されていたのだ。結果的に採用されたのはクラシック・バージョンだったが、ジャズ・バージョンがあまりに彼女の声と合っていたことで、この路線を活かすアイデアが生まれたという。

「北ウイング」を起点に、24年には「TATTOO -JAZZ-」「BLONDE -JAZZ-」「ジプシー・クイーン -JAZZ-」「スローモーション -JAZZ-」「Fin -JAZZ-」の6曲を発表。25年から今年初めには「飾りじゃないのよ涙は -JAZZ-」など7曲を順次配信。そして今回、「サザン・ウインド -JAZZ-」「ミ・アモーレ[Meu amor e´...] -JAZZ-」「SAND BEIGE -砂漠へ- -JAZZ-」「SOLITUDE -JAZZ-」「TANGO NOIR -JAZZ-」の5曲が新たに追加され、全18曲に及ぶ中森明菜のジャズ・ワールドが「AKINA NOTE」としてまとまった。

 この約3年ほど、中村はバンマスとして見てきた。

「プロデューサーからリストが送られてきた当初の4曲ではカラーが被らないよう、スイング、タンゴ、ボサノバとかリズムで考えて、僕の信頼するミュージシャンたちにそれぞれ得意分野でのアレンジを頼みました。とはいえ、明菜さんがどう歌うのかは、あくまで想像の中でした」

 1977年生まれの中村にとって、80年代は自身の思春期とはギリギリ重なっていない。だが、だからこそ大胆なイマジネーションでジャズを歌う彼女をアレンジできたのかもしれない。


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撮影:彦坂栄治/撮影協力:COTTON CLUB/写真提供:HZ VILLAGE Inc.

 プロジェクトに関わったミュージシャンたちは、思い入れある楽曲についてこう話す。

「『飾りじゃないのよ涙は -JAZZ-』は、原曲をよく知ってるので、あえて派手じゃない方向をイメージしました。歌謡曲とは違う編成で、音の余白みたいなものをうまく聴かせられたらと意識して」(吉本章紘/サックス&フルート)

「私はもともと『北ウイング-CLASSIC-』をアレンジしていたんです。その後のアレンジも、フォービートやスイング感といった、いわゆるジャズっぽさではないセンスでやってます。当初、ある曲でシャーデーみたいなアーバンなスタイルにしてほしいというリクエストがあって、私もすごく好きだから、『明菜さんも好きなんだ!』とうれしく思いました。そのアイデアは採用されなかったんですけど、『Fin -JAZZ-』でも、スティーリー・ダンの『エイジャ』を意識したパートを作ったりしました」(佐藤えりか/ベース、バイオリン)

「僕が担当した曲では、90年代のブラック・ミュージックのテイストや近年のジャズの雰囲気を意識してます。ポップスでは使わないようなコード進行が入っている。特に自信があるのは『SAND BEIGE -砂漠へ- -JAZZ-』です。あの曲にはアラブの要素がある。僕はジャズ・ミュージシャンとして一番アラブ音楽を聴いてる自信があるんで、そのすべてを注ぎました!」(熊谷ヤスマサ/ピアノ)

「アレンジは担当していませんが、明菜さんの歌の乗り方がすごく印象的です。今回の明菜さんはしっかり合わせて歌う感じではなく、流れるよう。ジャズは本来リズムにシビアな音楽ですけど、明菜さんは大きくふわっと乗る。それが逆にかっこいい」(小松伸之/ドラムス)

「僕らは明菜さんに合わせるというより、こういうリズムで歌ってみてもらいたいという理想でアレンジしました。録音やライブを重ねるごとに、明菜さんの歌い方の反応が徐々にわかってきた。だから、今回レコーディングした5曲はすごくスムーズでした。今回、『サザン・ウインド -JAZZ-』は明菜さんの歌が割と高い声で入っていたので、すごくびっくりしました。かわいい!と思って」(中村)

一体感生まれる瞬間

 このプロジェクトの全曲でレコーディングとミキシングを担当したエンジニア、松下真也は、「AKINA NOTE」は「ポップスとは組み立て方が違う」と語る。

「小松さんのドラムだけで始まる『スローモーション -JAZZ-』のイントロもすごくシンプル。オリジナルの歌謡曲アレンジとは対極です。でも、ひとつひとつの楽器の音にしっかり厚みがあって、そこにふくよかな声がふっと乗った時に、明菜さんのジャズとして完成するんです。全員が明菜さんの歌に音楽的リスペクトを持ってクリエイティブなサウンドにしているし、明菜さん本人もそれは一番感じてくれているはず」(松下)


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撮影:彦坂栄治/撮影協力:COTTON CLUB/写真提供:HZ VILLAGE Inc.

 東京・丸の内のCOTTON CLUBでは、24年以来毎年、ファンクラブ限定で中森明菜のジャズ・ライブ〈ALDEA Bar at Tokyo〉を開催している。ジャズ・ミュージシャンたちとの新しいチャレンジを、ファンとの密接な距離感で表現する。そこで生まれる音楽的なコミュニケーションが、とても刺激的だ。

「私は明菜さんの真後ろで演奏してるので、明菜さんが取っているリズムや、体の動きがよく見えるんです。『あ、こう歌いたかったんだ』ってわかる瞬間があるし、それを次のライブですぐ反映できる。今回の『TANGO NOIR -JAZZ-』は南米の要素を入れたいと思ってアレンジしたんですけど、リハの途中で明菜さんから『もっとタンゴっぽくしていこう』という反応があり、本番の演奏はレコーディング版とは結構変わりました」(佐藤)

「ジャズのバンドは、歌い手とバックバンドという関係ではなくて、全員でアンサンブルを作る。気持ちやテンションが作用するから、それがすごく大切なんです。明菜さんとのライブもステージを重ねていく中でいいアンサンブルができてきて、『あ、ここだ!』と、みんなの一体感が生まれる瞬間がある」(吉本)

「『ミ・アモーレ[Meu amor e´...] -JAZZ-』も、音源はサックスソロだけのパートもライブでは明菜さんも歌い上げるし、僕らも楽しく創作する部分が残ってる。だからこそすごく面白い」(中村)

 松下は、中森とジャズ・ミュージシャンたちの融合がもたらすマジックについてこう語る。

「人を惹きつける歌い手はユニークなキャラクターを持っているし、何も処理してない状態でもすごく魅力がある。だから、僕の役割は、新しいアレンジに対して明菜さんが感じた『あ、すごくいい感じ』『魅力的だな』という反応のエッセンスをそのまま閉じ込めること。明菜さんも音で会話するタイプ。音に対して歌で返すコミュニケーションなんです。明菜さんも心地よさを感じているからこそ、このシリーズは続いてるんだと思います」

(ライター・松永良平)

AERA 2026年6月29日号

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